自室で一人うとうとしていると、端末に連絡が入った。新撰組で飲んでいたところ、平助が酔い潰れてしまったので、迎えに来てほしいというメッセージだった。どちらかというと他人を介抱している印象が強い平助が潰れるのは初めてのことだ。少なくとも私は見たことがなかったので、心配半分、好奇心半分といった気持ちで自室を出た。
深夜ということもあって廊下に人気はない。珍しく誰とも顔を合わせないまま、私はボイラー室横に辿り着いた。相変わらず嫌な暑さだ。
飲み会はまだ続いているようで、とても騒がしかった。迎えに来たことを揶揄われるかと思ったが、皆夢中になっているためか、視線がこちらに向くことはなかった。
平助は顔を赤くしながら眠っていた。くうくうと寝息を立てていて、一見すると子供のようにも見えた。私が来るまで様子を見ていてくれていたらしい山南が声をかけようが軽く揺さぶろうが、平助は呻くばかりで目を覚まさなかった。山南の助けを借りながら、私は彼を背負った。思ったより軽い。なんであんなに筋肉があるのに軽いんだろう、と考えながら、私は山南に礼を言ってボイラー室横を後にした。
時折ずり落ちていきそうな平助を背負い直しながら歩いていく。首元に彼の酒臭い吐息がかかって少しくすぐったい。眠っているせいで両腕がぶらんと垂れ下がっている。もう一度背負い直したところで、平助が目を覚ましたようだった。
「ん、あ、え…?」
「起こしちゃった?ごめん」
未だに酔いが覚めないようで、平助はしばらく黙っていた。少し経ってようやく私に背負われていることに気づいたようだった。
「こんなに飲むなんて珍しいね」
「原田さんと永倉さんと、誰が一番飲めるか競争してて…」
「誰が勝ったの?」
「寝ちゃったから、分かんないな…」
「そうなんだ。聞いてくればよかった」
平助はまたぽやぽやし始める。顔が見えないので眠っているのか眠っていないのか分からない。
「あれ、おまえ、寝てたんじゃ」
「横にはなってたけど、あんまり眠れてなくってさ。起こされたわけじゃないから気にしないで」
「…僕なんか、ほっとけばよかったのに。しばらくすれば、一人でも帰れたし…」
「平助が心配だったんだよ。私がしたかっただけだから、本当に気にしなくていいよ」
話しているうちに、私の部屋に着いた。平助をベッドに寝かせようとしたが、何故か平助は渋って離れようとしなかった。
「横になった方がいいよ。水取ってくるから、いい子にしてて」
「やだ…」
ベッドに下ろすところまではうまくいったが、すぐに正面から抱きつかれてしまった。こうなると私の力では引き離せない。どうにかして離れてもらおうとしたが、平助は私にしがみつきながら力無く首を横に振るばかりだった。
仕方がないので、私はベッドに腰を下ろし、平助を抱き上げて膝の上に乗せた。もぞもぞ動いて自分の座りやすい位置を見つけると、彼はすぐに大人しくなった。何かの動物の子供のようだ。
「どうしたの?」
「おまえの顔、見えなくて…さみしかった」
「ああ、おんぶしてたからね」
ぼーっとした表情で私の顔をじっと見つめてくる。何が良いのかは分からないが、平助の顔はいつまでも見ていられるので、その面で言えば気持ちはよく分かる。
「もっと、ぎゅってしてくれ…」
「甘えん坊」
「おまえがこんな風にしたんだからな…責任取れ、早く」
「冗談だって」
早く早く、と急かしてくるので、望み通りに平助を両腕で抱き込んだ。酔った身体はいつもより温かい。遠くにあった眠気がいつの間にか背後までにじり寄ってきている。平助を抱きながらベッドにごろんと寝転がって目を閉じると、腕の中からすぐに寝息が聞こえてくる。サーヴァント故に作り物の心音を聴いていると、瞼が鉛のように重くなってきた。こんな時間がずっと続けばいいのに、と思いながら、私は意識を落とした。