お金のために研磨くんに体を売りました!
お金のために研磨くんに体を売りました!
孤爪研磨×平凡男主 社会人編
福永招平と幼馴染な平凡男主(音駒高校出身)
福永繋がりでバレー部と仲が良い
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「詰んだ…」
ATMの前で呟いた声は無情にも『ありがとうございました』と言う機械音声にかき消された。
人生、詰んだ。
みょうじなまえ、齢23歳、貯金残高3千円を切ったところで、バイト先もクビになりました。
たった今、フリーターから無職になりました。
「……どうしよう…」
金なし、職なし、彼女なし。
道端で頭を抱えてしゃがみこむ。
携帯を取り出して画面を見ると充電は残り7%。全てがギリギリの状態。
追い打ちをかけられ頭に浮かぶのは幼馴染の姿……。
連絡先に登録している幼馴染の名前をタップした。
『……もしもし?』
「招平!出てくれたぁっ!良かった…っ」
『切っていい?』
「ダメだろ!」
ツッコミを入れると電話の向こうで小さく噴き出した。
「なぁ聞いてくれよ、たった今貯金額が3千円を切った」
『おめでとう、先月は1万きったって言ってたから頑張った方じゃない?』
「そういう問題じゃねえ!バイト、クビになったしどうしよううう…っ!!」
『どんまい。家に帰れば?ヒキニートまっしぐらかもだけど…』
「やだよ!家出たいから必死で暮らしてんのに…っ!」
『何で金なくなったん?』
「……色々と遊ぶのが楽しくてぇ…」
『自業自得じゃん』
「うぐっ……」
幼馴染である福永招平の言葉に言い返すことも出来ず口篭っていると携帯がピコンと鳴った。
「やばいっ!充電切れる!なぁっ!何かいい方法ない?!明日までに10万くらい入るとか!」
お笑い芸人として日々、人を笑顔にさせながらアルバイトも頑張っている幼馴染にだからこそ、頼めるお願いごとだ。
そんな俺の必死のお願いごともコイツは無惨に蹴った。
『ないっしょ』
「んぁあああっ、どうしよう家賃とかぁっ!!」
『んー、そんなオツムの弱いなまえを助けられる方法なんて…………あ、あった』
「えっ!まじ?!何でもする!!」
『研磨のとこ行けば?』
「………えぇぇ……それは却下…」
『何でそんなに嫌がってんのウケる』
面白がる招平に俺は一人苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
何で、ってそりゃ俺はすでに研磨から10万借りてるからだよ!!!
友達にお金を貸してもらうなんて友人関係を破壊する行為であることも百も承知のうえで、俺は友達である孤爪研磨に泣きついてお金を借りているのだ。
10万、それも明日が返済期日。
「あああっ!!どうしよう!!もう俺飛ぶしかないのかな……」
『なまえは飛べないっしょ。鳥じゃないし』
「真面目なツッコミいらん……はぁぁぁ。部屋出るしかないのかな…招平んちに住ませ『あ、無理』……ひでえ」
『っと、他の電話来たから切るね。また生きて会おうゼッ』
「あ、おいっ、招平のばぁぁかっ!」
通話の終了した電子音が耳元で鳴る。
「はぁぁ……」
最悪だよ……友達から金借りたうえに、貯金額2,630円って……
また頭を抱えてしゃがみ込むと携帯が震えた。表示された名前を見て顔が青ざめる。
「け、研磨…」
今は非常にタイミングが悪い。それなのに一向に電話は切れる様子がない。渋々、通話ボタンをスライドした。
お願い神様、研磨が俺に10万貸した事忘れて暮れてますように!!
「も、もしもし…どちら様ですか……?」
『……ふざけてる?』
ものすごく冷めた声が返ってきて、ひぅ、と縮こまった。
『明日、約束の日だけど準備できてるよね』
「……あのぉ、かけ間違いだと思うんですけどぉ…『遊んでんの?意味分かってるよね?なまえ』
……うぁああああっ!忘れてない!
「…じょ、冗談だって〜!もうっ!研磨くんは冗談通じないのかなぁっ」
『いいから。用意出来てんの?』
「……で、出来てると言われれば出来てるんだけどさぁ」
嘘。出来てません。俺の全財産、貯金額の2,630円と現金5,013円と電子マネーいくらか合わせても1万ちょっといくかいかないか。
「すっっごく言いにくいんだけどさぁ、約束の日、ちょおっとだけ延ばしてくれないかな、って!」
『無理』
「…………う、うん、そ、そうだよなぁ〜〜、あ〜、うん〜」
どうしよう、どうしよう、もうこれ、今すぐ消費者金融に駆け込むしかないか??
どこか歩けばいくらでもあるだろ、と街中のビルを見渡し看板に目を向ける。
『とりあえず今からウチ来て』
「えっ……」
怖いよ、今行ったら10万返すまで絶対家に帰してもらえない気がする。
「い、今からちょっと用が…」
『何?バイトクビになったんでしょ?』
「な、なぜそれを!!」
『福永から聞いた』
「な゙っ!!アイツ!」
まさか、貯金額まで言ってはないだろうな?!
「そ、それ以外で何か聞いた?」
『いや聞いてないけど』
その言葉を聞いてホッと安心する。
『で、来るよね。ていうか…来い』
「……断ったら?」
『断れると思う?』
ひやぁぁぁ、怖い目してるのが電話越しに分かる…研磨ってゾッとするくらい怖い時あるんだよなぁ…
音駒高校で同じ組だった時も、休み時間に招平と面白いこと言おうぜって真剣に考えてたらバカを見るような目で見られた記憶が蘇る。
それもなぜか俺だけ!招平との扱いが違うし、俺には容赦ない!
でもテスト勉強が辛くて白目剥いてたら、放課後2人になるまで残って付き合ってくれたり、たまに優しい時もあるからよく分かんない奴なんだよな…。よく一緒に帰っていたし、仲は良い方だ。
そんなこんなで出会った時から面倒くさそうな顔をしながらも俺の面倒を見てくれる研磨に対して強く断ることはできない。
「わ、わかったって。行くから!」
研磨の家に行く約束を飲み込み電話を切る。充電残り2%。
「はぁぁぁ……消費者金融寄って行くか…」
フラフラとする足取りで目に入った消費者金融の看板を辿り建物へ近づく。
「ここの会社は前に借りたから…」
別のところにしよう、と唸りながら考えていると隣に男性が寄ってきた。
「あれ、キミお金とかで困ってる感じ?」
うわ、何かチャラくてめんどくさそうな人が話しかけてきた…
「いや…」
「良い話あるけどどう?大人のお店で、接客なんだけど報酬めちゃくちゃいいよ〜普通に1日で10万超えるからっ!」
えっ…そんなに…?
俺の顔色が変わったのを見抜いたチャラそうな人はニヤリと笑った。口に手を当て、内緒話をするように耳元へ顔を寄せてきた。
「男性専門なんだけどさぁ、お客様にキモチいいことすんの。同性イけるなら男でも自分の体で稼げるよ?キミ結構いけると思う!」
はっ?!それって…ウリ?!しかも男相手?!
「いやいや興味ないっす!急いでるんで!」
頭をブンブンと大きく振り、足早にその場から退散する。
「さすがにそれはないだろ…っ」
公共交通機関で研磨の家に向かいながら、俺の全財産はどんどん減っていく。
数百円でも大きな痛手だ。
くそぅ…あんなスカウトに話しかけられなければ消費者金融で金借りれたかもしれないのに…
男性相手にウリなんて…でも1日10万はもらえるって本当なのかな…
こんな平凡な俺にも声かけてきたってことは、それなりに需要あるってこと…?
1日に10万か…
金に目が眩み、そういう道もあるのかと考えているうちに孤爪家の近くまで来ていた。
古い民家を買い一人暮らしするほどに金銭面は潤っている。
同い年なのになぜこれほどに違うのだろうと家の前で佇み、踏み入れるのを躊躇した。
「うぅぅ、10万持ってないし…何て言おう…延期のお願い…うぅぅ」
ぐるぐると考えて唇を噛み締めていると玄関の引き戸がガラリと開いた。
プリン頭の長い髪を後ろで緩く結んだ研磨が猫みたいな目で見ていた。
ちなみに玄関の所にも猫がお座りしていてにゃあん、と鳴いている。
ギョッとして研磨を見る俺に「不審だから入ってくれない?」と声をかけてきた。
「え、ええとぉ、まだ、その約束のブツは持ってきてないって言うかぁ」
「いいから入って」
「はい」
サッと玄関に入り丁寧に靴を脱いだ。
研磨の家に来るのは久しぶりだ。
以前は泊まることも多かったが10万の返済期日が近づくにつれて足が遠のいていた。
居間に通され、畳の上に座る研磨に合わせて俺もへたりと座り込んだ。
「で、明日、どうすんの。返せるの、返せないの」
研磨の目が真っ直ぐ見てきて思わず目を逸らした。この見透かすような大きな目で見られると直視できない。
「か、返すっ!必ず!」
「どうやって?」
「それは、えーと…」
部屋の中に視線を彷徨わせる。机の上には高そうなデスクトップパソコンに、ゲーマー御用達のゲーミングチェア。機材のことはよく分からないがお金をかけていることは分かる。
質素な生活なのに、やっぱり潤沢なところは垣間見える。そりゃ世界のコヅケンとも言われるゲーマーかつトレーダー。
頭の造りも持っているものも俺とは違うのだ。
そう考えると同じ歳なのに、何で俺は、と今更になって自分のバカ具合に情けなくなってくる。
招平の言ったようにこんなことになったのは自業自得なのに。
黙る俺に研磨が口を開いた。
「福永からなまえの貯金額3千円きったって聞いた」
「っ!!しょ、招平っアイツ!」
研磨に言いやがった!
「なまえが困ってるらしいから、話聞いてあげてくれって言われたんだけど」
んんんんっ!優しいんだけど!優しいんだけど、今それを言うところじゃないんだよなぁっ!!
「そんな状態で返せるって本当?」
「う……っ」
「もっと現実的な話してほしいんだけど」
「ゔぅっ……っ」
ぐあああああっ!
グサグサと胸に刺さる言葉に痛みで胸を押さえる。
現実的…現実的に…
「け、研磨に返すために消費者金融…」
「は?バカ?雪だるま方式で債務増えるだけって知ってるよね?」
「ヴッ…」
静かなキレ具合に開いた口を閉じて、もう一度現実的な方法を頭の中で必死に考える。
どうしようどうしようどうしよう…っ明日の家賃も友達への10万の返済も、消費者金融への返済も!!
もう人生詰んだ!!!どうにでもなれ!と思い、ぎゅっと拳を握った。
「ウ、ウリをしようかとっ!」
「………は?」
俺の言葉に研磨の瞳孔が開いた。視線をヒシヒシと感じる。
「1日10万稼げるらしいしっ、俺にも需要があるらしいし、これなら全部解決しそうな気が」
1日10万なら、5日頑張れば家賃と、光熱費と、消費者金融と、それからそれから研磨への返済と…全部埋められそう…
なんてぶつぶつ呟いていると、研磨の顔から表情が消えていた。無表情というか、なんと言うか、真顔がとても怖い。
「…いつまで経ってもオツムが弱いね」
「ひぅ…」
「今払えてないの、全部言って」
そんなの言ったら研磨に10万返せませんって言ってるようなものじゃないか。言えるわけない!
「そ、それは…」
「言って?」
背筋をピンと伸ばしながら「はいッ」と即答する。
「家賃と、ガス代、電気代、水道代、携帯の請求が来週で…、あと消費者金融の…返済とかも…」
ゴニョゴニョと言っていると研磨が頬杖を付いてトントンと机を叩いた。綺麗な長い指が机を叩く様子に目を向けていると「ウリねぇ…」と呟いた。
「なまえに出来るの?」
「やってみなきゃ分かんないけど…金のためなら…っ」
ここで誠意を見せなければ返済意思がないと思われてしまうかもしれない。それは避けたいのでしっかりアピールしておく。
「へぇなまえは金のためなら自分の体売れるんだ」
「そ、そりゃ返すために俺は何でも!!」
「じゃあさ、それ」
俺が買うよ。
そんな言葉が耳に入ってきて、俺の思考は数秒間ストップした。
「……へ?」
「金のためなら何でもするんでしょ。今ある債務全部俺が持つから。なまえの体、俺が買うよ」
「…………はぇ?」
俺を…買う……??
研磨が…俺を……??
「どっちがいい?これからずっと返済のために苦しむのと、ここで全部綺麗にするの」
それはもちろん綺麗にしたいけど…したいけど研磨に買われるとはどういうことだ……??
瞬きをして首を傾げる俺に研磨は「もちろん、今の部屋も全部解約してここに住むこと前提だから」と付け足した。
「ここまで自由にさせてきたけど、そろそろ限界だし、これ以上バカを野放しにさせるわけに行かないしね…」
と呟きながら携帯を手に取り片手で素早くタップした後、画面を見せてきた。
送金と表示され、6桁の金額が並んでいる。
「ご、ごじゅっ、うっ!?」
「このボタン押したらなまえの口座に50万送信できる。とりあえずこれで引き落としは出来るよね」
喉から手が出るほど、今欲しいものだ。口を開けたまま、俺は画面から目を離せなかった。
お、押してほしい…っ!そのボタンを…っ!
「ねぇ、どうする?」
ここで今日初めて研磨が笑った。
楽しそうに目を細めている。まるで釣り餌に魚が引っかかるのを待っているように。
ネズミが罠に嵌るのを待っているように。
「綺麗にしたいよね?やり直したいよね?」
「……っ!」
このボタンを押す代わりに、なまえの体も、全部、俺に売る。衣食住全部ついてくるよ?
そんな条件に頭の中で考える。
衣食住ついて、さらには今溜まっている債務も全部チャラにしてくれる…。
最高じゃないか…っ!
「全部売るって俺は何すればいい…?仕事は…?」
「何もしなくていいよ。俺と一緒に暮らすだけでいい。まぁ生活上必要なことはしてもらうかな。掃除とか、料理とか、色々と」
掃除!料理!やろうと思えば全部できるはず!
研磨は面倒臭がりなところもあるし、身の回りの世話をしてくれる人が必要なのかも!
それなら俺もできそう!
これをお互いに利害の一致と言うんだろう!
「そ、それなら!」
「うん、もう答えは決まってるよね。俺に全部売りますって言うならこのボタン押すよ」
っ!!
「研磨に全部っ!」
言いかけたところで研磨の目を見た瞬間、言葉が詰まった。
静かに見てくる目がなぜか怖く感じる。
本能的に本当に良いのか?と脳から危険信号が発信されている。
ここで承諾すればお前に帰る場所はない、逃げ場もない、この檻の中に入ったからには出られないぞ、というような視線に体が竦みそうになる。
それでも悲しきかな、今の俺に研磨の申し出を断るという選択肢はない。
だって、返済しないといけないものが山積みなのだ。それを全てリセットしてクリーンな状態にしてくれる救いの手を取らないなんてことできるわけないだろう…?
「俺に?なに?続き、言って」
笑いかけて続きを促す研磨に唾を飲み込んだ。
それは本当に救いの手なのか、それとも地獄への誘いか…
早く言え、と大きな猫目がギラついた。
「っ、研磨に体も心も!俺の全部、売ります!捧げる!」
「うん、わかった」
研磨の指が携帯の画面をタップした。見せてきた『送金を完了しました』の表示に、ほっ、と安堵して肩を下ろし、へにゃりと笑う。
そんな俺を見て研磨は満足そうに笑った。お互いに笑いあっているのに、なぜか心の奥底で言い表せない恐れのようなものが這っていた。
いや、よかった!よかったんだ!
これで俺は晴れて自由だ!!!
「引越しの手配進めとく」
「おう!へへへ、研磨ありがとー!!」
「……ううん、ねぇなまえ、」
「なに?」
「体、売るってそういうことだから」
「…………え…?」
はぁ、夜から実況配信するし、ちょっと寝る。
そう言って研磨は欠伸した。
……え??
そういうことって……どういう…
きょとんとする俺を無視して寝室に向かう研磨の背中を見送った。
そして、この時、何も考えずに50万に目が眩み簡単に研磨に体を売ったことを、俺は後になって後悔するのだ。