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お金のために研磨くんに体を売りました!
孤爪研磨×平凡男主 社会人編
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研磨の家に引っ越してきてからというもの、俺は見事なスライムになっていた。
「あぁぁ…」
ぽかぽか日和、日当たりの良い縁側で大の字に寝転ぶと身も心もふわふわしてくる。
「ほぁぁ……気持ちぃ…」
猫の如く床の上で溶けている現在、午前11時。
10時に起きて朝飯を食べた後、縁側でまったりしていたらまた眠くなってきた。
研磨はまだ起きてきていない。
今日は何しようかなぁ、いやその前に俺にはすべきことがある。
研磨が起きる前に洗濯と食器を洗って…
「ぅううう、動けないぃぃ」
俺は研磨の身の回りのお世話をするためにここに居候しているんだから!と心の中で喝を入れるも体は全く動こうとしない。
研磨が俺の返済債務を全部片付けてくれたし、俺はここで頑張らないと…。でもこの縁側、本当に気持ちいい…特等席なんだよなぁ…
掃除もしなきゃだけど…掃除はまぁ…明日でもいいかなぁ
ウトウトとしてくる眠気に勝つことなんて到底出来ず、そのまま目を閉じた。
▽
次に目を開けた時、視界には研磨の顔が飛び込んできた。上から俺を覗き込んでいる。
「……、ぬぁっ!!」
「……おはよ」
いつからそうしていたのかは、分からないが目を開けた瞬間から凝視されているとめちゃくちゃ心臓に悪い。
「お、おはっ、おはっ!!」
や、やばい、俺、洗濯も食器洗いも掃除も、色々としてないのに!研磨起きちゃった!!
勢いよく壁掛けの時計を見る。とうの昔に昼は過ぎている。
「い、今すぐ片付けますっ!」
「食器なら食洗機にいれたけど」
「じゃ、じゃあ洗濯!するっ!」
「もう洗濯機動かしてる」
「うっ…」
お、俺とした事がつい寝てしまったがために…!何で俺はこんなにダメダメなんだ!
全てこの縁側が悪い、と打ちひしがれていると研磨が立ち上がった。
プリン頭の髪を適当に結びながら、床に頭を打ち付けている俺を見下ろす。
こんな失態、バイト先の店長ならご立腹ものだ。
怒られるかも、とビクビクしながら研磨をそろりと見上げる。
目が合うと少しつり上がった猫目にじっと見られた。特に何とも思っていなさそうな表情で「洗濯終わったら乾かして」と言われた。
「はぁい…」
はぁぁ、いっその事貶して怒ってくれたらいいのに!
ここに引っ越してきてから研磨は俺に怒るということをしない。
もちろん、注意はされるけど色々失敗しても「……まぁいいよ」と許してくれる。
たまに、内心めちゃくちゃキレてんだろうなぁって顔をする時もあるけど…
全体的に甘やかされている気がする。
居心地も良いし、日当たりは最高な縁側があるし、衣食住困ることの無い生活は申し分なく、このままでは本当にダメ人間になってしまうかもしれない!!
「うぁああぁん…」
この悩める葛藤に縁側でゴロゴロと寝転がっていると玄関のチャイムが鳴った。
今こそ!俺の出番!でも体が動かねぇ!
俺がモタモタしている間に研磨が出てくれたようで2人分の足音が床から振動で伝わってくる。
足音は近づき、居間に入ってきた長身姿に俺は寝転がったまま、あっ、と声を上げた。
「黒尾先輩!お久しぶりです!」
「おー?なまえじゃん、そんなとこで何してんの」
そう言われて、自分の状態を客観的に見返す。
縁側にゴロゴロ寝そべっている無職の男が一人。
これは相当ひどい絵面なのでは?!
ガバッと起き上がり、手櫛で寝起きの頭を直した。
「いやっ、これには深いワケが…っ」
「今日、平日だけどなまえも休みか?」
俺は土日に企画したバレーイベントがあるから振替で休日なのよ、と話す黒尾先輩がそれはそれはとても楽しそうで充実した顔をしているものだから俺は自分を情けなく思い、泣きそうになった。
無職なんて、絶対言えないっ!
「お、俺も同じですよ!今は長期休暇って感じでぇ…心と体をリフレッシュするためのバケーションみたいなぁ…」
あたかも俺も社会人としてきちんと労働しているかのように振舞ってみるも研磨が横から「嘘だよ。今、無職」なんて容赦ない言葉を突っ込んできた。
おかげで俺の体裁は一気に崩れ落ちた!
「ほぉ、無職?で、研磨んちに遊びにきたってわけか?」
「えーと、まぁ、ちょっと暇だし寄った、って感じで……」
「それも嘘。今うちに住んでる」
うぁぁぁっ、どんどん俺の悲惨な怠惰な生活が露呈してる!!
言うなよ!と研磨に視線を投げるも「本当のことだし」と一瞥されて終わる。
そうだよ、どうせ俺は無職で友達の家に居候してる金食い虫だよ!皆みたいに働いてないもん!!働かずして飯食ってすみませんねぇ!!
どうせ俺は…なんてぶつくさ言いながらまた床に寝っ転がるとお日様のぽかぽか具合に体が脱力していく。
「ふぁぁあ…気持ちぃ…」
「ナニ?研磨、お前ついにアイツ飼い始めた?」
「…あの無職、野放しにしてられないし」
な、何だって!さっきからひどいな!
ひどいひどい!俺のこと無職って…!
「ひ、ひどい…っう、うぅっ…」
涙を堪える俺に黒尾先輩は面白そうにニタニタと笑った。
「ぶはっ、安心しろ。なまえが無職でも、ここに住んでても、何一つ驚かねえから」
全然安心できませんけど!
黒尾先輩は研磨に「最近どうよ?」とお互いの仕事の話を始めた。バレーの大会がどうとかバレー競技の人口とかそんなことを活き活きと話す黒尾先輩を見ていると無職でこうして縁側でだらけている自分とのあまりの格差に後ろめたい気持ちが一気に押し寄せてくる。
情けないやらなんやら…。
研磨の経営の話も難しくて俺には全然分からないけど、幼馴染の2人が楽しそうに話す姿に、高校までは同じ所に立っていたはずなのに…と胸が苦しくなってきた。
どこで間違ったんだ俺の人生……!!
床に頬をつけてダラける無職に成り下がってしまった俺の何がいけなかったんだ…!
「うぅぅ…俺は無職…ダメ人間…。皆、ちゃんと仕事して、対価もらって…労働って辛いのにすごい…尊敬するぅ…」
眉を下げ独り言を呟きながら黒尾先輩を見た。
辛さなんて微塵も感じない充足感に包まれた表情に、あぁそうかと頭の中で合致した。
「皆、好きなことして生きてるんだ…黒尾先輩も招平も…虎も…」
研磨も…
大好きなバレーボール、大好きなお笑い、大好きなゲーム。
皆、好きだからあんなに楽しそうなんだ……
自分と皆との違いが明確に分かってしまったところで心の中には雨が降り始めた。
「ぅっ、ううっ、俺だけクズじゃん……ダメなやつじゃん…バイトクビになって…っ、友達に金借りて……っうっ、うぇっ、ぅぐっ」
一人縁側ですすり泣いていると「何か泣いてんぞ」「放っておいていいよ。定期的に来るやつだから」と会話が聞こえてきた。
「ううぅ、ここに居たら俺はもっとダメ人間になってしまうかもしれないぃ…」
「もうなってるから大して変わんないと思うけど」
「ぅぐっ、ぇぐっ…」
お、俺だって、最近仕事どう?って聞かれて黒尾先輩みたいにリア充の顔して話したい…っ。
俺だって、ちゃんと働いて対価を得て、胸を張って仕事してるって言いたい…っ。
ここの縁側は気持ちいいけど、このままじゃ俺は皆ともっと差が出来てしまう…っ!
横たわったまま悶々と考えていると洗濯機の運転が終わったようでやっとのことで起こした体にムチを打ち、洗濯物を乾かした。
片付けを進めていると時間も過ぎ、黒尾先輩が帰る頃になった。
玄関まで研磨と見送りに出る。
「じゃあ、動画撮影の日はまた調整しようぜ」
「ん、わかった」
「またな、なまえ、次会う時は仕事見つけとけよ〜」
ニヤと笑った黒尾先輩が手を伸ばした。そのまま俺の頭に触れるかと思いきや、黒尾先輩は俺の横に立つ研磨をチラリと見た後、その手を降ろした。
「はいはい、やめとくわ」
???ん?
研磨をちらりと見ても、いつもと変わらない。不思議に思いながらも帰り際の黒尾先輩に声をかけた。
「黒尾先輩!仕事の紹介、いつでも大歓迎ですから!俺ウリでも何でもしま「ねぇ黙ろ?」モガッ!!」
研磨の手が俺の口を塞いできた。あまりの勢いに仰け反る俺を見て黒尾先輩は首を傾げた。
「ん?うり?」
「売り込みのこと。クロ、なまえの言うこと本気にしなくていいから。仕事、あるし」
「そうか?まぁまた来るわ。じゃ」
手をひらりと振って出ていく黒尾先輩の背中を見送った後、やっと研磨の手から解放された。
「ぷはぁっ!何するんだよっ」
「うるさい。何考えてんの」
「何って仕事の「なまえの仕事は、今からご飯作ること。俺は取引で2時間は集中するから、後でご飯」う、ん…」
ダメ人間から脱却するためにやっぱり仕事を見つけるしかないと思い前向きに考えているのに、研磨は俺の言葉を遮るように自分の部屋へ戻って行ってしまった。
「…はぁ…まぁいいか。よし、今日のご飯何にすっかなー!」
招平から伝授してもらった隠し味を試すぞ♪とキッチンへ向かった。
▽
研磨の仕事が終わり、2人で晩御飯を食べていた。椅子に座った研磨は猫背のまま、いただきますと俺の手料理を口にする。
「どう?今日のご飯っ!」
「美味しいよ」
「っ!!だろっ!?自分でも思う!」
今日の招平秘伝の隠し味は成功だ!
自画自賛し美味しいとニコニコしながら食べていると研磨がふっ、と笑った。
「口の端、ソースついてるんだけど」
「んぁ?まじ?」
ペロリと口の端を舐める。
「違う。反対」
研磨が机を挟んだ向かいから手を伸ばしてきた。研磨の指が俺の唇を優しく、撫でるように拭った。
ゆっくりと感触を確かめるような触り方に背中がぞわりとした。目を伏せて「ありがとー」と言っておく。
心臓がどくどくと早くなるのは少しびっくりしたせいだろう。お互い黙りこみ静かな空気が流れる。
何だ、この空気は!な、何か話題を…!
咄嗟に口から出たのは研磨に話そうと思っていたこと。
「俺さ…ここを出ようと思う!」
この静かな場をどうにかしようと明るい声で話したのに、なぜか一瞬にして空気が冷えた。
今の今まで口角を上げて朗らかな顔をしていた研磨が、それはそれは冷えきった感情のない顔で俺を見ている
「……今、何か言った?」
冷たい声で返され、俺は今にも震えそうだ。
な、何でいきなりキレてんだよ!
「だ、だから…ここから出ようかなぁって!」
もう一度明るく言うと研磨の瞳孔開き気味の目が射抜いてきた。
だがしかし、ここで負けてはいられない!
「もちろんっ、研磨にはもう感謝しきれないほど感謝してるぞ?!でも、黒尾先輩とか見て…研磨もだし招平も虎も…皆ちゃんと働いてるじゃん…」
すごく居心地が良くて、全てが揃ってるこの家にいたら俺はきっと廃人になって戻れなくなってしまいそうだ。
「俺も皆みたいに働いて、一人で生きてかなきゃ…って!だからここを出る!」
俺の話を黙って聞いている研磨は目を伏せた。その顔は何を考えているか読み取れない。
「ねぇ一人で生きていかなきゃ、って言うけどさ、生きていけんの?一人暮らしして借金するようなヤツがよく言えるね」
「ゔっ…」
「一人でやっていけるとでも?」
「お、俺も皆みたいに頑張ったらちゃんと生活していけるように…!」
「ちゃんと生活できないから、今こうなってんじゃん。なまえ、現実見えてない?」
感情を見せない顔が恐ろしく整っているから、尚更怖い。
「…っ、お、俺だって!仕事の話したいもん…っ!頑張ったこととかっ!嬉しかったこととかっ!仕事して誰かに必要とされる、やりがい、感じたいっ!」
ここを出て、新しいバイト先でも何でも探して、部屋も探して…!俺の頭の中では成功している自分の姿が浮かんでいる。
次こそは!もう消費者金融にはお世話にならないぞ!
意気込む俺とは真反対に静かな研磨は俺を真っ直ぐ見た。
「なまえは自分の立場が分かってないね」
研磨が笑った。
喉が張り付く感覚に、この場から逃げ出したくなる。
「なまえは俺に体を売った。俺が債務全部片付ける代わりに俺に全部捧げたんだよね?なまえに関係する全ての決定権は俺にあるんだよ」
「す、全てっ?!」
「うん」
だから、なまえがここから出ることも外で仕事することも俺は許さない。
と淡々と語られてしまう。
さも当たり前のような顔に言い返したくても言葉が浮かんでこない。
「そんなに仕事したい?家のこともできてないのに?」
「うぐっ…、い、家のことはもっと頑張る!だから…っ、したい!俺も必要とされたい!」
皆みたいに活き活きしたいんだ!!
箸を握りしめ、強く頷く。研磨は黙って何か考えた後、「わかった」と呟いた。
「あとでなまえの仕事について、携帯に詳しいこと送っておくから見て」
!!研磨から仕事がもらえるのか?!
もしかして、コヅケンの動画編集とか?!
人気ゲーマーの仕事仲間として働くなんて、羨ましがられるかも!!
「っ!わかった!見る!」
うおおおっ、頑張るぞ!!仕事!
心が弾む気持ちで晩御飯を食べた。
お風呂に入りながら、パソコンに詳しくならなきゃ…とやる気を高める。
風呂から上がり携帯を見ると早速研磨からメッセージが来ていた。
URLが貼られていて、指でタップする。
動画編集の基本とかかな!
いや、コヅケンのアカウントページとか?!ログインして整理しろ、とかそんなのかな!
ウキウキしながら開いた画面を見て俺は固まった。
「……お、とこ同士の…はじめて…のセッ」
………、え??
これは…
俺の目には裸体で絡み合う青年が映っていた。研磨、俺に仕事関係のもの送るって言ってたのに、これは…っ!!
「ブハッ!!アイツ、貼り付けミスってやんの!」
ウケるっ!!
人の性癖にどうこう言う趣味はないけど、さすがにこのミスは…!!
ぷぷぷ、と笑いながら研磨の部屋に向かった。風呂上がりの火照った体のまま、部屋を開けると椅子に座った研磨がヘッドホンを外して見上げてきた。
「おい〜!研磨!リンク、ミスってんぞ!研磨の性癖なんて別に何でもいいけどさぁっ!」
クスクスと笑いながら携帯の画面を見せつける。ちゃんと確認してから貼りつけろよ!と普段の失態を棚に上げて研磨をからかった。
「……」
黙って見あげてくる研磨は特に焦りもせず、通常運転の表情だ。
内心、焦ったりして〜〜!面白いと笑いを堪えていると研磨が口を開いた。
「ミスってないよ」
「う?いや、これ見て。仕事と関係ないだろ?」
よく見ろっ!男同士のはじめてのセッ……て書いてある!
「…だから間違ってないって」
研磨が俺編集あるから、とカタカタとキーボードを叩き始めた。
「え、間違って…ない…?」
研磨は俺に仕事をくれるはず。
「仕事…は…?」
研磨がちらりと俺を見上げた。
「それ」
目で俺の携帯を示す。
「こ、これ…??」
「なまえの仕事、それ。なまえはネコ」
俺はもう一度自分の携帯の画面をしっかりと見た。何度見ても男同士のはじめてのセッ……と書いてある。
動画編集なんて一文字も書いてない。
ねこって何だ、俺は猫じゃない、と画面を見ると、ネコとは…と解説が書いてあった。
「はぁぁっっネッ、コ、はぁぁっ?!」
「うるさい、夜」
「な、なっ、!!」
わかった!研磨、俺のことからかってるんだ!俺の反応見て面白がってるんだろ?!
「研磨っ!こんな冗談、俺にはお見通しだぞっ」
「…冗談だと思う?」
真顔で言われて俺は固まった。この顔は…この研磨の真顔は冗談じゃない…。
「…体売るってこういうことだよね?なまえはこれをしようとしてたんだよね?」
ウリってそういうことでしょ、とサラッと言われ言葉に詰まる。
だ、だからってこれを?!変な方向に話がいってないか?!
「なまえは俺に体を売ったよね?」
「うぅっ……」
「なまえの債務、誰が綺麗にした?」
「ひぅぅっ…」
どうしようどうしよう、どんどん逃げ道が狭くなっている気がする、早くここから逃げないと!
携帯を握りしめた時、研磨が笑った。
「さ、仕事。始めようか」
中性的な顔でわずかに口角を上げ、目を細める。
その顔に風呂から上がったばかりの体からぶわりと汗が噴き出した。
どうしよう、招平ぃいいっ!!!