遥かの夜空を、六等星まで
   

第✕日

 夢を見た。
 ステージ上で言葉を叫んでいたあの頃の夢を。
 ヒースは舞台の中心でマイクを握っていて、その周りで皆が踊って飛び跳ねている。
 スポットライットに照らされて、歓声に包まれて、迸る汗も客席のペンライトも、全てが輝いて見えた。
 ふと横を見ると、踊る藍が此方を見ていた。
 マゼンタはぎらついていて、開いた口から尖った歯が覗いていた。
 誰かがヒースの背を押す。力加減を学習しない馬鹿野郎の手は熱かった。
 その様子を誰かが笑って見ていて、誰かは少しだけ呆れた様子で見ている。
 躓いて軽く宙を浮いたヒースに、誰かの手が伸ばされた。
 何か聞こえる。
 ヒースの名だ。
 ヒースは笑って、その手を掴もうと手を伸ばす。
 光が、二人を包み込んだ。
   


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