「どこ……行ってたの。馬鹿者ォオ!」
「えぇええ!?」

久々の友との再会。しかし私はゴンッ!ととりあえず一発強烈な頭突きをお見舞いした。するとツナは案の定、信じられないとでも言うような表情をしてそこを手で覆い擦る。私、石頭かも。
信じられないのは寧ろこっちの方だ。再び前の並盛……ツナ達が帰ってきたのだ。それ自体は良いのだ。とても良い知らせだった。けれど、納得がいかない。

本人達が知っているかは謎だが、集団神隠しの件は私だけじゃない、並盛全体を騒がせる事件となっていた。突然前触れもなくいなくなったかと思えば今度はひょこっと現れちゃって。
言い訳諸ともたっぷりと聞いてやろうじゃないか。そう思う反面そんな余裕すら私には無かったかもしれない。

「心配したんだよ。皆いなくなってさ!携帯繋がらないし、それに……」

それに、10年後の山本達が……――


ごめん、とツナが私を呼んだ。
どきりと心臓が早鐘を打ち、ぶるりと身体が悪寒でもしたように震えた。嫌な事を思い出してしまった。

「でも、もう全部終わったんだ。もう大丈夫だから」

そう言って満面の笑みを浮かべた筈の表情は、何故か苦笑しているようにも見えた。ツナは笑っているのだろうか。
よく見れば身体中に怪我してあって、バンソーコーやテープだらけだ。

(嗚呼。また。)

だからもう私には関係ないって?
私だって仲間でしょ?隠されるのが嫌って知ってるクセに。これじゃあ何の為にファミリーになったのか分かんないよ!

苛つきと興奮が不安感を抱くなんて流暢な事を忘れて一気に爆発、気付けば私は手をあげていた。乾いた音が響き、手のひらが彼の無防備な頬をひっぱたく。

「依泉……ちゃん?」

じん、と手のひらに鈍い痛みが走った。先ほどの頭突きを含め、2度の顔への攻撃にツナは大きく見開いた瞳を揺らすばかり。今まさに出来たばかりの、私が作った頬の痛みに手を添えて。
後悔は直ぐに私を襲った。ああ何で。

「なんで……教えてくれないの?」

何してんだろう、私。やってる事も言ってる事も滅茶苦茶だ。分かってるのに、悔いてもいるのに私の非難の声は止まらない。
リボーン君が居なくなって、一緒に探してたはずのツナも先輩も、皆がどんどん消えてく日々。

目頭が熱さを覚えた。自分がした事のクセして、痛そうだなぁ、なんて痛みを和らげる方法なんて考えちゃって。口はまだ憎たらしい言葉ばかり発しているのに。
何、泣きそうになってんの。

遂にはあの雲雀さんまでも10年後に行く始末。……あぁでも、彼もボンゴレファミリーだっけ。でも、それならどうして……どうしてファミリーの一員な筈の私だけがこの時代に残された?一人探し回って、そんな自分の図が馬鹿みたいに惨めに思えた。
悔しかった。取り残された不信感。何もできない私は、直接それを指摘された気分になっていたのだ。

「でも、謝って欲しい訳じゃなかったんだ。ツナは悪くないもん」

気落ちして自然と語尾が小さくなっていった。言えば言うほど、悪いのは私だと痛感する。あぁ、本当惨めだ。ボスに…ツナに当たるなんて。

「依泉ちゃ……、」
「ごめん」

優しいツナは私より辛そうに顔を歪めていた。
ようやく毒づいていた台詞が落ち着いた頃には、私は自己嫌悪に大暴落。

「痛かった……よね。」

赤く……少し腫れてきた彼の頬を小さく撫でた。本当、何したんだ私。何度も何度もごめんねと繰り返す。
叩いたりしてごめんね。勝手に決めてごめんね。ごめん。でももう手遅れなんだよ。

「ボス、私はボンゴレファミリーを脱退します」

ツナが息を飲んだのが手にとるように分かった。ツナをツナとして見ていたら本当に泣きそうだから、だからこの一瞬だけ、ツナをボスとしてだけ見る事を許してほしい。
リボーン君を引き合いに出そうとしたようだけど、誰に何と言われようと……いや、事態はもう私すらも止められないところまで来ている。焦って困惑しているだろうツナにもちゃんと、言わなきゃならない。

「私さ、明日引っ越しするから」

お別れなんだと。
理由はとても有りがちで、深い意味だってない。単に親の仕事の都合でイタリアに移住する事になったのだ。
ツナ達がいない間に全部が決まっちゃったのは皮肉だけど。

「皆が戻ってきた時の為にって手紙書いたんだけど、必要無くなっちゃったね」

ひら、と先日書き終えたばかりの手紙を見せびらかすようにすれば、無言のツナはそれをじっと見つめていた。一方的に話を絶とうと私は笑顔を作る。

「うん、でも最後に会えて良かったよ。バイバイ、ツナ」

早足でその場を離れた私は、私の名前を何度も呼んだツナの声を背中で受けながら、一度も振り返る事なく引っ越し作業を終えた我が家へと帰ったのだ。
これで良かった。とは、正直ハッキリと言える自信はないけど。

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