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「おい、てめぇ吐かねぇとぶっ殺すぞおらぁ!」
ドスッという鈍い音と一緒に衝撃が背中に走った。
肺がやられて咳き込む。
「っごほっ、っし…らねぇ…って…」
背中に蹴りを入れられた衝撃で切ってしまった口の中から血が出てきた。
唇の端から垂れてボロボロになった服を赤く染めた。
「知らねえじゃねえだろうがよ、あぁ?お前左馬刻の犬だろぉ?吐かなきゃまじで海に沈むことになるぞ?」
ゲラゲラと笑う男共に取り囲まれてまた蹴られ殴られが始まった。
左馬刻なんて…、あいつなんて大嫌いなのに、それに俺は組織の秘密なんて知らないのに。
でもそんなこと言ってもこいつらは解放してくれないらしい。このままこいつらに殴り殺されて俺の人生終わってしまうんだろうか…。
まあ、でも碧棺左馬刻に拾われた時点でどのみち俺の人生は終わってたかもしれない。
だってあいつと関わるとこんな目にばっか会っているんだから。
最悪だ、あいつなんて大嫌いだ。サンドバックにされながら体がどんどんおかしくなっていく。痛いしひゅーひゅーと呼吸がしにくい。
ときどき視界がぼやけて、もうダメかもと思った時閉じ込められていた部屋のドアを蹴破る音が聞こえた。
「おい、てめぇら何してんだ、あぁ?」
「 っ左馬刻!くそっ、おいお前ら殺るぞ。」
「はっ、誰が誰を殺るって?もういっぺん言ってみろ。お前らの頭かち割ってやるよ」
何でこんなところに左馬刻がいるんだろう。ていうか、ここに来たら自分も危ないのはわかってるはずなのに…。
動かない体で左馬刻を見た。目だけしか動かない。
「おーおー、どこのもんが倒れてるかと思ったらなまえじゃねえか。お前らこいつで遊んで楽しんでたってわけか?」
「こいつが吐かないならお前を同じ目にして吐かせるだけだ!」
「舐めたこと言ってんじゃねーぞ。てめぇの舌に弾ぶち込んでやるぞ。」
カツカツ、と足音が大きくなって俺のすぐ近くで止まった。
左馬刻の靴が視界に見えた。
「よぉ、なまえ。帰ってこねぇと思ったらこんなとこで横になってんのか。弱ぇなてめぇは、よっ!!」
男共に入れられた蹴りとは比較にならない衝撃で腹を蹴られた。
「カハッ…ハッ、ハッ、っ…ぉえっ、」
あまりの衝撃に胃から逆流してきたものを吐き出した。
「…は…?そいつお前の犬だろうが…」
朦朧とする意識の中、男共の狼狽える声が聞こえた。
「あぁ…?こいつか?俺の犬…?そんな可愛いもんじゃねぇよ。」
クツクツと笑う左馬刻に男共は顔を見合わせていた。
「言うことも聞けない犬、以下だ。だけどなぁ、こいつを殴っていいのは俺様だけなんだよ。」
「お、おい…」
「俺以外でこいつをサンドバックにしたやつは全員ぶっ殺してやんぞおらぁ!!」
途端に殴る音、机や椅子が壊れていく音、銃声、怒号、色んな音が耳の中に入ってきたけど俺の視界はもう見えていなくて遠ざかるその音に 碧棺左馬刻なんてクソッタレだ、と思いながら落ちていった。
***
目を覚ましたら腕にはチューブが何本か入っていてちゃんと生きているんだと実感した。
どこだここは、なんてことにはならなかった。
いつもの部屋だ。俺が左馬刻の犬だからだと狙われてボコられた時に治療されたらここに連れてこられる。
あぁ、また生きてる。またいつかボコられるんだろうか…。
最悪な人生だと天井を見つめているとドアがガラリと開いた。
そこには憎き左馬刻がいた。本当は憎まれ口でも叩きたかったけど絶対服従でいないと俺は殺される。だから思ってもいないようなお礼を言った
「……左馬刻さん…ありがとうございました…」
「はっ、思ってもないような礼をよく言えるな」
ゆっくりとした足取りでベッドに近寄ってきた。
何を言われるのかと身構えていると左馬刻の手が伸びてきて、髪を思い切り掴んだ。
髪を引っ張るように無理やり俺の顔を左馬刻 向かせた。
「いっ、…!」
ボコられた怪我の痛みで全身がビリビリとする。
これだから嫌なんだ、俺を人間だと思っていないような左馬刻の扱いがもっと左馬刻を嫌いにさせる。
我慢できなくて左馬刻を睨んでしまった。
お前のせいで俺はいつもこうなってるんだ、と。
「なんだてめぇその目は。誰が助けてやったと思ってんだ。」
「……っ」
どうせ言い返しても暴力を振られるだけなので唇を噛み締めた。
「てめぇはほんと弱ぇな。どうやったらお利口に使いぐらいできんだよ?カス共にボコられてこのざまか?」
蹴られて青黒くなった腕を左馬刻が握った。
痛さに顔を顰め、耐える声が喉から漏れた。
「いたいっ!」
「男のくせに…。俺に何度動かせた?あぁ?」
「っ…それなら俺を捨てろよっ!自由にさせろよ!」
「…はっ、馬鹿かてめぇ。お前は俺が拾った時から俺のもんなんだよ。ったく、お前はほんと弱ぇなあ…くそ邪魔なお荷物だわ」
それなら、それなら毎回俺のことなんか助けるなよ!心の中で必死に叫ぶ。
左馬刻はカチン、とジッポで煙草に火をつけて、吐き出した。
吐いた煙が俺の肺に入ってきた。
「ごほっ、ごほっ、」
噎せてまた肺に激痛が走った。辛い。痛い。
この男はどこまでも俺を痛めつける。最悪だ、こんなやつから逃げ出したい。
もう嫌だとシーツを両手で握りしめた。
「…てめぇは使い物にならねぇからな…。そうだな、今からお前は俺の女にしてやるよ。腰振るぐらいなら弱ぇお前でもできるだろ。」
「…は…?」
何を言ってるんだこいつは。左馬刻の言葉に目を見開いた。
「お、女なんて…いくらでもいるだろ!」
「黙れ。俺が言ったことは絶対だ。回復するまで待ってやらぁ。せいぜい肉つけておくんだな。」
「おい、ふざけんな!お前なんか、「ふざけてねぇよ。てめぇに拒否権なんざねぇんだよ」…っ」
紫煙を吐き出して左馬刻は部屋から出ていった。
それから、事情聴取で入間さんが入ってきた。
男共は逮捕されたみたいだ。
唇を噛み締めて下を向いている俺は入間さんが何を言っているのか理解できなかった。
左馬刻の女?ふざけんな…。あいつの女なんて吐き気がする。
絶対に、絶対に逃げ出してやる…。
そう誓ったのに逃げ出した日に俺は左馬刻に見つかった。
いや、見つけ出され左馬刻の前まで連れてこられたのだ。
「よぅなまえ。逃げられねぇのはわかったか?」
左馬刻の笑った顔を睨みあげだ。
髪を乱暴に掴まれてベッドに叩きつけられた。
必死に抵抗してみたが虚しく、全く効かなかった。
俺はその日、左馬刻の女になった。
何度も俺の名前を呼ぶ左馬刻に俺はこの世の不平さを憎んだ。
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