どうも倫太郎の兄です


角名家の長男設定
兄弟構成(長男 角名なまえ、次男倫太郎、妹)

兄への愛が強い倫太郎くん

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「なぁ、今日の小テス勉強した?」
「してへんわーもう諦めとる」

初めは聞き慣れなかった関西弁も3年目となると空気のように自分の中に入ってくる。
登校して昇降口で会話しているクラスメイトを見かけ、声をかけた。

「おはよ」
「おう、はよー。今なぁ、小テスの話しとってん。角名は小テス完璧やろ!」
「いやぁ、昨日は弟の勉強見てたから自分のは適当」
「言うて高得点取んのが角名やもんなぁ」

俺らも教えてーと周りを囲まれた瞬間、後ろから俺の名前を呼ぶ‪静かな声が耳に入ってきた。

「なまえ、」
「お、倫太郎、起きれた?」

後ろを振り向くと俺の弟、倫太郎が見上げる位置でムスッとした顔をしていた。と言っても他人から見たらいつもと変わらない表情だろう。

無表情のようでいて、その顔色は明らかに不服の意が滲み出ている。

愛知県出身の俺達兄弟がなぜ遠く離れた兵庫の稲荷崎に通っているのか。

倫太郎はもちろんバレーの推薦で。

俺はというと…進路どうしよっかなーしたいこと何にもないなーと、何も考えずになるようになるかとぼーっとしていた時に母親から
『稲荷崎に行ったら?倫太郎、稲荷崎に行きたいそうよ。なまえがいるならお母さん心配ないし、』と無茶苦茶な提案をされた。

長男に対してそんな提案、あるか??と思ったけど、基本特に執着もない性格なのでそのまま受け入れた。

スポーツ推薦がないなら普通に考えて無理だろ、と思ったがなまえなら頑張ればいける、弟のために頑張ってと言われ勉強を頑張り、入学した稲荷崎。

2年になれば弟の倫太郎もちゃんと稲荷崎に入ってきた。そして男子寮で一緒に過ごしながら過ごす毎日。

基本的に俺達兄弟はドライ気味なので、何をするにも一人行動が多い。…はずなのに最近、何だか弟の距離が近い。

「起こしてよ」

ムスッとした顔で俺を見下ろす倫太郎。悲しきかな、俺は平均身長。

「起こしたって」
「嘘。俺起きてたし、なまえ、俺の顔見ただけじゃん」
「…怖っ!わざと寝てたのか?!」

恐ろしい…。何でわざと寝てるんだよ。起こせというくらいなら起きろよ、とツッコミを入れると「起こしてほしかった」とか訳分からない事を言い始めた。

「仲ええなぁ」「ほな俺ら先行っとくでー」

笑いながら昇降口から校舎の中へ入っていくクラスメイトの背中を見送る。

「仲良いっていうか…」
「なまえ、お腹空いた」

俺のカバンを勝手に漁り始める倫太郎にため息を吐く。

「お前さぁ、俺ドラえもんじゃないんだぞ」

「母さんが困ったことがあったらなんでもなまえに言え、って言ってたし」

相変わらず無表情でカバンの中から俺のおにぎりを取り出した。寮母さんが作ってくれたラップおにぎりは無事に倫太郎のスポーツバッグの中に吸い込まれてしまった。

外では無気力ボーイで通ってるくせに実際こんな甘えたな次男だということを知ってる人、いる??

朝から好き放題の倫太郎に仕返しとして後ろを指さした。

「あ、北だ」
「!っ、」

その言葉にすぐに反応して後ろを振り向いた。実際には、北はいない。倫太郎の反応に笑うとまたムスッとした顔で俺を見た。

「……騙すとかサイテー」
「北の前ではいい子ちゃんなのになー」
「いい子ちゃんって何」
「俺の前でもいい子ちゃんでいてくれる?」
「無理、やだ、無理」
「俺のシャンプー勝手に持っていくのやめてくれる?」
「返しといたじゃん」
「興味本位で色々持っていくのやめろよ」

俺の部屋から色々物がなくなっては、次の日元に戻っていることが多い。
その件について話し合おうと指摘していると遠くから賑やかな声が聞こえてきた。

この声は……

「あっ!!なまえくんやーん!!」
「うわ、双子…」

キャッキャと賑やかな双子が昇降口に入ってきたとなると一気に騒がしくなる。

「「はよーっ」」

倫太郎が早く退散したそうな顔をしているが、俺も同じだ。この2人に絡まれると長くなるのはいつものこと。

「おう、はよ…」
静かに挨拶を返す俺に侑が顔を覗き込んできた。

「え、なまえくんどしたん、お腹痛いん?」
「俺がさすってあげよか?」
「やめえやサム、俺がなまえくんのお腹ヨシヨシしたるから」
「あ!何やなまえくん、おにぎりの匂いする。おにぎり持っとるん?」

なになに、こいつら、怖ぁ!

侑はお腹ヨシヨシとか訳分からんし、治は嗅覚ヤバすぎだろっ。

あっという間に取り囲まれ双子たちを見上げる。

「俺もおにぎり欲しい〜」

双子に囲まれて肩を縮こまらせる俺に倫太郎が無気力な顔で俺の袖を引っ張ってきた。

(早く行こ)

口には出さないが、目で語る弟。

「おにぎりはないよ。取られた」
「はっ?!誰に?!誰がなまえくんのおにぎり取ったん?」
「倫太郎。」

俺の言葉に双子が倫太郎を勢いよく見た。

「…何。あげないから」

表情を動かさない倫太郎に双子が肩を寄せ合う。

「うっわ、出た角名のブラコン」
「アイツまだお兄ちゃん離れ出来てへんで」
「分かるぅ。教室でもな、あ、あれなまえくんや、ってグラウンド指差したら即行で見よるし、お兄ちゃん大好きっ子やで」

双子に好き放題言われている倫太郎は「見てないし、」と言いながらフイッと顔を逸らした。

「はぁ〜、俺らには塩対応なんに、なまえくんとの差えぐいよな」「わかるぅ」

ぶうぶうと文句を垂れる双子に倫太郎がイラッとし始めた。顔に出てるぞ、と思うがやっぱり他の人から見たら分からないだろう。

「そろそろ教室上がるぞー」とその場の収拾がつかなくなる前に2年達と別れようとした時。

「騒がしいな」

凛とした声と共に同じ組の北とアランの姿が見えた。

「「北さんっ!!」」

双子の背筋が伸びるのも毎度のこと。いきなりの変わりようが面白くて口元が緩む。
倫太郎も心做しか、しゃんとしているように見える。

「北、アラン、おはよ」
「おはようなまえ」
「お前ら、またなまえに絡んどったんか?」
「言い方がひどいわアランくん!仲良う話しとっただけやし!」
「お前らがなまえに絡んだらカツアゲやわ…」
「間違ってはないな。今、おにぎりカツアゲされてた」
「おにぎりカツアゲ、て何やねん!」

アランのツッコミを受けつつ、靴を履き替えた。北とアランのおかげでやっと教室に上がれそうだ。

2年達と別れる前、倫太郎の背中に「昨日やった内容。忘れてないだろ」と声をかける。

小テス対策に昨日の夜、倫太郎の練習後に一緒に勉強したのだ。練習疲れで眠そうだったけど何とか頭に入れていた倫太郎は 「ん、大丈夫」と呟いた。

「頑張れ」

ひら、と手を振って倫太郎と別れる。
階段を上る俺と、北、アランは3年の教室へ向かう。

「あの角名も兄ちゃんの前では素直なん、おもろいよな」
「そう?そんな変わらないけどなぁ」
「昔から仲ええん?」

アランの言葉に記憶がある限り昔のことを遡ってみる。喧嘩はそんなにした記憶もない。

「うーん…母さん曰く、とにかく倫太郎は俺の後ろをついて歩くし、俺を離さなかった、って。
俺の後をハイハイでどこまでも追いかけてくるし、 一緒に寝かせてるといつのまにか俺を抱き枕にしてたらしい。力が強すぎて『お兄ちゃんが潰れるから離してっ!倫ちゃん!』て剥がすのを苦労した子育て話をいつも聞かされるよ」

アイツにもそんな可愛い時期があったんだよ、俺にもな。と付け足しておく。

「はぁ…皆そんな可愛い時期があったんになぁ、今は何か外歩いたらビビられるし」

「まぁ確かにアランから見下ろされたらビビるだろ」

「ひどない?!俺何もしてへんのに!『ひぃっ』て言われると傷ついて3日は引きずんねん!」

「威圧感がなぁ。アランのこと、知ってたらそんなことないんだけどな。なぁ北」

「せやな。アランは優しいで」

「うんうん、お年寄りの荷物持ってあげたりとかな」
「俺の優しさ滲み出てないんか?!」

ははは、と他愛ない会話をしながら階段を登りきる。倫太郎は良しとして俺も自分の小テス対策しておかないとな、と頭の片隅で気にしながら、お互いの教室へ入った。



▽▽▽

昼休み。自販機コーナーで真剣に悩んでいると後ろから伸びてきた手にボタンを押されてしまった。

「あっ、」

振り向かなくても、こんなことするのは一人だけ。

「何すんだよ」
「どうせ、選ぶのレモンティーじゃん」

取り出し口へ落ちてきたパックジュースを拾い、弟を見上げる。

「倫太郎もジュース買いに来たん?」

目を伏せて答えない倫太郎にあぁ、これはジュースを買いにきたんじゃないな、と知る。

壁にもたれてパックジュースにストローを刺した。咥えると冷たくて甘いレモンティーが口の中を満たす。

そんな俺の横にしゃがみ込み同じように壁にもたれる倫太郎を見下ろした。

「3年の教室行ってもいなかったから」

あー、俺を探してたわけか。何か用事でもあったのかな。

「なに?」

ストローをちゅうちゅうと吸う俺をチラリと見上げてきた。

「…小テス85点だった」

「おっ!マジで!すごいじゃん」

俺の教え方が天才的だったんだなと思うことにして倫太郎を褒める。
それでもまだ何か物足りなさそうに俺を見上げてくる。

しゃがんでいるからちょうど良い位置に頭があるため、手で頭をくしゃくしゃと撫でてやった。

「すごいっ」

目を細め耐えるような姿はまるで猫みたいだ。
図体だけは大きいが俺の弟はやっぱり甘えん坊。

頭を撫でられた照れ隠しなのか、倫太郎が手を伸ばしてきた。

「…それ、ちょーだい」

「ダメ。俺の」
レモンティーは渡さない、と背中で守ると倫太郎が立ち上がった。

見下ろして圧かけてきたって渡さないからな。
弟の圧に屈する兄がどこにいるんだ、と無視しているとパックジュースを持つ俺の手を倫太郎の広い手のひらが包み込んできた。

「おい、」

俺の手より大きく長い指に包まれ、ぐい、と手を引き寄せられる。

倫太郎の母さん譲りの切れ長な目が俺を見ながら、ストローを咥えた。

吸われたレモンティーが透明ストローを通り抜けて倫太郎に飲み込まれていく。

ごくりと飲み干し喉仏が上下し終わるまで目が離せなかった。倫太郎はストローから口を離した後、薄い唇を開いた。

「お兄(にい)、ちょーだい」

「ばーか、頂戴ってのはもらう前に言う言葉だろ。無理やり奪っておいて頂戴はないっての」

はーぁ、ジュースなくなったじゃん。

パックを綺麗に折りたたんでゴミ箱に捨てる。

そんな俺を見て倫太郎が笑った。

「なに」
「ううん、綺麗に折るところ、ほんとなまえだなって」
「意味分からん」

目を細める倫太郎の背中を叩きながら2人で廊下を歩く。

「お前はいっつもいっつも『頂戴』ばっかり。あげても気に入らなかったら中途半端に返してくるし…俺に何かあげようと思わないのかね」

たまにはお兄ちゃんにプレゼントくれたっていいんだけどな。とボヤいていると倫太郎がいきなり立ち止まった。
振り向いて見上げる俺に倫太郎は首を傾げて自分を指差した。

「…『俺』?」

「はぁ?要らねえー。ただデカいだけの無気力DKなんていらない」

肩を竦め、弟を放置したまま足を進める。
歩幅も違う倫太郎にはゆったりと歩かれても直ぐに追いつかれてしまう。

なまえが俺をいらなくてもさ、
「俺はなまえがいないと無理」

ポケットに手を入れ無気力な顔でそんなことを言うものだから、やっぱり皆が言うようにこの弟は兄離れ出来ていないのだろうかと本気で心配になった。

これは俺が甘やかしすぎたせいなのか。

いや、母さんが何でもかんでも倫太郎の好きにさせたせいなんじゃないか。
俺のせいじゃない、きっと。

そんな自己肯定を固めながら、後ろをついてくる弟に「ばーか」と一言投げておいた。


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「お兄がバカって言ったって母さんに言っとこ」
「おい、やめろ」
「あっ!ブラコン角名見っけた!」
「角名ぁ、どこ行っとったんや!」
「は?誰がブラコン?」

「ええから、バレーしに体育館行くで!」
「無理。疲れるし眠たい」
「ほな角名はええわ。なまえくん行こ!」
「角名はそこらへんの中庭で寝とけっ」

「え、ちょっ、俺体育館シューズ持ってきてな、」
「裸足でいけるで!」
「いやいやいや、まじかよっ、うおっ!侑引っ張んなっ、速いっ!」

「はっはぁー!来た来た!なまえくん釣ったら角名までついてきよるで!芋づる式や!」
「魚釣りみたいな例えやな!」
「銀も!はよ行くで!体育館まで勝負や!」
「お、お前らっ、まじで速っ!!」

「…はぁー…ほんとめんどい…しょうがないなぁ…」
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