バ先に来る男子高校生がクソうるさいんやけど
稲荷崎ズ(双子、北メイン) × 平凡男主
ただのわちゃわちゃ
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大学へ進学し始めたバイトは飲食店の配膳スタッフ。
美味しい定食屋を見つけ、こんなご飯が賄いで食べられたら…なんて下心満載で目的で応募したバイト。
安い、美味い、地域密着型の温かいこぢんまりとした食堂は地元の人で賑わっている。
「ちわーっ!!」
「今日何食う〜?」
「俺唐揚げがええ!!」
うわ…また来たわこいつら…。
店の引き戸を開けて入ってきたのは近くにある稲荷崎高校の男子バレー部達。ジャージ姿のた男子グループに練習終わりだと分かる。
「…らっしゃいー」
「うわ、なまえくん、何でそんな嫌そうな顔するん」
「練習で疲れてんねん、スマイルで出迎えてやー」
よく似た顔で入店早々、ぶうぶうと不満をたれる双子は2年の宮侑と宮治。チャラくて食べっぷりが凄まじいバレー男子だ。
「うっさい、はよ座れっ」
笑顔でもてなせとかキャバクラじゃないんやぞ、ここは!と言いたいが高校生にそんなお水の話は出来ない。
双子に続き、3年生達が入ってくる。部長の北くん、ガッシリした体格の尾白くん、背が高い大耳くんに、バレー部の中で比べると小柄な赤木くん。その後ろには2年生の角名くんと銀島くん。
常連並によく通ってくれるから名前も覚えてしまったが、この双子だけはいただけない。
とにかく絡んでくるし、遠慮がないのだ。
冷えた水をなみなみと注いだコップを机に置き、メニュー表を渡すがこのバレー部達は大体食べたいものがすでに決まっている。
「俺はなぁ、唐揚げセットがええ!」
「ほな俺ラーメンセットにしてツムの唐揚げ食お」
「あ??誰がお前にあげるか」
「ええから、決まったらはよ言えよ」
やいのやいの言い始める双子に呆れながら他部員から注文を受ける。
「俺は豚バラ炒めで、お願いしますっ!!」
銀島くんのハキハキとした注文に「あいよー」と受けていく。
「角名くんは?決まった?」
「俺、刺身定食で…」「あいよー」
「なまえさん、焼き魚定食、カキフライ定食、しょうが焼き定食、エビフライ定食でお願いします」
「了解っ」
北くんは3年生分のメニューを全て聞き取って伝えてくれた。出来る子だ…と感動しながら伝票に書いていく。
「で、決まったんかツインズ」
「えー、まだ決まらんー。唐揚げにしよかな、て思とったんやけどぉ、ステーキ定食も食いたなってきてん」
コロコロ変わる宮侑を横目に宮治を見ると手を上げた。
「俺決まった!ラーメン!味噌ラーメンの野菜大盛り!」「あいよー」
「んんんんっ!迷う!けど!ハンバーグ定食!」
「唐揚げでもステーキでもないんかい、」
ぼそりと宮侑の注文にツッコミながら、オーダーを読み上げる。
「豚バラ炒め定食、焼き魚定食、カキフライ定食…」
最後まで読み上げたところで宮侑がにこにことしながら見上げてきた。
「あとなぁ、なまえくんのスマイル2つ!」
「…あぁん?」
「スマイル0円やろ?よろしく!」
こいっつらほんま…!!スマイル0円のマ/ク/ドなら向かいにあるやろが!!
「スマイル欲しいんやったら、向かいのマ/ク/ドにでも行ってくれますかぁぁ??」
伝票を力の限り握りしめ青筋を立てるも双子には全く効いていない。
「なまえくん、笑顔ない無愛想な店員とか客逃げるで」
眉を下げた宮治にアホか、とツッコミをいれる。
「お前らだけやわ!他のお客さんにはスマイル100%で接客しとるわ!」
「うっわ、店長にチクったろ、店長ぉぉー!なまえくんが俺らにだけ冷たいっすー!」
「おいっ」
双子の声に厨房奥の店長が顔を覗かせ笑った。
「なまえ、スマイルぐらい分けたりやー!」
店長!ほんまこいつらに甘いねん!!
店にやってくる食べ盛りの高校生達に対して「いっぱい食べや〜」といつも甘々な店長に内心ため息を吐きつつスマイルスマイルと連呼してきてうるさい双子の頭をパシっと叩く。
「注文承りましたっ」
厨房に伝票を回し、他のテーブルの対応をしたり配膳、片付けをしているとバレー部の料理もどんどん出来上がっていく。
美味しい、かつ出来上がりが早いところもうちの店の強みだ。
「お待たせしましたー刺身は角名くんやね」
「ありがとうございます」
腹が減っていたのかいつもと変わらない表情だが少し嬉しそうな顔に微笑ましくなる。
「で、大耳くんがカキフライ、銀島くんが豚バラで…赤木くんがしょうが焼き、尾白くんがエビフライ…」
「ありがとうございます、」
「「「あざっす!! 」」」
「なぁ、なまえくん、俺のまだ?腹減ったぁ」
宮治が餓死しそうな顔で見上げてくる。
「まだや、待て」
「えー、待てへんー」
腹減った、とうるさい宮治にもうちょっとやねん頑張れと言うと「これで飢え死にしたら、なまえくんのせいや」と意味不明な言葉を投げつけてきた。
「なまえ、出来たでー」
「はーい」
北くんの焼き魚定食を運ぶとありがとうございます、と律儀に頭を下げた。いいえ、練習お疲れやんなと一言添えると途端に双子が騒ぎ始める。
「はぁー、なまえくん北さんには優しいんエコヒーキや。ひどっ!」
「何が依怙贔屓や、お前らは遠慮がなさすぎやねんっ」
「俺らにも『お疲れ』言うてやぁ」
「侑、治、なまえさんに迷惑かけたらあかんやろ」
すみません、と謝る北くんに、北くんは全然悪うないで、と首を振り口元を緩める。
「あっ、サム、なまえくん今笑ったで!」
「何で俺らにはスマイルなくて北さんにはスマイルあげとるん、せこっ!」
「ぎゃーぎゃー喧しいねん。エサ待ちの雛鳥かっ!」
この双子を黙らせるには早く飯を目の前に出すしかない。
店長、こいつらのエサはよ作ってください!!
厨房へ祈る気持ちで目を向けるとやっと双子の料理が出来たようで、すぐさま取りにいく。
「雛鳥のエサ持ってきたで。お待たせー」
「うおおおっ!!ラーメン!盛り盛りや!はよ食いたい!」
「やっぱこのハンバーグ選んでまうんよなぁ〜っ!」
出来たてアツアツの料理を前に双子が涎を垂らす勢いで目をキラキラさせている。
思わず笑いが込み上げてきて、噴き出しそうになったが必死で耐えると宮侑が俺を見て唇を尖らせた。
「なまえくん、スマイルも注文したやん。揃ってへんで」
「うっさい、はよ黙って食べろ」
「なまえくんの笑顔でめちゃくちゃ美味い飯がもっと美味くなるかもしらんし、スマイル2つ欲しぃーー」
こいつら…まだマ/ク/ドのオプション引きずっとんのかい、と頬が引き攣る。
箸を握ったまま「アツアツの料理食べたいのになまえくんがスマイルくれんと食べられへんわ、冷めるぅ」なんて騒ぐ双子に天を仰ぐ。
「ほんま…」
こいつら…めんどいことこの上ないな!!
早く食べさせるために仕方なしに無理やり口角を上げ、目を細めた。
「ごゆっくりドウゾ!」
にっこり。
そんな言葉が似合うほど笑顔で首を傾けた。
「「……」」
双子が俺をきょとんと見上げた後、互いに顔を見合わせる。
「……何か微妙やな」
もっとときめくかと思たのに、そんなでもないなと呟く宮侑。
「せやな……なまえくんのスマイルあってもなくても変わらんな…はよ食お」
「はぁっ?!」
「「いただきまーすっ!!」」
「お、…おまえらなぁ…っ」
好き勝手言って応えれば、何やその反応…!!
ワナワナと震える俺をよそに「うんまぁっ!!」と頬張る双子。
震える拳を握りしめ、今日という今日こそ、この2人を出禁に出来ないかと本気で考える。
噴火しそうな1歩手前で北くんがお茶碗を持ったまま呟いた。
「ほんまや…」
「え?」
「…なまえさんの笑顔で美味なった…」
「…えっ?」
北くん、君何言うてんの…?!
俺の笑顔で美味しくなるわけないやん、店長の料理は元から美味いで?!
「北くん、双子のためにそんな無理言わんでええんやで…俺の笑顔が微妙なんは俺が1番よう分かってる…」
コイツらと違い普通のビジュアルの男が笑ったところで美味くなるわけがないのだ。
ここはコンカフェとはちゃう。ただの地元の小さな定食屋や!
「君は真面目すぎるところがあるからな…」
「そうっすよ北さん、なまえくんの笑顔で美味くなったら世も末ですわ」
「はぁ、やっぱタダほど怖いもんないっちゅうことやな…」
「そやでサム…タダにはやっぱ理由があるんや…」
店長、今すぐこいつら外に閉め出してええですか?ほんまに俺のことナメとるやろ?
「タダの使い方ちゃうやろっ」
尾白くんのツッコミに幾分か救われたような救われてないような気になる。
「アランくんの笑顔で美味なるかな。アランくんちょお笑ってみて」
「俺に振るな!」
「じゃあ角名」
「絶対やだ」
「まぁ角名の笑顔じゃメシマズに「は??」
北くんは騒がしい仲間達を前に、俺を見上げた。
「…俺はいつも練習終わりにここに来て、なまえさんの笑顔見ると何や疲れ取れるし、体が軽くなります」
ありがとうございます、と真っ直ぐな目を向けられ、クラっときた。
な、なんやこの素直で可愛い生き物は…っ!
いきなりそんなこと言うのやめてくれる?
心臓に悪いねん…!
「え…いや、それは…あの、よかった?…デス…」
いきなり恥ずかしくなって体がポカポカし始める。
「うわ、なまえくん何顔赤くしてんねん」
「なに?なに?」
「うるさい、ほんまにお前ら冷めんうちにはよ食べえ!はよ帰って、寝て体休めろ!」
吐き捨てて稲荷崎男バレ部の部員達から離れる。
モリモリと美味しそうに頬張る男子バレー部に店長も厨房から覗いては嬉しそうにしている。
「あっ、なまえこれサービスや!」
店長がサービスと言ってデザートまで用意してきた。
「…ほんまに甘いっすわ」
「練習頑張ってる子にご褒美やで」
これを出したらまたはしゃぐんだろうなぁと思い浮かべ、呆れたように笑いが零れた。
食べ盛りの男子達が食べ終わり手を合わせる前に店長が用意した杏仁豆腐を持っていくとテーブルが沸いた。
「はぁーっ!デザート!最高!」
「生きとって良かったぁ!」
「治、大袈裟やなっ」
「銀、こんなサプライズ嬉しくないわけがないやんかっ」
ガタイの大きな男子たちは出された料理も綺麗に平らげていた。米粒ひとつ残っていない皿に店側の人間としては嬉しくなる。
空となった皿を下げていると、宮侑が「次こそステーキセットにしよ」ともう次のメニューを決めていた。
「あ、お前ら2人はもう出禁や」
俺の言葉に双子が勢いよく見てくる。
「「はっ?!何で?!」」
「俺が決めた。今決めた。もうお前らは俺が入れさせんからな。自分らの行いを胸に手を当てて、よう考えてみ」
「「….」」
「俺な、なまえくんがおるここが好きやねん」
宮侑が急にキュルキュルと目を潤わせてきた。
「俺も。なまえくんがおるし、美味いし、なけなしのお小遣いで通ってんねん。出禁とか生命線絶たれるようなもんや」
「なぁ嫌われるようなことした?」
「俺らなまえくんのこと心の底から尊敬してんのに、」
「うっわ、何や手のひら返したように!」
気持ち悪いくらいの双子の擦り寄りにドン引きして後ずさる。
「何でそんなこと言うん?ひどない?弱いものイジメやんな?」
「よっしゃ店長にチクったろ」
「店長ー!なまえくんが出禁とか言うてきたー!」
「おい!おまっ!」
双子を首根っこを掴んで止めさせる。
暴走する双子を相手にするだけで息が切れるため重労働だ。
「出禁撤回してや」
「撤回撤回」
めんどくさいなぁぁっ!
「次怒らせたらほんまに出禁したるからなっ!」
「なまえくんがもっと大人になってくれれば済む話やんな」
「そうよな。あ、でもまだ20になってへんから、大人じゃないか」
こいつら言うた傍から…っ!!
付き合ってられんわ、と放置して会計を済ませる。
「腹いっぱいになったなぁー」
「店長っ!ご馳走様でしたぁっ!!」
「美味かったっす!」
「ご馳走様でした」
「おう、また来てな!練習頑張れよー!」
「はーいっ」
「あざっしたー」
一応お礼を言いながら見送る俺に「練習頑張れ、がない」とまた双子が突っかかってきた。
「ええからはよ帰れ」
「『練習頑張れ、また来てな』がないと帰らんー」
店の前で動こうとしない双子を見上げる。立ち上がるとやっぱり身長差を思い知らされるくらいには皆、背が高い。
「なまえさん、ほんますみません」
北くんが双子の横に立った。
「いや北くんは悪うない」
このまま双子を引っ張って帰ってくれるかと思いきや、北くんは動かず双子の隣に立っている。
「?」
え、まだ何か用がある?はよ帰りいな、と見つめると双子が「まさか…北さん…なまえくんのお見送りの挨拶待ち…?!」と囁きはじめた。
「?!」
いや、それはないやろ!あんな真面目な北くんが俺のお見送りなんて…。
じっと見つめてくる目が真っ直ぐ過ぎて怖い。
「え、と北くん、どした?双子連れて帰ってくれると助かるんやけど…」
「…練習頑張れって言ってもらえるんですか?それなら俺も…」
はぅ?!北くん?!
「うわっ、マジやった…」「北さん趣味わr「あかんあかんあかん、ツムッ、北さんに消されるぞ!」むぐぅっ」
ずっと店の前に立つ3人に言わんと帰る気なさそうやな…と白目を剥きそうになった。
他の子ら皆、先に行ってもうてるやん。
「(はぁぁ…過剰サービスの要求とか不当やん…っ)」
手で顔を覆い、胸いっぱい吸い込んだ息を吐き出した。決心というよりは諦めて顔を上げる。
「今日も来てくれてありがとう!練習頑張ってな!また寄って〜!」
手を振って、言ったから帰れ!!と笑顔で圧を押し出す。
北くんがビシッと固まり「…また来ます」と頭を下げた。
え、何その微妙な反応!やっぱ俺の笑顔は微妙やった?!
北くんが要求したんやから、やったんやけどな?!
一気に後悔に苛まれる。
双子は面白そうに北さんを見ながら「なまえくん、もっと!もっと頂戴!頑張る君が好き、とか!」と騒いでいる。
「アホかっ!はよ帰れ!」
「侑、治、なまえさんの邪魔したらあかん、帰るで」
俺に頭を下げて帰る北くんにツインズがヒヨコのようについていく。
「なまえくん、俺、次はステーキセット頼むーっ!」と道路の真ん中で宣誓している宮侑に「分かったから帰れ!」と手を無造作に振った。
どうせ、次来たらまた違うもん頼むやろが!
「はぁぁ…やっと帰った…!!ほんま祭りというか嵐というか…」
突風のように現れ、わいわいと賑やかにご飯を食べていくバレー男子達。
「今日も食いっぷりすごかったな…」
リスみたいに頬を膨らませる姿を思い出し、笑いながら帰っていく背中を眺めた。
次もまた近いうちに来るんやろな。
「さてと、仕事仕事っ!」
次来たら今度こそ双子に絡まれんようにしよ、と思いながら店の中へ戻った。
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後日、北くんまでもが双子に便乗し「なまえさん…俺もスマイル1つ頼んでもええですか…?」と言い始めた。
ほんまにこいつらどうなっとんねん。