届け、チョコ

3年時 春 本編61話付近
(宮侑)

練習が終わり部室で着替えていると治がカバンの中からチョコ菓子を取り出した。
練習着を脱いで、Tシャツを着ながら片割れの行動をチラ見する。

個包装の袋をペリ、と開けて口に放り込んだ。治はモグモグと咀嚼しながら開けた袋をじっと見ている。

「何?」
「ん?メッセージ付きチョコやって」

治の手元を覗き込むと個包装の袋には『応援してるよ!』と印刷されている。

「今日、後輩の子がくれたんや」
「ふうん」
「なんや色んなメッセージがあるらしいで、これ」
「色んな、て何」
「いつもありがとう、とか。ごめんねとか、ずっと好きでしたとか、」
「ふうん…」

言われてみればそんなお菓子があったような気もする。メッセージ入りのお菓子。

前から落としてやりたいと狙っているアイツの姿を頭の中で思い浮かべる。

…ええこと考えた♪

着替え終わり角名、治と一緒に寮へ帰る途中、コンビニの前を通る時にちょっと寄りたいと声をかけた。

「おお、あった」

コンビニの中に入ってぶらりと歩き回る。目の前には想いを届けよう!と書かれたメッセージ付きのチョコ菓子。手に取ってレジで会計を済ませた。外で待っていた2人の元へ戻りバス停に向かう。

「ツム、何買ったん」
「んー、腹減ってん」
「唐揚げ?俺も食いたい」
「ちゃう。チョコ」
「はぁ?チョコ?」

バスに乗りこんで、買ったチョコの封を開ける。中から個包装のチョコが出てきた。個包装の袋にはメッセージが書いてある。

『ありがとう』『ごめんね』『頑張って!』『お疲れ』『一休みしよ!』他にも色々なメッセージがあった。

目当てのものを手にして稲荷崎ジャージのポケットに入れ込む、残りはカバンに突っ込んだ。

寮に帰り、在寮掲示板の名札を裏返す。

なまえに《帰った。飯食う》とメッセージを送ると、すぐに既読になった。

みょうじなまえ《何分後?》
宮侑《10分後》
みょうじなまえ《りょうかい》

階段を上がり、自分達の階に着いたが俺はさらに上がろうと階段に足をかけた。

「ツム?どこ行くん」
「ちょおなまえの部屋行く」
「ふーん、飯先行っとくで」
「おん、後でなまえと行く」

自分の部屋に入らず、帰って早々になまえの部屋に向かった。
部屋の前に立ちノックすると「はぁい」と中から間抜けな声が聞こえてきて笑った。

「あ?侑?どした?おかえりー」
「ええもん、やる」

部屋に来ていきなり、良いものをあげると言われたなまえの反応は数秒間を開けて首を傾げた。

「良いもの?」
「おん」
「何?」
「手ぇ出して」

今からあげるものを知っている俺は楽しくてニヤニヤと笑う。そんな俺を見てなまえが怪しそうに見てきた。

「……えぇ、やだ。お前何か企んでるだろ」
「企んでへんし。ええもんやる、て言うとるやんか。手ぇ出せ」
「…これで手、出して変なもん乗せてきたら怒るからな?」

アホやなぁ、そんなんするわけないやん!
あ、前はやったけど、今日はせえへんし!

くつくつと笑う俺に前科があるの忘れんなよと睨んでくるなまえが面白くて仕方がない。

「はよぉ手ぇ出して」
「……はい」

渋々と言った形で手を出したなまえの手のひらにポケットから取り出したチョコを乗せる。

「ん?お菓子?」
「な?ええもんやろ?」
「うん普通のお菓子、だよな?」
「当たり前やん、さっき買ったばっかやもん」
「ふーん、ありがとっ」

後で食べよ、と言うなまえを制す。

「今、食べて」
「…は?今?」
「今」
「え、何で」
「何でも」
「俺の前で食べて」

訝しげな顔をして俺を見る。「食べるまで動かん」と言えば、訳が分からないという顔をしながらペリリと袋を開けた。

チョコを手に眉を寄せてしげしげと見るなまえが面白くて笑ってしまう。恐る恐る口に入れたなまえは眉を上げた。

「…美味しい。普通にチョコ…だな」
「何疑ってんねん、ウケるわっ」
「だって…いきなりチョコ渡してきて、今すぐ食えとか言われたら疑うだろ!」

モグモグと咀嚼するなまえを見て気が済んだ俺は「はぁ、腹減った!食堂はよ行こ!」と声を上げた。

「俺も、もう食堂降りるわ」

鍵と携帯を持って部屋から出てきたなまえは俺の隣を歩く。チョコを食べ終わったのか、ごくんと飲み込んだなまえの喉仏を見て俺はニヤリと笑った。

「何だよ」
「何でもあらへーん」

その手に握る個包装の袋に何て書いてあるか知っとるか?
気付くやろか?

俺が渡した

『この想い、キミに届け!』

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