「すみませんでした!」
進行形で私は神田さんに頭を下げていた。地面に額と掌と膝を擦り付けるようにして。それも当然。元々戦えもしない探索部隊の私が、こと戦場においてエクソシストの足を引っ張ってしまったのだ。それも教団を発つ際、神田さんにあれ程注意されておきながら。
綱吉達が驚いたり、引いたような面持ちでその光景を見ていても関係ないのである。少しの間誰も口を開く事をせず、そんな中忽然と神田さんが彼なりの許しの言葉を呟いた。
「元々アクマとの戦いにおいて、イノセンスも扱えない探索部隊が役に立つとは思ってない」
「……はい」
「それより……どういう事だ。てめぇ等が奇怪の原因だったのか」
落ち込む私はそれでもようやく顔をあげる事ができた。すると今日一番の神田さんの睨みが、私を通り過ぎ後方の三人に突き刺さっていた。
そう。並盛の奇怪はある赤ん坊が来てから始まった事で、全ては人為的行動の結果だったらしい。アクマがいたのは多分、伯爵の下調べ程度だろう。そういえばコムイさんも自信のない台詞だったけれど、本当にイノセンスなんて全く関係がなかった訳だ。
それらを言い辛そうに事の発端から説明してくれた3人は、話し終わってからは居心地の悪そうにおどおどと神田さんの反応を伺っていた(主に綱吉がだけど)。
「……じゃあ、わざわざ日本まで来た甲斐はなかったって訳か」
日本は平和ですねえ、と少しだけ肩の力を抜いた。隣では「下らねぇ」の言葉と共に舌を打つ音が聞こえた。不機嫌だ。
「すみません!オレ達……ていうかリボーンが騒ぎを起こしたせいで……」
「気にしなくて良いよ。よくある事だし」
綱吉達が悪い訳じゃないし、こちらとしてはアクマが並盛で一騒ぎし出す前に破壊できて助かってもいる。護ってくれた事も考えると、寧ろ私達はお礼を言うべきであったりするし。ですよね?隣の腕はピカ一、社交性0な彼に私は話を振る。ビクビクと神田さんの機嫌を伺っているらしい綱吉の為にも、分かり辛い彼の気持ちを代弁しようと試みたのだ。返ってきたのは無視という返事だったが、沈黙は肯定だ。
「ほらね?」と笑って言えば驚いた様に目を丸くしていた綱吉は安堵したように笑った。その表情が少し幼くて、強くてもしっかりしてても、やっぱりまだ子供なんだなあと実感する。機嫌がコロコロ変わるとことか、特に。
「依泉、用もなくなったし帰んぞ」
「はーい」
少しして空ももうすっかり緋に染まった頃、別れの時間がやってきた。遠出の割にスピーディーな任務だったなぁ、と自分が戦った訳ではないけど達成感を覚えてしまう。というのに、目の前の笑顔は急激に萎んでいった。
「え……もう帰っちゃうんですか?」
任務先での出会いと別れにもう慣れている私には、その表情の変化の理由に言われるまで気付かなかった。惜しむ彼らの気持ちは嬉しいが、任務完了とあらば直ぐにでも帰還しなければ。私達には次の任務が待っている。
「大丈夫!きっとまた逢えるよ。綱吉がボスになるならね!」
「えっ!?でもオレマフィアには……」
もしもの話だよ、と笑えば、綱吉達も笑う。神田さんは相も変わらず仏頂面だけど。またな、とか死ぬなよ、とかまた来て下さいね、とか諸々の別れの台詞を並べてくれて(若干一人が縁起の悪い事を言ったが、それも信頼と云う事にして聞き流しておこう)、頬は緩むばかりだ。これ程晴々した気持ちも久し振りな気がする。
「うん。きっとまた!」
小さく御辞儀をして言う台詞は実のところお決まりだったりする、ご協力ありがとうございました!フイと踵を返す神田さんに置いて行かれぬ程度のスピードで歩き、手を振り見送ってくれる三人に振り返し続ける。珍しくも、また逢いたいなぁなんて私情を芽生えさせて。
2つの世界が1つになったら
それはある探索部隊とエクソシストが出逢った、ある日の任務の物語だった。
end.
→あとがき
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