夢を見た。

俺は瀬名のことを、セッちゃんって呼んでいた。

そんで制服を来ていた。2人とも高校生だった。
瀬名の高校生の時なんて見たことないけど、でも夢の中の俺と瀬名は高校生だった。

2人で笑いながら何でもない話をしていた。

それはただの夢だった。





起きたら毛布に包まれていた。

暖かくて出たくなかったけど、ぼーっと周りを見ているとここが自分の部屋ではなく瀬名の部屋であることに気づいてすぐに出た。

そう言えば昨日瀬名の部屋でそのまま寝てしまったのかもしれない。

瀬名が移動させてくれたのか、とその本人を探してリビングに行くと瀬名はソファに座っていた。

俺の気配に気づいたのか瀬名がこちらを見た。

「なまえおはよう。昨日はごめん、飲みすぎた。」

「おはよう…頭痛いの?」

顔色が悪そうな瀬名に具合を聞いた。

「ん、少しねぇ。何か言われた?Knightsのメンバーに。」

「…特に。」

ソファには座らず、突っ立って瀬名と会話する。
昨日感じた距離感がまだ拭えないのだ。

さっきまで見ていた夢もすべて幻想で、セッちゃんと呼ばれる瀬名に近づけずにいた。

「…?こっちに座ればぁ?」

「…いい。」

瀬名が珈琲を飲んでいたため、俺も何か飲もうとキッチンに足を向けた。

動こうとしたが、瀬名がソファから立ち上がって俺の腕を掴んだ。

「何かあったの?」

「何にもない。」

「何でこっち見ないの。」

「…分からない。」

分からないんだよ。瀬名が見えない理由も、なぜか瀬名と目を合わせたくないと思っている心も。

「なまえ。」

強く呼ばれて両手で頬を包まれ、強制的に瀬名の方へ顔を向けるようになった。

「どうしたの。」

今日はじめて、瀬名と目が合った。
澄んだ青。俺は真っ黒で淀んだ黒。

セッちゃん、セッちゃん、セッちゃん。
俺の心の中では何回も繰り返されているこの言葉。

セッちゃん。友達だから言える。特別な仲間だから言える。

俺は言えない。名前も言えない。セッちゃん、セッちゃん、心の中でだけ。

「何で泣きそうな顔してんの。」

覗き込んだ瀬名の顔が更に近づいて、瀬名の髪からふわりと柔らかいシャンプーの香りがした。

距離が近いからこそ、嗅ぐことのできる匂い。

ここに来てから、瀬名との距離が近すぎてたまに人肌が恋しくなるときがある。それはまるで、家族の温もりを求めるように恋しくなった。

忘れていたあの温かさが欲しくなってどうしようもない時がある。

最近の俺は欲張りなのかもしれない。

家族がほしい、なんて少しでも思った自分は今すぐにでも殺さないといけないのに。

「なまえ…言って?聞くから。」

「……いい。瀬名しんどいでしょ…」

「しんどくない。なまえと話したい。」

明らかに顔色が悪そうなのに瀬名は俺の頭を撫でた。
ゆっくりと息を吸って、心の底に小さく溜まっている思いを小さな声で言葉にした。

「……家族が…恋しくなった。」

「…家族のところに帰りたくなったの?」

瀬名の言葉にゆっくりと首を振った。
はじめて自分のことを瀬名に話す。

「家族は…いない。高校の時に死んだ。」

「…そっか。」

「…ここに来てから、瀬名があったかいから…辛い。」

甘えるようにこてん、と瀬名の肩にでこをつけた。顔を見られたくなかったからだ。

辛い表情をしている顔は見せたくない。
瀬名は気付かず、そんな俺の背中を慰めるように撫でてくれた。

「ふふ、なにそれぇ。良くないの?」

「ううん。…良い。」

良いことだけど、辛いんだ。
だってこの温かさがずっと続くわけじゃないでしょう?

期限付きの温かさは辛いだけなんだ。
大事なものほど、辛い。

分かっているのに、今だけは甘えさせてほしかった。

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