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乱数くんと街中を歩いている時だった。
デート…?というよりは荷物持ち…?に近いかも。なんて思いながら乱数くんが買った服や小物の入った袋を持っていた。
ぴょんぴょんと身軽に歩く彼の少し後ろを歩くようにぼーっと前を眺めていると乱数くんが小さな女の子に呼び止められて立ち止まる。
有名な乱数くんは老若男女誰からも好かれている。女の人には特に…。
お母さんに手を繋がれた女の子に「らむだくん!」と笑顔で呼ばれて乱数くんはぴょんと女の子の前にしゃがみこんだ。
「はぁーい!皆のらむだだよ〜♪この服可愛いね!お姫様みたぁい!」
にこりと笑って女の子の服を褒める乱数くんにお母さんも女の子もすごく嬉しそうだった。
「じゃあそんな可愛い子には、はい!これ♪あげちゃうよ〜♪」
ポケットから取り出したキャンディを女の子の小さな手のひらにちょこんと乗せて乱数くんは笑った。
うん、乱数くんも傍から見れば女の子に負けず劣らず可愛い笑顔してるなぁと俺は思いながら少し離れたところで見ていた。
女の子とお母さんがバイバイして行ったあと、俺はまた乱数くんに近づいた。
子供に対しても乱数くんって優しいんだなぁ…。
家族とか…自分の子供とか出来たりしたらあんな感じで、いや、もっと可愛がって育てるんだろうか…。なんて考えてしまった。
「なに〜?そんなに見てさぁ」
乱数くんのお父さん姿を想像しているうちに見すぎたのか乱数くんが首を傾げてきた。
「…いや、乱数くん…優しいパパになりそうだなぁって…思って…」
乱数くんを見てそう言ったところで、優しいパパをする乱数くんを想像した俺はつきりと胸がいたくなった。
…俺は男だから子供なんて出来るわけないし…乱数くんに似た可愛い子供なんて産めるわけないし…。
街中を歩くと絶対に目に入る家族の姿。お父さんとお母さんとそれから小さな子供。嬉しそうに両親の手を引く子供は親にとっては可愛くて仕方のないものだろう。
乱数くんにもいつかそんな可愛い自分の子供ができるのかな、って……。
ああ、やばい。なんかセンチメンタルになってきた…。
乱数くんの顔が見えない。
足元に落とした視線を上げる勇気も気力もなくて、俺は手に握った袋を見た。
乱数くんってこんな平凡な男の俺と付き合ってるけど…、本当はオシャレでスタイル良くて綺麗なお姉さんとか可愛い女の子とかそういう子の方が好きなんだろうか…。
乱数くんのデザインした服を可愛く、オシャレに着こなす子の方が好きなんだろうか…。
あ、やばい。泣きそうだ。
いつからこんなに涙腺弱くなったんだ俺…乱数くんに気持ち悪がられるし早く話題を変えようと無理やり笑った。
「…ははっ、乱数くんの子供だときっと可愛っ、えっ」
上手く笑えてるかなって気にしているといきなり乱数くんに引っ張られて路地裏に連れていかれた。
「ら、乱数くんっ?」
力強い手に引っ張られるがまま、人のいない路地裏の建物の壁に押し付けられた。
「な、っ、らむ…ん…」
びっくりして乱数くんの名を呼ぼうと口を開けた瞬間、乱数くんの唇が俺の唇に触れた。
「はっ、ら、ぅ…んっ」
噛み付くような激しい口付けに俺は気が動転して上手く合わせられない。息がしにくくて心拍数が上がる。
こんな所…人通りがないとは言え誰が来るかわからないのに…っ。
「…っ、んぅ、」
乱数くんの肩を叩いてもやめてくれる気は無いらしい。
責めるような口付けに解放されたのは俺が酸欠でクラクラする頃だった。
「…っ、はあっ、いき、なり…ど、したの…」
生理的に涙目になった俺は壁に背中を預けてずるずると落ちそうになる。乱数くんを見上げてみると、乱数くんは少し怒ったような苛立ったような表情だった。
つーん、として開いた口からはいつもの明るい乱数くんの声じゃなくて低い声が降ってきた。
「ウザイからキスしたくなった。」
「な、なにそれ…」
イラついたように言う乱数くんは夜の時みたいに少し口調が荒かった。
「ウザイよね。なまえって。」
今度はいつもの声で呆れたように言われる。
「ひ、ひどい…」
「…なまえが考えてること、全部わかってウザくなっちゃう♪」
にこりと笑う乱数くんに俺はどう反応していいか分からず眉を下げた。
「子供ほしいの?♪」
「え…、いや…そういう…わけじゃ…」
「ボクとの子供欲しいの?」
「で、できないよ…、ははっ…。俺、女性じゃないし…」
「わかんないじゃん♪そうやって決めつけるのよくなーい。今から作ろっか♪」
「え…?」
「ほら、早く帰ってつくろーよ♪」
手をぐいと引っ張られて俺は目を丸くした。
「安心して、孕むまで出してあげるから♪」
ぺろ、と舌を出したあとニヤリと笑った乱数くん。
生物学的に無理な話なのに本気なのか冗談なのか分からないけど俺の手を引いてくれる乱数くんにちょっと嬉しくて泣きそうになった。
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