ホワイトデーのおはなし




「なまえくん!これ…受け取って?」

俺の席の前に立ったのは頬を赤らめて俺に何かの箱を突き出した真。

真の手にあるのはおしゃれなリボンで包装された白いレース調の箱だった。

「なんだよこれ。」

「え…?ば、バレンタインデーのお返し…っ」

何でそこで顔を真っ赤にするのかわけがわからないのは俺だけじゃないと思う。

「は?お前に何もあげてないだろ?つーか誰にもあげてねぇし」

「えっ?いや、なまえくんはいつも僕に…その、あっ、愛をくれてるし…バレンタインデーだって僕のこと見つめて…」

「意味わかんね。んなことした覚えねぇし。頭湧いてんのかよ」

「そうやって照れてるなまえくんも可愛いと思う…うん」

自分でこくりこくりと頷いて何を納得したか分からないけど、ずいと手に持った箱を押してきた。


「だから、お返しなんだ。これ、なまえくんに受け取ってほしい。」

鬱陶しいとしかめっ面をしてみても真は気づいてないのか俺の顔をチラチラ見ている。そういうとこがいつもイラつくんだってのをこいつは分かってないんだろうか。

「…中身なんだよ。」

「なまえくんこの間の休みにお店で高級チョコのコーナー見てたでしょなまえくん美味しいチョコ食べたかったのかなって。」

おい待て。この間ってそれ、俺が一人で街をぶらついてた時じゃねえか。何でお前が知ってんだよ。

「そのあと、本屋でお菓子特集がある雑誌とか読みたそうにしてたし…」

こいつ、あの日ずっと後つけてたのか?!

「…やっぱいらねえ」

「えっ?!何で?!これ…手に入れるのすごく苦労したんだよ…?!3時間並んで買ったんだよ…」

真が言うそれは有名店のチョコ菓子。それもホワイトデー仕様という特別な期間限定チョコ菓子だった。

「……チッ…食べ物は悪くないだけだ。」

真の手から少し乱暴に箱を奪い取った。

真はパアァッと効果音がつきそうなくらい笑顔になった。

「あのね、それ家に帰ってから食べてほしいんだ」

「当たり前だろ。」

こんな高級品家に帰って落ち着いて味わって食べるに決まってるだろ。

「うん、じゃあ楽しみにしてるね。」

「はあ?…まあもらっといてやる。」

何を楽しみにするのか意味が分からないけどとりあえず受け取った箱を鞄の中にしまった。



***

学校が終わって家に帰った。自分の部屋に入って、制服を脱いでラフな格好へ着替える。

鞄の中を漁っていると真から貰った箱に手が当たった。

そういや、学校でもらってたんだった。

腹減ったし今食べようと封を開けた。小綺麗なラッピングでいかにも高級品という感じだ。

ホワイトチョコを1つ摘んで口の中に入れた。

甘い。美味い。

「普通にうめぇ」

もぐもぐ食べていると何か少し胃が温まってくる感じがした。

体温が上がったのか暑くて飲み物を取りに行こうとキッチンへ向かう。水を持って自分の部屋に帰る頃には息切れがして、急な異変に少し怖くなった。

「は、ぁ、っはぁ、な、んだこれ…」

汗がじわりと出て肌がベタつく。このチョコが可笑しいのか?俺何かアレルギーあったっけ?と真剣に考えていると部屋のドアがガチャりと開いた。

「なまえくん!食べた?」

「っっ!!ま、こと?!…何だよ…」

家の鍵閉めてたはずなのに何で入ってんだよ。
そう思っても俺の体はますます暑くなる一方で訳が分からず混乱した。

「あ、つ…っ」

「…なまえくん…」

ぴとりと頬に手を当てられてびくついた。触れてきた手を離したいのに力がうまく入らなくて、這うように部屋の隅っこに逃げた。

部屋の隅で丸まって蹲っているとカシャリと音がして見上げると携帯を手にした真がこちらを見ていた。

「な、っ」

「はぁぁ…なまえくん…かわいい…」

俺よりも息が荒くなってる真に正直ドン引きした。というかこいつのせいじゃないのか。

「お、まえ…チョコに何かいれただろ…っ」

「…ちょっとだけね…ちょっとだけ…」

口を緩ませながら隅っこでびくついてる俺に寄ってきて見下ろす真を睨んだ。

「…っふざけんな…っ、何だよこれ…っ」

「…感じやすい薬…こんなに効くなんて…」

「…はぁっ?!…っん、」

聞いた瞬間さらに効果が跳ねたがったように感じた。前からこいつは可笑しいと思ってたけどやっぱり可笑しい!

「て、めぇ…」

この暑さどうしてくれんだよともう腰にも力が入らなくてへにゃりと床に張り付いた。床の冷たさが気持ちよくておでこを床につけて落ち着けようと吸って吐いてを繰り返す。

「んぁっっ!!」

尻にぞわりとした感触が走って口から自分の声とは思えない声が出た。

勢いで後ろを振り向くと、ハァハァしたままの真が俺の尻に手をあてていた。

「ゃ、めろ…っ!さわ、るな!」

やめろと言うのに全く聞かずにさわさわと尻を触ってくる真にブチ切れ寸前だ。いや、もうブチ切れてるんだけど体に力が入らないせいでされるがままになってしまっている。

「なまえくん…最高すぎて…もう僕しねる…」

しね!今すぐにしね!俺が地獄にたたき落としてやる!!

と内心で叫びまくった。真は動画を撮っているのかずっと携帯を俺に向けている。

「なまえくん…、暑いよね…?僕、手伝うよ…」

いいいいいいい!いい!いい!手伝わなくていい!必死でベルトを掴むのに、真の手で外されてジッパーを下までおろされた。

「はぁ…っ、なまえくん…楽になろうね…」

もう絶対こいつからものは貰わない!!

そう誓って睨んだのに、何を勘違いしたのかさらにまさぐる手が激しくなってもう俺がしにたくなった。



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