自力を命じられた私はこの辺りから自分の世界に入り出す。シリアス真っ逆さまな男子の会話はBGMと化した。いつまでもこんな状況は御免だと、先ずは念じてでもみようか。

「クフフ……君がいるという事は僕のしてきた事は無駄ではなかったようだ」

ねぇ?ボンゴレ10代目。私の声、奴の台詞に反応を示すツナ。「オレ!?」と叫んだツナに私の顔に貼り付けられた笑みは一層深くなった。やはりと意味深に呟いた口とは違い、今の私に姿形があれば確実に場の空気を壊していただろう。現実にはないのだから気にしないが。

「少し期待外れですかね」

元に戻れ、私の身体!あんなパイナップル頭した奴にいつまでも乗っ取られて良いと思ってるのか。一生の屈辱だよきっと!

「まさかボンゴレの後継者ともあろう人間が、こんなひ弱な男とは」

私は私にしか動かされてはいけない。動け。私の為だけに。
その足は他人の為にあるんじゃない、自己最高新記録を「出す為にあるんだ!」……って、え?

「い……今?」
「おや。全く油断ならないですね」

少ししか経っていない筈なのに、一瞬戻った感覚は酷く懐かしく思えた。ああ今、私声が出せたよね?喋ってたよね!?
ちゃんと聞いたリボーン君?なんてそちらを見れば彼は不敵な笑みを浮かべていた。ツナに至っては呆然としているが、案外念じる作戦は効果覿面のようだ。

「まさか一度侵入を許した僕を追い出せようとは……面白いですねぇ」

何が可笑しいのか嬉しいのか、クツクツと低く笑う変人(確認するがクフクフではない)など気にも留めず、私はもう一度、それはもう今までで一番と言える程に意識を集中させる。この調子だ、やってやる。私の陸上部魂見せてやれ。何事もそう、

「ボンゴ……こ、曜ランドで…………成せばなるーッ!……お」
「戻ったか」

戻った……なんて良い響きだろうか!様見ろ変態ナップル。私は勝ったぞ!両の拳を天に向ける私のテンションが異常な点には、是非ともスルーして頂きたいものだ。
たった10分程の事なのに懐かしく愛おしい、肉体のある感覚に思いついたように私はあちこちを触り始める。スカートをペロとめくった所で、心配して駆け寄ってきた筈が顔を真っ赤にしてしまっているツナに懇願にも思えるお叱りを受けた。変なものを仕込まれていないか、全身チェックしないと気が済まないんだけど。

「公衆の面前で……!頼むから止めようね」
「えー。別に私がしてるんだから良い、」
「こっちが良くないの!」

何だよ、大目に見てくれたって良いじゃん。ブーッと子供のように口を尖らせてみるも、当のツナには顔をそらされた。(!がーん)

「まだまだ餓鬼だな、ガキツナ」
「ガキに言われたくないよ!」

あぁ、それとも何か。まだ京子ちゃんがどうとか気にしてるって事かな?どうせ京子ちゃんは今私達が共にいる事すら知らないし、何よりそんな事興味など無いだろうに。
そんな事を考えていればどうしてかリボーン君には通じてしまったらしく、毒舌だなと呟き話を転換された。

「さっきの奴、最後に何か言おうとしてたな」
「あぁ。確かボン……こようランドとか。ボム雇用ランド?」
「いや意味分かんないから!」

ふむと顎に手を添えて真面目に考えた筈の言葉は虚しくもツナにツッコまれた。くそぅ、日頃の行いってヤツ?
黒曜ランドとかじゃない?とさっきまでと変わって自信無く案を出したツナに、少し悔しいが感心する。そうするとボンは何だろうか?さっき話してたボンゴレの事かな?……アサリ?

「……あ、でも黒曜ランドって確かとっくに閉鎖されてるよね?」
「不良の溜まり場には打ってつけだな」

行くぞと声をかけたリボーン君に、弱々しいツンツン頭が揺れる。罠かも知れないからと尻込みする気持ちは、ハッキリ言って同意見だ。便乗して危ないだのと言えば、ある意味誰より大人かもしれないリボーン君は行くしかないだろ。とまんまるした瞳を光らせた。

「モタモタしてたら依泉がまた乗っ取られるぞ」
「っそれは……、」
「行ってらっしゃい!」

切り替えが早い?だってまた乗っ取られるだなんて冗談じゃない。ツナにこの全身から沸き上がる気持ち悪さが理解できるのか!……と言うのは自主規制を駆使して止めておこう。

「獄寺とか連れてけば、たぶん大丈……ぶっ!」
「えぇー!?」

思ったより例の出血が酷かったのか、他人に身体を使われたり、取り返すのが想像以上に負担となっていたのか…全てが初めての事だった私には本人と言えど理解しようがない。
ツナが私の名前を何度も呼んでいる声に気付いていながら、私の記憶はそこでプツリと途切れたのだった。


この日のヒーロー誕生説

次に目が覚めた場所は病室だった。

意識を失う時のように、フッと突然浮き上がった私はゆっくりと辺りを見渡す。すると最初に目についたのは隣のベッドで酷い形をして眠りこけるツナ(私一応女なのにどうして相部屋なんだろう)。
その間に置かれた椅子に座るリボーン君はいつもの通りビシッとスーツを着込んでいた。挨拶の後私が倒れてからの事を簡単に話してくれた彼は、「見上げた精神力だったな」と赤ん坊らしからぬニヒルな笑みを作り、ついでに部活動での脚力も褒めてくれた。


あぁそうか。全て終わったんだ。そう気付いたのは会話を終えて2、3分経ってからの事だ。ふと小さな身体の先に放心していた視線を移し、頬を緩める。
色々と大変だったらしいし、負け犬根性のある彼も大いに頑張った模様。目が覚めたらちゃんと感謝の言葉を捧げよう、このだらしがない寝顔の英雄に。

お疲れさま、ありがとうツナ。

「依泉、ファミリーに入らねぇか?」
「……このタイミングでそれ言う?」


‐‐‐‐‐‐
あの憑依って意識ある時に乗っ取られたらどうなるんだっけ?と疑問のまま書きました。

執筆2008.08.05.tue
加筆2009.07.20.mon

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