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朔間零side

イライラする。
あいつのこととなるとイライラして仕方がない。




「りちゅ〜今夜は我輩の手料理じゃよ〜」

「…置いといて、後で食べるから。」

「お兄ちゃんに向かってそんな…」

ぐすりと泣き真似をすればうざったそうに凛月の目が細められた。

「泣き真似うざい。」

ばっさり切り捨てられたのでケロッとして料理を並べていると凛月の言葉が耳に入ってきて手が止まった。

「ていうか、兄者またなまえと喧嘩したわけ〜?」

「…何がじゃ?」

はて?と首を傾げてみると凛月は鼻を鳴らして笑った。

「ほんとなまえが可哀想だよねぇ。小さい頃から兄者の気分で振り回されて…」

「ひどいのう。我輩そんな風に見えておったのかえ?」

「…そんなんじゃ失うよ。全部。」

失う、という言葉が深く突き刺さった。

「…失うも何も最初から何もないんじゃが…」

「…嘘つき。まぁいいけどねぇ。俺のことじゃないし。」

1枚もーらい、とローストビーフをつまみ食いして凛月は自分の部屋に入っていった。

「………。」

トマトジュースを注いだコップを手に持って1口飲み干した。



気分で振り回してる?

今になったことじゃない。

物心ついた時からもうそうなっていた。

なまえの泣く顔、嫌がる顔、怒った顔、面白くてケラケラ笑いながら追いかけ回していた。

普通なら嫌がるのに、零くん零くんって駆け寄ってくるなまえは馬鹿だと思った。

俺から意地悪されても次の日にはケロッとした顔で俺のところにきて、 これ零くんのおめめみたいに綺麗な花!真っ赤だよ! なんて言って棘で傷ついた手で薔薇を持ってきていた。

そんななまえだから、なまえにだけ素で当たることが多くなった。

馬鹿じゃね〜の、と笑い飛ばしてもへらりと笑って、でも俺これ好き!零くんみたい!って顔をくしゃくしゃにして笑っていた。

それからなまえが好きになったんだ。

平凡ななまえを好きになった。

零くん零くんって、駆け寄ってくるから俺なりの愛情表現をいっぱい返してやった。


でも成長してからなまえは零くんと呼ばなくなったし、朔間先輩と呼んで距離を置くようになった。

それがムカついた。

あれだけ零くん零くん言ってた奴が何離れてんだよって。

無理やり俺の行くところに引っ張って行った。夢ノ咲も、部活も、全部引っ張った。

ムカつきすぎて、キスして窒息寸前までしてやろうかとした時もあった。

それなのに、全然喜びもしないし、はぁ??ってなるよな。

零くん零くんって素直に俺を求めてた姿はどこにいったんだよ。

なまえが他の奴と話してたらイラつくし、俺の話聞いてないのもイラつくし、俺を見てないのもイラつく。

人当たりが良くて皆に頼られるのはなまえ以外限定。

なまえとなるとそんなのどっかに行っちゃうくらい。


好きなんだっつ〜の。


それなのに、あげたプレゼントは付けないし、挙句の果てには似合いませんとか。

ムカついたから、わざと冷たくしたら「あぁ、そうですね」なんて何事もなかったかのように過ごしやがって…。

部活にも来ないし、イライラする。


なまえのくせに何様だよ。今すぐ押し倒して分からせたい。

トマトジュースをもう一度こくりと飲み込んで息をついた。

それで、週末はデート?ふざけんなっつ〜の。

なまえの分際でデート?はあ?


何かに噛みつきたくなるような衝動にまたトマトジュースを飲んだ。


何で…伝わらね〜んだよ。


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