「……え?」

当たった弾に痛みは無かった。代わりに感じたのはドロドロと少し冷たくて気持ちの悪い感触。覚えがある。とても最近。そう、例えば昨日の修行中とか。そっと目を開けた先にはやっぱり血なんてついていなくて、依泉の撃ったものはペイント弾だったらしい。
あぁやっぱり、ただの冗談だった……

「ッ……依泉!」

オレは直ぐ様依泉に駆け寄った。オレの銃に入っているのは勿論実弾で、さっき撃った弾だって同じ。それが依泉に命中したらしくそこから大量の血を流して彼女は倒れていた。

「うそ……だ」

止血を試みるが血は止まるどころか溢れ出るばかり。嫌な考えが頭の中で谺する。信じたくない。けれど。
オレが依泉を殺した?

「ツ、ナ……」
「依泉!」

良かった……まだ意識はある。いやでも、血の量が尋常じゃない。誰が見たって助からないと分かる程の出血量なのだ。それならいっそ最期くらい痛みを感じない方が良いのかもしれない。
違う、違う!オレは何を考えてるんだ。助からないなんて…誰が言った。

「ごめん、ね」
「何でこんな事したんだよ!どうして避けてくれなかったんだ……!」

悲痛な叫びも諸ともせず、依泉は力なく笑って、避ける気が無かったんだと告げた。訳の分からないオレにもう一度謝って、依泉はようやく“本当の事”を打ち明け始めた。

「雇われた件は本当……けどもう断って、るの。本当は……未来が恐くなっただけで、」

段々と息が苦しくなってきたのか絶え絶えの言葉を紡ぐ依泉は、それでも何かを伝えようとする。それを前にしてオレは静止なんて出来る思考もぶっ飛んだのか。言いたい事だって沢山あるのに、ただ彼女の言葉を一字一句聞き逃さんと全神経を集中させる気で耳を傾けているしかできない。

「もう直ぐ来る、辛い現実に、耐えれそうにないから、だからツナより前に……私は、」
「……オレ?」

自分の名前が出てくる事に困惑して聞き返すも、やはり依泉はそれを聞き入れはしない。代わりにフッと笑った依泉がもう一度口を開いた。

「脅されて……冷静で、いられなくなるのは……盲点かな」
「何言って……」
「けどツ、ナ……修ぎょ……合格、だね。おめ、でと……」
「…………依泉?」

依泉は微笑んだかと思えば、途端に動かなくなった。頭が嫌に状況を理解する。
依泉が死んでしまった。
オレは彼女のだらりと力の無い身体を抱き上げる。彼女は確かに、おめでとうと言った。

なぁ、分かってないのは依泉の方だろ。
紅に染まり、動かない依泉の表情はやわらかい。まだ全然温かい。本当に死んだの?息止めて、悪戯だったら本気で怒るよ?

「銃は向けたら撃つんだろ?オレに反撃させる隙なんて作るなよ……っ!」

ただただオレは、その場に泣き崩れる。
外はザアザアと雨が降り続いていた。


君に試練と云う名の教訓を伝えよう

できる事なら、守る為の武器であって欲しかった。
そう願うのは人を殺めてしまったオレでも、罪にならない筈だ。


end.
‐‐‐‐‐‐
この話は現代から数年後の未来なイメージ。新任ボスは20歳手前くらい…?

夢主ちゃんの行動の不明部分が修正してちょっとスッキリ。←
この後は原作の未来編的なイメージがあれば彼女の言葉も少し理解できる筈。

執筆2008.05.24.sat
加筆2009.05.24.sun

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