「そういう国、この辺りにはないの?」
「……ある、けど」
「なんだ。じゃあなんでそんなに驚くの?」

ここにも民主主義が存在するなら、そう言ってくれれば良いのに。割と真面目に語っちゃったのが恥ずかしい。アリババ君、知ったような話を私程度のまだ政治なんて教科書レベルでしか知らない人から聞いてて、楽しかったのかな。

「その、制服ってのさ」
「うん?」
「気に入った制服着る為に頑張ったって」
「うん」

長々説明してしまった政治の話はこんなにアッサリお開きなんだろうか。別にこれ以上続けたい訳でもないので良いんだけど。でも、なんでふりだしに戻って制服の話題が出るのやら。

「学校って普通、勉強する為に行くとこだよな。それを制服で選ぶってつまり、それくらい当たり前に行ける環境が整ってるって事だよな。それも、選べるほど数もある」
「まあ、そうだね……?」

なんだろう、なんでこんなに真剣に、アリババ君は制服の話をしてるんだろう。制服と言うか、学校の話?

「民主主義国家ってのは、そんなに国民が豊かに暮らせるもんなのか?」

どうやら制服の話でも学校の話でもなく、政治の話ではあったらしい。そんなに真剣な顔をされても、話題が話題なだけあってどう答えれば良いのかそろそろ反応に困る。

まあ、王政によくある独裁だけはない訳だし。王政が人によって政治がガラリと変わって、国民にとって良い国になるか悪い国になるかが大きく変わってくるリスクを考えたら良いのかもしれない。
可もなく不可もなく、と正直なところ裏を返せばそれは十分な短所である事は明白なんだけど。

身分問題よりも身近なところでは差別問題の方が深刻だ。それにひとえに民主と言っても結局、上はその地位に縋り付いてるような人間ばっかり。でも意見は言えるし、金持ちだからってブーデルのおじさんみたいに貧乏を見下す権利なんかない。
代わりに希薄な人間関係が生まれるのだから、個々の結束はこういう時代の方が固いのだろうけど。

「おねえさんって不思議だね。まるでこの世界の人じゃないみたいな話し方をして」
「お前……一体どこから来たんだよ?」

言いたい事をおおよそ言い終えると、視界にぽかんとした顔が2つあった。
アラジン君、すっかり寝たと思っていたらちゃんと起きて話もある程度聞いていたらしい。どこまで理解しているのかは知らないけど。

「うーん……強いて言えば未来かな?」
「はあ!?」
「あ、でもダンジョンとか魔法とかある訳ないから、別の世界とか?」

ふざけてんのか?と困ってるのか怒ってるのを隠す為に無理に笑おうとしているような、よく分からない表情をしたアリババ君に言われたけれど、そうとでも考えて割り切らないと混乱状態の思考回路なんて捌き切れない。
でも、いきなり部屋にいたら別の時代や世界に飛ばされるなんてのも可笑しな話だから、やっぱり私はこれを夢だと思う事にしたい。だって時代が変わったところで辻褄が合わない。別の世界って、いっそ漫画の世界にでも飛ばされたって言われた方が納得できる。目が覚めたら別世界にいた、なんて私はなんかの物語の主人公か。

漫画の下りは省いたものの、そう正直に言ってみればアリババ君はしばらく考え込んだ後、「あー……だから最初会った時夢とか言ってたのか」と理解しようとしてくれてはいるような反応を返してくれた。

「ま、夢じゃねぇ事は確かだから、もう少し警戒心とか持てよ。ダンジョン行くんだろ?」

こんないらない話をしてしまって若干後悔していたのだけど、アリババ君が導き出した答えが中々真っ直ぐ私の心に届いた。
夢だからで諦めようとした事があった事を思い出す。夢だからこそいつも以上の力が出せるかもしれないってくらいに自分を過信して、今度は全力を尽くそうと決意を改めた。

その間に、アラジン君が睡魔に負けてしまっていた事を知るのはもう少し後の事になる。


end.
――――――
政治の話が長くて全体的に面白くない話でした。
お風呂の件は時代に沿うかどうかすごく迷いました。結局世界観はなるべく大事にしようとあわせましたが、夢主ちゃん可哀想でしょうか……。
そしてほぼ確実にアリババの家がお風呂付なんて事ないでしょうけど。荷車社の宿舎的な場所かな?集団なら敷地内に共同のお風呂とか……ないでしょうけどそういう事にしといて下さい。

2013.03.03.sun

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