モルジアナが押し黙る。訳の分からない話に巻き込まれて困惑中、といった顔の険しさで眉間には皺も寄せている。

「ちょっとぉ困ってるでしょ。うちの可愛いモルジアナに非モテの嘆きを振らないであげてくれませんー?」
「誰がうちの子で誰が非モテだって!?」
「えっ……ウソ言っちゃっていいの?」

わざとらしく口元を手で隠して視線をアリババから横方向にずらしてみると、それが効果覿面だったらしい。

「言わなくて良いよクソッ!ムカつく!なー本当酷くねえ!?」
「いえ」
「だよなあ!……ん?」
「ひどいと思いません。私は感謝などしてもらえる立場ではないので、良くしていただけるだけでとても嬉しいです」
「……」

モルジアナの控えめな笑顔にきゅんときたのは、きっとたぶん私だけじゃないはずだ。先ほどまでケンカ腰でいた私の表情は一気に緩んだ。けれど続くモルジアナの言葉と表情に、それはほんの一瞬の事となってしまった。

「とても嬉しい……ですが、そんな感謝の日があるのなら、私にも教えていただきたかったです。私も何か、皆さんにお返しがしたいのです」

そうだ、モルジアナだって女のコであり、2人に助けられてもいる。こちらにはその文化がないからと、義理堅いモルジアナに言うのをすっかり忘れていたなんて。

「次の機会には必ず教えて下さい」
「うん、そうするね……というか、そうだ。バレンタインデーのひと月後はホワイトデー!」

ホワイトデー?こてりと首を傾げたモルジアナに、本来はお返しの日である事は勿論伝えておきつつ、せっかくのイベントデー。やらかした私にはこれを利用しない手はない。

「プチパーティーみたいにするのはどうかな?」
「はい……やりたいです、やらせてください!」
「じゃあ決定だねー」

とびきり嬉しそうな顔して乗っかってくれたモルジアナに、ああ一月後が楽しみだなと今から頬が緩む。

「あ、そんな訳だから来月ふたりともお返し楽しみにしてるからね!モルジアナの分も忘れずに!」

「えっ」と声を揃えて聞き返した男の子コンビに、パーティーに色付けてくれるんでも良いからねとひとつ案を出しておく。
きゃっきゃとテンションが上がり気味でいると、何を思ったのかアリババが遠慮のありそうな控えめな声で話しかけてきた。

「それでさ、依泉」
「えっアリババまだ口論し足りなかった?」

もうバレンタイン話はエンディングを迎えても良いんじゃないかと思っていたのに、どうやらこのアリババ君、中々に血の気が多いらしい。

「じゃなくて!聞きたかったんだけどお前って、アラジンの事をその……本気で好きだったのか?」

何とも言い辛そうに言われた言葉がそれだとは、今更過ぎて気も抜けてしまう。今更であり、聞くまでもない。好きじゃなければこんなにベタベタできる訳がないのに。

「でもよ、バレンタインデーの好きは恋愛の好きじゃねえのか」
「……え?」

どうなんだ、とアリババからの視線をひしひしと感じる。正直なところ、考えた事もなかった。アラジンへの好きは恋愛か?友愛か?それとももっと別のものか?

「うううーん……分かんないよそんなの!それにアラジンだけじゃないしっアリババもモルジアナも皆好きだよーっ」
「な……なんだよソレ」

大体どうしてアリババにそんな事を聞かれなきゃならないのか。疑問が言葉として外へ出る前に、明るい声に横入りされてそちらに気を取られた。

「ねえ依泉さん!これすっごくおいしいよ!」
「えっホント?」

隣ではアラジンとモルジアナが、先程あげたフルーツケーキを頬張っているところだった。その顔が2人並んでとても幸せそうでこちらまで幸せな気分になる。

「とてもおいしいです」
「やった!アリババも感想!」
「……うん、うまいよ」

皆が口を動かしながら、もごもご感想を言ってくれる。それだけでもう頑張った甲斐はあったんだと思わせてくれるから、皆が好き。

「依泉さんにも、はいこれ!」
「え?」

アラジンが差し出したのは、4分の1のサイズに割ったフルーツケーキ。

「半分こ!皆で一緒に食べようよ」
「っアラジンやっぱりだいすきー」
「えへへ、僕も依泉さんがだいすきさ!」

ガバッと衝動的に抱きついてみるとはずんだ声でそんな事を言ってくれたから、私は自分の言っている「好き」がどんな意味でも、それがまだ分からなくても良いかと思ってしまうんだよ。


きみがだいすき

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今日から2月かーバレンタインかーと思ってたところふと出たマギのおはなし。
気付けば前のものから丸1年余裕で経ってて悲鳴ものです。
固定夢主(予定)を単体で違和感ないように幾つか修正して書いてみました。その割には書きたいことを圧縮したような感じになってしまった気がする。

2014.02.08.sat

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