09
「あ〜…」
ざぶん、と浸かると湯船の水が多くて顎すれすれにまで水嵩が増した。
やっぱ一日の終わりの風呂は最高だな〜…。
風呂の中でぼーっとしていると案外時間はすぐに経つもので暑くなってきて湯船から出た。
髪の毛の水を絞り、バスルームの扉に手をかけて外に出る。
タオルで頭を拭いて、体を拭いて、近くに置いてあったパンツを取った。
水色の水玉模様…。
なかなか可愛らしいこのチョイスは一二三だ。
俺はグレーと赤のシンプルなやつがあったからそれがいいって言ったのに、なまえにはこれが似合うとか言って買ったもんだから使うしかない。
全てが小さくなってしまったのだから、もちろん自分の息子も小さい。ああ…しおらしくなっちゃって…なんて思いながらパンツをすいっと履く。
タオルを肩にかけて廊下をぺたぺたと歩き、たどり着いた先はキッチンの冷蔵庫。
冷蔵庫から冷えた缶のソーダを取り出してプシュッと開けた。
ゴクゴク喉を鳴らすように飲むと火照った体に冷たい水分が染み渡る。
「っぷは、くーーっ……ってビールじゃないのかよ!」
缶ソーダを見て1人で愕然とするという俺の鉄板ネタをやっていると後ろから声がかかった。
「なまえ〜パンイチって風邪ひくぞぉ!」
振り向くと今日はオフだった一二三が俺の傍にきていた。俺のタオルを取って、頭をわさわさと吹き始める。
そう、今俺はパンイチスタイル。
だって暑いもん。
「ちゃんと服着ろよ〜俺っちはそんな風に育てた覚えありませんっ」
「そうだぞ、なまえくん。ほらTシャツあるからこれを…」
リビングでテレビを見ていた独歩がTシャツを手に持ってきた。それ、独歩のじゃん…大きいじゃん…。裾がお尻を余裕で隠すレベルだ。あれだ、もうワンピースだな。
「ずるい。俺だけじゃなくて独歩だっていつもパンイチだぞ。」
「えっ!独歩、お前が犯人か〜!?」
「独歩、お風呂上がりいつもパンイチだもん。昨日は黒のボクサーパンツ履いてた。」
「そ、それは別に…自分の部屋ならいいかなって…」
独歩曰く、自分の部屋なら誰も見ないからパンイチでいいだろうということらしい。
自分の部屋がない俺はリビングでもパンイチを貫くスタイル。これぞ本物。
腰に手をかけてどうだとパンイチスタイルで仁王立ちしてやった。
すると頭を拭いていた一二三の手が離れて、脇腹を掴んできた。
「うひゃっ!」
「服着ないととくすぐるぞっ」
こしょこしょとくすぐられて生理的に涙が出る。
「やっ、やめっ、やめっ、ははは…っ、やめっ…くくくっひえっ!着る!着るからっ!」
服を着ると言うとやっと解放された。
はい、両手上げて、と独歩に言われてバンザイすると独歩が手に持っていたTシャツを着せてきた。
ふわりと独歩の服の匂いがする。
やっぱり大きい。裾は膝上か、ってぐらいだ。
「彼シャツじゃん!」
一二三がダボッとした俺の姿を見てケラケラ笑い始めた。
「…えっ…独歩、俺のこと…、でも俺まだ子供だし…」
裾をひらりと持ち上げて太ももをちら、と見せてみる。
「えぇっ?!いやっそういうわけじゃ!ちがっ」
本気で狼狽える独歩に笑いが込み上げてきて一二三と2人して吹き出した。
「うそうそ〜♪」
「独歩〜、お前まじウケ〜!」
「お前ら……」
はぁ、と独歩がため息をつく。
「独歩、ため息つくと疲れるぞ?」
「…誰のせいだと思ってるんだ…」
疲れ顔の独歩をちらりと見て、一二三と顔を見合わせ、にひりと笑った。
「風呂上がりのもう一杯いこーっと!」
俺は缶ソーダを掴んで彼シャツのままリビングのソファに飛び込んだ。
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