:家庭教師ヒットマンREBORN!
:沢田綱吉


もうすっかり人のいなくなった放課後の教室で、オレは一人補習課題に頭を悩ませていた。毎度の事ながら自分にはほとほと呆れてしまう。こんなの分かんないって!
もうプリントを放って帰ってしまおうかと考えた矢先、今日の日直が仕事を終えたらしく戻ってきた。タイミングの悪い事にその人物は仲の良い依泉で、やはりと言うか彼女はそのまま帰るでも無く静かにオレの前の席から椅子を引いて、腰を下ろした。
……って、すっげ見られてるんだけど!?
これじゃ逃げるどころか気になって集中も出来ない気がする……なんて考えていると、依泉は突然「万年赤点」「友達想い」などと言葉を投げ出し始めた。流石に目の前で言われ続ければ気になってしまい、声をかければ真顔の依泉は予想もしえない返事を返した。

「連想ゲーム?」

一人で?そう思わずにはいられなかった。というか、人物のだとは分かったけど、一体誰を連想したのか?聞いてみるとまたまた意外に「ツナの」と返ってきた。……ツナの?

「って……えぇ、オレ?」
「そうそう。ツナの良いところ百選、みたいな」

何で!と聞けば、何となくと返ってきた。会話成り立ってねぇ……!それに、考えたらその連想ゲームに誉め言葉は少なくなかったっけ。良いところ百選なんて名ばかりで面と向かって悪口を言われた気分だ。しかも、また言い出したし……。

「お人好しでしょ。それから人の事理解できる直感だったり、心の寛大さを……」
「ちょ……依泉!」
「ん?」

数えるように指を折りながら言う依泉を止めれば、なに?と首を傾げられる。
何じゃなくて、そういうのは本人の前で言うべきじゃない事くらい察してくれ!むず痒いというか何と言うか、誉め言葉でも貶し言葉でもできればあんまり聞きたくないもんだ。主張は結構しっかりしたつもり、だったが。

「じゃあ聞こえてないって事で。ツナは音をシャットアウトして課題を見事こなす。OK?」
「いや無理だから!」

格好付けて言われても無理なものは無理だ。教室が静かだから余計、声を拾ってしまう。気にしないでと言われたオレは課題に目を向けたが、正直考えるよりも気にしないように努力するだけで一杯一杯になっていた。

「謙遜するところ。意外と意志が強い。女子みたい」

……やっぱり悪口じゃない?

「あの……依泉?」
「……ツナ、私に話し掛けるよりさっさと課題終わらせた方が賢明かと」

さらりとそんな事を言う依泉にもう怒る気も失せたと崩れるように椅子に座り直す。するとまたまたその連想ゲームを再開させた。

「一途でヘタレなとこもだし」

たまに見せる満面の笑顔とか、大好きだなぁ。
柔らかな弧を描いた依泉の口からは先程までとは違った言葉が漏れる。
聞き飽きるどころか全く聞き慣れない部類の言葉に、オレの顔はボッと火が点いた様に熱くなってしまう。
(大好きって!その笑顔反則だ……!)

「あぁ、あとほら。そうやってすぐ真っ赤になるとこも」
「ほ、放っといて!」

楽しそうに笑みを浮かべる依泉に、言い返す言葉もなく視線を机に戻す。まさか謀られたんじゃないよね?
「怒った?」と顔を覗き込もうとする依泉に否定の言葉を返し背を向けたものの、何だか負けを認めた様な気分になって補習プリントを睨み付ける。それに……さぁ、

「一途なんかじゃないし」

呟くように言った言葉は依泉にハッキリ聞こえていたらしい。即答で否定されたオレはどうすれば?

「恋愛の事だってずっと……」
「中学に入って京子ちゃんが好きだったのに、2年で同じクラスになった子に一目惚れしたし」

そう。依泉は勘違いしてる様だけどオレにとって京子ちゃんは既に友達という位置が定着している。それを初めて聞いた依泉は、面食らった様に「うわ、薄情!」と叫ぶ。

「なっ!だって……」

仕方ないだろ。好きになっちゃったんだから!
なんて言える訳もなく。依泉を恨めしげに見ると冗談だと笑われる。

「恋する事は素晴らしいんだって。どんどん恋して本当に好きな人見つけなさい!」

なんで命令?なんてツッコミはもう自分でも面倒になりつつあって。曖昧な返事をしたオレに依泉は自嘲するように「私が言えた義理じゃないけど」と息をつく。

「何で?」
「いや……私まだ恋愛一回目なんだよね。それも中1から現在進行形で」

その言葉に自分が動揺しているのが分かる。心臓がちくんと痛んだ。へぇ、と相槌を打つ声は上擦ってないだろうか。

(1年、か。)

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