「なまえー、生きてるか…?」

ガチャリと玄関の扉が開いて、ワンルームの部屋に入ってきた人物。

両手に大量に物が入ったスーパーの袋を持っていてる。

「よいしょ、っと。あーらら…またゲームか。」

どさりと冷蔵庫の近くに荷物を置いて、はぁとため息をついた。

ヘッドホンをかけてパソコンに向かっているこの部屋の主に近づいて、手をかけた。


ゲームの爆音が頭の中に響いていたのに、ヘッドホンを外されたことによって音が途絶える。

「……真緒…」

「目の下が酷いぞ?ちゃんと寝たか?…ってかまた汚くなったな…」

これは片付けが大変そうだと腕まくりをしたのは衣更真緒。俺、みょうじなまえの幼なじみだ。

と言っても高校からはそれぞれ違う高校に別れたので、関係も切れたかと思ったのに成人してもなお、なぜか真緒は週に何回もこの部屋へ来るようになっていた。

真緒曰く引きこもりでニートの俺がちゃんと生活できているか心配らしい。

高校を出て就職して3ヶ月経たぬうちに、辞めて無職になった俺は世間体が悪いと親に言われ地元へ帰ることも出来ず引きこもりニートになった。

もちろん生活収入源は親。

生活できているかどうかは部屋を見れば一目瞭然だ。

換気されていない室内、食べかけのゴミ、洗濯されないまま1箇所にまとめられた服。
そして俺は風呂にも入ってなくて何日その服をきているんだという程、同じ服を着続けている。

別に外に出ないし、一日中パソコンの前に座るかベッドに寝転ぶかだけで汗をかくこともないから不潔じゃない。と俺は思っている。

2日に1回入るし問題ない。

そんな俺の世話をするために一駅も離れている俺のところへわざわざ真緒はやってくる。

「とりあえず換気、と洗濯と…なまえはお風呂な!」

不思議とシンクにものが溜まっていないのはそもそもキッチンを俺が使わないから。

真緒がこうして来る以外は、全てインスタントや出来上がりのものを買って食べている。

今の世の中は便利だ。外に買いに行かなくてもネットでポチッと押せば何でも宅配されてくる。

だから俺は外に出ることがない。コンビニさえも行かない。ネットで頼めば家に来るからだ。

真緒に早く入れと急かされてしぶしぶよれよれの毛玉がつきまくったスウェットを脱いだ。

ワンルームで脱衣場なんてないので真緒の前で裸になることになるが幼なじみなので別に気にしない。

脱いだあとで初めてタオルを持ってきてないことに気づいた。

「あ……」

「タオルか?置いとくから入れ入れ」

何も言わなくても気付くあたり母親みたいだと思いながらそんな真緒に甘えて浴室に入った。

2日ぶりのシャワーを浴びて、真緒が用意してくれたタオルで頭や体を拭いて出ると散乱していた部屋が綺麗に片付けられていた。

おまけに肉が焼けた美味しそうな匂いがする。

「ああっ、ほらちゃんと拭け!」

風呂から出た俺に真緒は寄ってきてタオルを俺から取り俺の頭を拭き始めた。

俺より少し背の高い真緒に拭きやすいように頭を前に傾ける。

「はい、大分乾いた。飯作ったから食べるだろ?」

「うん」

机の上に並べられたおかずとメインの肉料理と白飯。どれも湯気が出ていてほかほかだ。

真緒も持ってきたエプロンを外して向かい合わせに座った。いただきますと手を合わせて真緒の作った料理を口に運ぶ。

いつもネットでポチッて送られてくる食べ物とは別格だ。美味い。

「美味しいか?」

「うん。美味しい。」

俺の言葉に満足したのかたくさん食べろよ〜と笑う。

パクパク食べていると真緒の携帯が鳴った。

「ごめん、ちょっと出る。」

テレビもない俺の部屋ではとくに電話のために音量を下げる必要もないのでコクリと頷いて出るように促した。

俺の目の前で真緒は携帯を耳に傾けた。

「もしもし…、どうした?え?急に? まじか。あーーっと、ちょっと今は…」

真緒はちらりと俺を見て困った顔をした。

俺は首を傾げる。

「ごめん、あと数時間は手が離せそうにないんだよ。用が終わったら向かうから俺抜きで先に始めてくれ!」

それから二言三言交わして電話を終えた真緒に俺は聞いた。

「仕事…?」

「ああ、うん。急な打ち合わせが入ったって。」

「行けば……?」

俺のところにいる場合じゃないだろうと思ってそんな言葉を言ったけど、わざわざ料理や掃除をしにきてくれている人に対して俺が言うべき言葉ではなかった。

「駄目。ここで俺が行ったらなまえこのまま皿とか放置だろ?全部綺麗にしてから行く。」

「それぐらい出来る…。」

「俺の気が済まないんだよ。許してくれ。」

困り顔で笑う真緒に許すも何も俺はそんな立場にいる人間じゃない。

「…怒られても俺は知らないからな」

「ははっ俺が好きでやってることなんだからなまえのせいじゃないぞ。」



社会へ出て数ヶ月で引きこもった俺のところへ真緒が通い出して早4年が経とうとしている。

目の前にいる職業アイドルの幼なじみは超有名なアイドルユニットTrickstarの一員で大人気アイドル。

多忙なアイドル生活を送っているにも関わらず衣更真緒は毎週ここに来る。

引きこもりニートの俺の部屋に。

俺はそれを拒まず、甘えた自堕落生活を送るヒキニート。


そんなお話。

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