「お願いだから見捨てないで!」
「うわぁっ!ツナ君それ反則!」
何が?と首を傾げている所からして無意識なんだろうけど、彼は涙目に加え上目遣いという本来乙女が使うべき最強コンボを成し遂げたのだ。
子犬とかの類いに弱い私にとって、ツナ君のそれはもしかしたら山本君の天然ぶり以上に厄介かもしれない。……おかしいな。段々自分が悪役に思えてきたぞ。
「……依泉ちゃん?」
「あ……と、とにかく私帰る!」
ちょっとした混乱状態に陥っていた私は皮肉にもツナ君の呼び掛けで我に帰る。そうだ。今は胸がきゅんだとか言ってる場合じゃない。騙されるな私!今までだってこの小動物な外見に何度ファミリー脱退を邪魔された事か……!
再び正常に動きだした頭で考えた事はただ一つ。
ここから逃げないと!
チュンッ!
「きゃっ!」
この際ツナ君を引きずってでも逃げてやろうと扉に手をかけた瞬間、ヒュッと風を切る音が近くを通って銃弾が扉に風穴を空けた。どうやら貫通していたらしいそれを見て力無くへたり込んでしまった私が、頬の痛みに気付いたのはその直後だった。
「え、うそ……ほっぺた切れてる!?」
「リボーン!危ないだろ!」
「こっこれでも嫁入り前の顔なのに!」
「うるせぇ」
やけにリアルな音と共に黒い銃口が向けられる。すると口々に叫んでいた私とツナ君はしんと静まり、部屋には状況を理解しない山本君の「小僧の玩具ってリアルなー」と勘違いのセリフが響く。
隣のツナ君も私と同じくその場に尻餅をついていて、誰がその姿にマフィアのボスを見るものか。
ぱっくりと割れ生温い液体の流れる頬の感触にショックを受けていた私の目の前に……いつの間にかリボーンがやってきていた。私に銃の口を向けたまま。
「ななな何を……!」
「依泉。次逃げようとなんてしたら頭に穴空いたって知らないぞ」
「なんか微妙にぶりっこしてるのがおぞましい……!」
いつもみたく語尾に「もん」とか付けないだけマシかもしれないが、恐怖心で胸一杯な私としては鳥肌物だ。ていうかさっき当たったし!
「依泉ちゃん……あの……」
「分かってるツナ君」
この赤ん坊からはどうやっても逃げられはしない。そろそろ足掻くのも疲れたしね。考えたら今日は勉強教えろって言われただけだしね。…………うん。開き直ってやってやろうじゃないか。命に比べれば勉強教えるくらい何ともないんだから。
私はすっと立ち上がって……我関せずとくつろいでいた獄寺君を部屋から追い出した。
「てめ……っ!何すんだ開けやがれ!」
ドンドンと彼方から叩く蹴るを繰り返されているらしいが、残念ながら扉はもう開口不可能。ツナ君家を破壊する事は流石の彼にもできないだろうから、一つ目の問題は解決した。私の細工ナメんな。
後はそう、最大級の難関だけど私さえその気になれば多分邪魔はされないだろう。ニヤリと口端を上げたリボーンに皮肉な一言。
「やってやろうじゃないの、勉強会」
波瀾万丈中学生日記!
リボーンは寝たし、獄寺君さえいなければ平和なモンよ。
さぁさぁさぁ、地獄のスパルタ勉強会の始まりだ。覚悟しなさい二人とも!
執筆2008.03.12.wed
加筆2009.03.23.mon
2 / 2 | |
|