:マギ
:現代からのトリップ少女設定。
アリババより少し年下くらい。アラジン溺愛。
*バレンタインネタ


「アラジン、ハッピーバレンタイン!受け取ってください!」

そう言って私が自分の視線よりも低い彼に差し出したものは、この世界には存在しないチョコレートではなく、旬のフルーツとそれらしい材料を使って作ったなんちゃってフルーツケーキだった。

「わあ、ありがとう依泉さん!美味しそうな匂いだねえ。それで、ハッピーバレンタインっていうのは何のことだい?」
「今日はバレンタインデーだからね!」
「バレンタインデーってなんだい?」

バレンタインは好きな男の子にチョコと想いを贈る日だよ!という言葉は一旦飲み込んで、お世話になってる人に感謝の印に何かを贈る日だよ、ともうちょっと善良な説明をする。
ちなみに私のバレンタインはこの小さな体に天使の笑顔で受け取ってくれたアラジンによって既に幕引きを迎えている。

「へえ、そうなのかい。でも僕は依泉さんに贈り物をもらえるような事はしてないと思うんだけどなあ」
「ううん、私この4人でいられる事がとっても嬉しい!それに、いつも皆に助けられてるからそのお礼かな」

アラジン、アリババ、モルジアナ。この3人に出会えて本当に良かった。そして今私がここにいられるのは、アラジンが見つけてくれたからだ。勿論、その時もその後もちゃんと助けてくれるアリババも、いつだって心強いモルジアナも皆大切に思っている。

「その割には感謝の印に随分差があるんだなオイ」

後ろから聞こえたアラジンとの会話を引き裂く突然の声。振り返って見ればそこには若干態とらしく口元がヒクついているアリババの顔。その少し後ろにはモルジアナもいる。
2人の手にはアラジンと同じケーキが乗っている。違うのは、元々小さめのケーキをアラジンは半分、アリババとモルジアナは更にそれを半分こしている事だけだ。

「えーそんな事ないよぉ」
「その見え透いた作った声やめろよ」
「……あのねアリババ。バレンタインデーっていうのはさっき言った感謝を表す日。でも近代のイベントとしては好きな男の子に女の子が贈り物をして気持ちを伝えるチャンスの日でもあるの!」

あ、言ってしまった。あんまり偏った知識をひけらかすのは止めておくつもりだったのに。

「つまりあれだ、依泉は俺達に感謝こそすれど、大好きなアラジンと俺達との違いを贈り物のサイズで表してる訳だな」

なんと人聞きの悪い事か。
サイズの違いで見せつけているんじゃない。皆と同じ感謝を4分の1個と、特別な分を4分の1個上乗せでそれはつまり半分となる訳で。
本当ならアラジンにだけラッピングも中身もランクアップした少しばかりのお高いチョコレートを渡したいところだけど、残念ながら現代ではないここではそんな事は不可能で、材料だって限られている中別のものを作る事も叶わなかった。これはせめてもの気持ちなのに。

「それに三等分も中々難しいし……それなら最初からきっちりさっぱり!」
「さっぱりし過ぎだろ!」

何がそんなに気に入らなかったのか、今日のアリババはやけに突っかかってくる。私のアラジン命な面は彼も既に知っていて微笑ましく見ていてくれる(語弊含む)というのに、扱いが違うくらいで大袈裟な。

「うるさいなー。義理は果たした、年頃の食べ過ぎはニキビの元だよ。あ、チョコじゃなかったんだった。まあとにかく太らなくて良いじゃん。ニキビの元にならなくても、クレクレはモテない元だよ?」
「太るのはアラジンだってそうだろ!モテないとか今関係ねーじゃんか!」
「アリババ君落ち着いて……」

やけに噛み付くアリババを今まで呆然と眺めていたアラジンも、遂に宥めに入ってきた。

「今日この日こそ関係あるんだよ。ねえモルジアナ」
「えっ……私にはよく分かりません」
「貰った側のアラジンには分かんねえんだよこの悔しさが!ひでーよなあ、モルジアナ!」
「……」

1 / 2 | |

|


OOPARTS