:家庭教師ヒットマンREBORN!
:沢田綱吉
「おめでとうツナ!今日は目一杯遊び回ろう」
20××年10月14日。
沢田綱吉中学校生活最後の秋である。誕生日である。そして何故か、正式にボンゴレファミリー10代目となる就任式(と言っても今日は日本や身近な人達だけの小規模なもので、本当の本当の就任式は来年の春にイタリアでするらしい)の日である。
そんなあまり嬉しくない1日が訪れて半々日が過ぎた早朝6時30分。
世間は休日だというのに隣の家の幼馴染みは毎度の如くご機嫌な顔をして、何故か母さんも同意の上でこんな時間から部屋に入ってきてオレは叩き起こされる羽目になるのだった。
「ほら早く起きて!ツナの大切なこの日の大半の時間を、私がもらっても良いって皆が了解してくれたんだから!」
だから何でだ。いやそれは多分っていうか絶対、依泉とオレが付き合ってるからで、あの獄寺君やリボーン辺りからも同意をもらうなんてある意味依泉は最強かもしれない。まぁでもあと半年もしない内に依泉とはお別れなんだから有難い事でもあるんだけどね。
そんな長い話はともかく、そもそもそしたらさっきの依泉のおめでとうはオレに対してなのかな?それとも――…
なんて事を考えたけど、早朝から向かった先はゲーセンだったりカラオケにボーリングとかあと喫茶店とか。
UFOキャッチャーに熱中したりして意外と依泉の方が巧いと判明したり、どっちが歌もボーリングもうまいか競いあったり、それから特大パフェの早食いに二人で挑んででも結局食べきれなくて全額払う事になったり。
いつも通りどころかいつも以上にハイになってて笑いが絶えなくて、やっぱり依泉といるのは楽しくて。
そうこうしているとたちまちに夜になった。
「あーっ楽しかった!」
「笑いすぎて腹痛いよもー」
あとどっか行きたいとこってある?と聞かれたけど空はもう真っ暗で、最近はもう陽が暮れるのも早いというか。あの依泉、もう7時なんだけど帰んなくて良いの?
「なーに言ってんの!まだ7時でしょ。マフィアのボスがこんなんで怖じ気づいたの?」
「!」
―――嗚呼、違った。
依泉はオレの誕生日じゃなくて10代目就任を祝ってたんだ。そうじゃなかったとしても、このタイミングでその事を言うなんてどっちにしろ酷いよ。
「やっぱりオレ、もう帰る」
「えっ?ちょっと、ツナ……!?待ってよ!」
「うるさい。もう良いから、放っといて」
オレは依泉を置いてずんずん帰路を進み始めた。
ボスとして祝われるなんて真っ平だ。日本で誕生日を過ごすのも最後かも知れないのに、せめて依泉には沢田綱吉の誕生日を祝ってもらいたかったのに。誕生日に喧嘩なんてそれこそ最悪じゃん。
「……っ何が良いのよ!全然良くない!」
「うるさいな、就任祝いなんて要らないからもう良いって!」
そんな事言われたって、私祝わない訳にはいかないんだから!
それが意味分かんないよ!依泉にマフィアは関係ないだろ?
関係あるよ!だって私もマフィアだもん!
「…………え?」
ピタッと足取りが止まる。依泉がマフィア?何言ってんの?依泉はオレより泣き虫なお隣さんで幼馴染みでオレのずっとずっと隣にいた只の女の子だろ!?
「違うよツナ。言ってなかったけど…」
ごくり。口内に唾が溜まる。もしも正体隠してて本当はボンゴレの敵だとか言われようものなら、オレはどうすれば良いんだ?
「私今日から正式にボンゴレ10代目ファミリーの下っぱです!」
「……………はぁ!?」
素っ頓狂に驚くオレを差し置き、ちゃんと9代目のトコ行って許可ももらったもんね、と笑う依泉の目は憎らしい程晴れ晴れとした輝きに満ちている。
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