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俺も研磨や黒尾先輩や招平、虎みたいに好きなことをして活き活きと生活したい。
無職だけど仕事をして誰かから必要とされたい。
そんな夢と希望を研磨に伝えると『そんなに仕事がしたいなら』と言われ研磨から送られたURL。
そのリンク先には…
『男同士のはじめてのセッ○○』と書いてあった。
「むむむむ、無理だろぉっ」
研磨の前で首を右にも左にも振り、断固拒否の意を示すと、研磨は動画編集の手を止めパソコンの画面をじっと見た。
そして、少しの間を置いて俺の方へ目を向けた。
「……じゃあ今すぐ70万返してくれる?」
「っへぁ?!」
な、ななじゅうっ?!
「ふ、増えてんじゃんっ、前に借りた10万とこの間の50万だろ?!」
「プラスして生活費と利息」
「り、利息!?俺はその言葉が一番嫌いっ!」
「ふっ、意味は分かってるんだ、偉いね」
薄ら笑いで俺を見る研磨は完全に俺を下に見ている。
実際、下だけどさぁ!友達から利息を取るなんてひどいだろっ!
「70万返せないなら、それやるしかないよ」
「ぅうう…っ、何これ、俺何されるんだよっ」
「……読んだら分かると思うけど、口に出して言ったほうがいい?」
研磨から送られてきたリンク先をスクロールして流し読みする。読めば読むほど、恐ろしいことが書いてある。
「…なっ!お、お尻!!俺のお尻がっ!こんなことになるのかっ!?」
「…バカさ加減が滲み出てる…」
「俺の大事な尻に何するつもりなんだ?!」
「何って、突っ込むんだよ、俺の「ぬぁぁっ!言葉にするなっ!」……なまえが聞いてきたんじゃん」
自分の身を抱きしめて研磨から後ずさる。
「70万、早く返してよ」
意地悪そうに笑う研磨に俺は唸ることしかできない。ゲームでも何でも相手を追い詰めた時に静かに見せる、あの楽しそうな顔。
「70万円分、体で払ってよね。まぁこうしてる間にも利息でどんどん積もっていくけど」
俺の利息、高いよ?
なんて笑いながら言う研磨に俺は青ざめることしかできない。
70万なんてそんな大金、俺は持っていない。
となると、俺は研磨の言うこの『仕事』をしなくちゃいけないのか…?!
「…っ絶対、無理ぃ!」
「あ…逃げた」
研磨の前で踵を返して部屋を飛び出た。ドタバタと居間に駆け込み、携帯の電話帳を開く。
「こ、このままだと俺のお尻が危ない…っ!」
震える指先で幼馴染の名前をタップした。
呼び出しのコール音を聞きながら「出てくれ…、出てくれよぉっ」と祈り、携帯を耳に押し当てる。
『…もしも「っ!!招平っ!!助けてぇ!」
『いきなり何?』
「研磨がっ!研磨がぁっ!」
『研磨がどうしたの』
研磨にお尻を狙われている!と言い出そうとしたところで、はたと考えた。
70万払えないからお尻を狙われていると言ったら、なぜ研磨に70万請求されているか聞かれるのではないか?
そしたら必然的に俺が研磨に金を借りていることを知り…友達からお金を借りたなんて招平にバレたら軽蔑されて唯一の幼馴染からも見放されるかも…?!
そこまで考えたところで本当のことを言えなくなってしまった。
「うっ、うぅぅ…と、とりあえずさぁ!70万、手に入る方法ない?!」
『あるわけないじゃん』
「ええっっ!」
『ええっ、に驚き。何でそこで驚く』
幼馴染がアホで困る、と電話の向こうで招平が肩を竦めている様子が目に浮かんだ。
「どうしてもっ、今すぐ70万必要なんだよっ」
『この間は10万だったよね?何で必要額が70万まで増えてんの』
「そ、それには深い訳が…70万用意しないと、俺の尊厳と大事な何かが失われちゃうっ」
『失うものはもう何もない、ってこの間言ってなかった?』
「言ってないわ!」
招平のボケにツッコミを入れつつ、どうにか70万を用意できないか必死で考える。
70万貯めるなんて俺のバイト生活だと1年以上はかかる。その間にも利息は増え続けるという最悪な状況だ。
「…消費者金融よりもひどい奴だ…」
思ったことがつい口から漏れてしまった。
『何?消費者金融?』
「…そ、そうだ!消費者金融だ!今すぐ70万用意したら俺の尊厳は保たれる…っ!招平!俺の保証人になってくれないか?!」
消費者金融ってこういう時のためのものじゃん!これ以上酷いことにならないようにここで助けてくれるのが消費者金融!
招平に保証人のお願いをすると即答で返ってきた。
『絶対に、嫌』
「なっ…、お、幼馴染の頼みじゃん…っ」
俺を見捨てるのかひどい、と居間で座り込み泣き言を垂れる。
『俺は研磨みたいに甘くないからね』
「甘い?!俺は今、その研磨に狙われてるんだよっ、助けてく「没収」に゙ゃぁっ!?」
会話中にいきなり視界に手が入ってきた。
短い言葉と一緒に、にゅっと伸びてきた手が俺の携帯を奪っていく。びっくりして変な声が出た。
目で追うと研磨が後ろに立っていて、俺の携帯を取り上げていた。
「もしもし、福永?…うん、今俺の家。うん、ここに住んでる。……毎日スライムみたいに溶けてる。働きぶりは…まぁまぁ…ってところ」
スライムって絶対俺のこと言ってんじゃん!
まぁまぁ、って何?!俺、一生懸命頑張ってるもんな!
研磨が招平と会話しながら俺を見下ろしてきた。何を考えているのか分からない猫目が一番怖いっ。
「…別に福永からお礼言われるようなことじゃないけど」
お、お礼?!
ねぇ、招平、もしかして研磨に俺の面倒見てくれてありがとうとか、お礼言っちゃった?!
違うからな!俺、今研磨から70万払え、金ないなら体で払え、って脅されてるんだからな?!
有り得ない、絶対に有り得ないとムスッとした表情で電話中の研磨に抗議すると俺を見下ろしたまま、座り込んでいる俺に手を伸ばしてきた。
研磨の手が俺の頭をさらりと撫でる。
「??」
いきなりの行動に研磨を見上げると、今度は喉元に指を這わして、こしょこしょと擽ってきた。
「っ、ふぇっ、」
こそばゆい感覚に目を細めて震えると、研磨がくすりと笑う。
「ごめん。こっちの話。なまえが猫みたいだったから…。うん、仕事は大丈夫。ちゃんと働かせるから。あぁ、いい仕事が見つかったみたい。体張って頑張るって言ってるし、期待してる」
仕事。その言葉に肩が揺れる。
研磨の言う『仕事』って絶対、あのセッ、のことだろ?!俺は体張る気なんかないならな!
逃げようと体を動かしたが、研磨の手が俺の首根っこを掴んでいて動けなかった。
「うん、なまえにも伝えとく…、じゃあね」
電話を終えた研磨が無言で俺を見下ろしてきた。
「は、離せよっ」
「……福永が『仕事頑張って』って言ってたよ」
「何も知らないから招平はそんなこと言えるんだ!研磨が俺にセッ、セッ!クスス…っ〜、ア、アレを要求してるなんて知らないから…!」
詰まる俺に研磨が面白そうにくすりと笑った。普段、表情のレパートリーが少ない研磨はそんなにケラケラと笑う方ではない。
そんな研磨が楽しそうに目を細めている。
「何焦ってんの。おもしろ」
「焦るだろ!」
「部屋、行くよ」
「はっ?!嫌だ!行かない!俺は絶対にここから動かないっ!」
「……70万プラスして80万にしようか?」
「〜〜っうぁぁあっ!くそぉっ!」
金額と共に研磨の目で見下ろされると体の力が奪われてしまう。
いくら自分の無計画な金の使い方を後悔したところで過去は変えられない。
研磨に金なんか借りるんじゃなかった…!
激しく後悔して顔を歪める俺は嫌だと抵抗するが引っ張られるがまま、研磨の部屋へ連れて行かれた。
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(孤爪研磨)
ヤダヤダと首を振るなまえを自分の部屋に連れて戻った。
「…何するんだよぉ」
泣きべそをかくなまえをベッドの上に座らせる。これからしようとしていることを分からないはずはない。
「何するって分かるでしょ」
頭を抱えるなまえにサラッと言い放つと、俺に逃してもらえないと悟ったのか顔を上げた。
「…なぁ研磨ぁ…アレやったら70万チャラになる?なぁ、1回で70万?」
1回で70万…チャラになったらここから出れる…?2回したら70万もらえる…??
なんて言い始めた。
バカだなぁ。なまえのことだから、逃げられないと分かったらヤることやって、70万チャラにしてもらおうとかそんなこと考えてるんだろう。
本当に…、なまえは昔から全てが緩い。
笑う時も、怒る時も、泣く時も、オツムも全部ゆるゆる。
なまえと出会ったのは音駒高校に入ってから。同じバレー部の福永の隣で騒いでいたのがなまえだ。
福永から『コイツ、俺の幼馴染』と紹介されたなまえは最初からよく笑うヤツだった。
人見知りが激しい俺なんかものともせずに「研磨、研磨ぁ!」とよく引っ付いてきた。
福永と一緒に笑いを求めて、楽しそうに高校生活を送っていたのを今でも覚えている。
その姿をいつの間にか好きになっていた。
誰彼構わず人懐っこくて憎めないところが何だか癖になって、誰彼構わず笑いかけるところに心の奥底でモヤモヤするようになって、ようやく自分の気持ちに気づいた。
俺の横に駆け寄り、なまえが手元のゲームを覗いてくる度になぜか少し嬉しかった。
誰彼構わず、じゃなくて俺の横に来てくれたら。そう思って過ごした高校時代。
なまえに自分の気持ちを伝えるつもりはなかった。バレーでも自分の読みがついているなら大丈夫なんじゃないと言えたが、こればっかりは大丈夫とは言えなかった。
なまえは単純な性格なのにあまりにもふわふわしているし、危なっかしい。そんななまえに自分の勝算は未知数だった。
失敗はしたくない壊れるくらいなら今の関係で良いと思い、そのまま卒業した。
大学に入れば、この気持ちも薄れるかも。忘れられたら、それで良い。
そう思ったのに、やっぱり忘れられなかった。
度々、俺の所へふにゃふにゃと笑いながら勢いよくやってくるなまえに会う度に想いは強くなった。
オツムも、それ以外も全部ゆるゆるななまえに対して、募りに募らせた想いは大人になって爆発してしまった。
なまえがお金に困っていると聞いた時、ついに来たなと思った。
絶対にこの機を逃しはしない。
株とゲーム実況の収入でお金なら十分にあることをそれとなく、さりげなく匂わせるとなまえはすぐに食いついてきた。
あの日は2人でカフェに行き、なまえと2人でスイーツを食べていた。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「研磨…、あのさ…誰にも言わないで欲しいんだけどさぁ…」
「なに?」
「俺…今、生活がちょっとだけ苦しくて…来月の家賃がヤバいんだよね…すぐ返すからさ…ちょっとだけ!貸してくれたり…とか…ダメ……?ダ、ダメだよな!!あ、家賃全部とかじゃなくて!1万…!い、いや千円!千円貸してくれたら!」
「千円で足りるの?」
「…た、足りなぃ…」
「……次返してくれるなら、立て替えしてもいいよ…」
「……っ!!ほ、ほんと?」
「何円必要?」
「え、えっとぉ…10万…はさすがに無理だよな!はははっ!」
「……いいよ」
「えっ?!!け、研磨ぁっっ!優しいっ!俺の神!絶対返すから!!ありがとう!研磨、大好き!」
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優しい?ほんと、バカ。
違うよ、俺はなまえに依存性のあるクスリを摂取させたのと同じことをしたんだよ。
10万というお金に目を輝かせて安堵したような顔をするなまえを見ながら、目の前で俺の垂らした蜘蛛の糸に縋るように飛びつくなまえに悦を感じていた。
早く俺の用意した快楽に溺れて、堕ちていってほしい。一人じゃ生きていけなくなったら、俺が面倒見るから。
ゆるゆるななまえはきっと、すぐにまたお金に困るはず。
ここまできて、やっとなまえを自分の籠の中に入れ込むことができる、と読めた。
あれから、すぐに泣きついてきたなまえ。
今では俺の家でスライムみたいに溶けながら、生活している。
やっと俺のテリトリーに引き寄せたんだ。
もっと依存させないと。
俺がいないと生活できないように。
ベッドの上で70万チャラになるならシてもいいか…なんてぶつぶつ呟いているなまえを見た。
バカだなぁ。1回で70万チャラにする?そんなわけないじゃん。
「なまえさ、この間1日で10万とか言ってたじゃん」
「うん」
「自分が1日に10万も稼げるレベルだと思う?」
「思う!」
その自信、どこから来るのか知りたい。
「なまえが70万稼ごうと思ったら一ヶ月かけても苦しいよ」
「はっ?!でもスカウトの人は1日で10万って…っ!」
「すぐに人を信用しちゃだめだって」
「むっ…」
なまえの横に腰を下ろすと、何の警戒心もなく俺を見てきた。
さっきまでヤダヤダと泣きべそかいていたのに、今では俺を不思議そうに見ている。
そういうところだ。なまえのそういうところが引っかかる。そして、その警戒心皆無の表情を崩したくなる。
「まぁまずはお手本見てみよ、体売るってこういうことだから」
もちろん、俺以外に売らせるつもりなんて毛頭ないけど。
タブレットを取り、なまえに持たせる。なまえに送ったリンク先動画の再生ボタンを押した。
突如、始まる男同士の絡み。
「ひぃっ!!」
目を見開いてタブレットの画面を凝視するなまえの横顔を堪能する。
ああ、その顔、最高。
その表情を一瞬でも見逃さないために、視線を逸らさずなまえの顔を見つめる。
じっと見る俺の視線を感じたのかなまえがちらりと俺を見てきた。目が合い笑ってやると、なまえはすぐに目を伏せた。
耐えられず口角が上がる。
体をまさぐられるネコの男性を指差して「なまえもこうなるんだよ」と静かに耳元で囁く。
「…っ!!」
なまえの頬が赤く染まった。
動画の内容なんてどうでも良くて、なまえの顔をひたすら見続ける。
はぁ、最高。触ったらどんな反応するだろう。
そっとなまえの太ももの上に手を乗せてみる。
「びゃっ!!」
はは、変な鳴き声。
俺の手を凝視しているなまえに笑いが漏れそうになる。
「何もしないから。なまえは今この動画を見てればいいよ」
「……っ、動画見終わったら70万チャラになる…っ?」
「ならない」
「っ、「でも、5万は減るかも」…み、見るぅ…」
はぁ、本当に緩すぎる。
簡単に信用するし、チョロイし、危ないレベルだ。
動画を見るなまえの隣に寄り添うと、俺を意識し始めたのかなまえが肩を揺らした。横目で俺を見てくるなまえに「ちゃんと動画、見て」と諭すように言う。
慌てて動画に目を向けるなまえを俺はじっと見つめた。動画の内容は盛り上がっていて、卑猥な音声が静かな部屋に響き渡る。
後ろからなまえの腰に手を回してみた。
「んっ!」
ビクッと震えるなまえがあからさますぎて笑いそうになる。ガチガチに意識しすぎ。
「どう?なまえ、これ出来る?」
「む、無理っ!痛そう!」
「痛くないよ、だって、ほら。気持ちよさそうじゃん」
「無理無理無理っ」
「やって見なきゃ、わかんないよね」
「絶対、無理!」
無理という割にモジモジと脚を擦り合わせるなまえにもしや…と見下ろすと、どうやら意識しすぎて昂っている様子。
……へぇ、まずは慣れるところからと思ったけど、案外早くできるかも…?
画面を凝視するなまえに顔を近づける。
「…なまえ」
「な、何…」
至近距離でなまえの目を見た。いつも通り落ち着いたトーンで口を開く。
「キス、してみよ」
「な、何でっ?」
「俺達も同じことするんだから、まずはキスから」
「っ……!」
俺の言葉になまえの瞳が揺れた。葛藤しているんだろうが、ここで考える隙は与えない。
「70万」
俺の言葉になまえは目をギュッと瞑った。心の中で笑い、なまえの唇に口付けた。
力が入り硬くなった唇に触れるだけのキス。
離すとなまえはそろりと目を開けた。終わった、と思わせた所でもう一度キスをした。
「っ!」
緩んだ柔らかな唇に、はむりと噛み付くと震える体。
かーわいー。
「っけ、んまぁ」
身を縮め眉を下げるなまえに押し倒したくなるが、自分を制した。
「ト、トイレっ!トイレ行きたぃぃっ!!」
涙目で見上げてくるなまえは限界なんだろう。
ダメって言ったらどうなるんだろう、と気にはなるが俺もそこまで鬼じゃない(今は、だけど)。
「……いいよ」
俺の許可を得て、ベッドの上から飛び上がり、前屈みのまま部屋を出ていくなまえの後ろ姿を見つめた。
ベッドに後ろから倒れ込み、腕を広げる。
なまえ、あんな顔するんだ。
攻めたらどんな顔を見せるんだろう。
ゆるゆるななまえのあられもない姿を想像して内心興奮する。
「……あとちょっと…」
勝ちが見えてきた。
後は考える隙を与えず畳みかけ、追い詰め、突き落とすだけ。
あー、楽しい。
今度は我慢せず、笑った。
早くなまえを俺の鳥籠の中に入れて何重にも鍵を掛けよう。一生出られない攻略不可な世界の中に入れてしまうんだ。
…きっとなまえは俺がそんなことを考えているとも知らずに、またふにゃふにゃ笑いかけてくるんだろうな。
「ふふ、おもしろ」
そろそろいいかな、とベッドから起き上がる。よいしょ、と立ち上がり滑り落ちてきた髪を耳にかけた。
体を売る、とはどういうことか。
オツムの弱いなまえにしっかりと教え込まないとね。
部屋の扉を開け、なまえの元へと向かった。