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「あっ、なまえ先輩っ」

『おお、ひなた。』

「今日部活の日ですよ?」

『あー、うん、今日はちょっと…』

「え〜そう言ってなまえ先輩、前回も来なかったじゃないですか」

部活に行かなくなって1週間、朔間先輩から昼の連絡が来なくなって1週間。

この1週間で俺はめっきり朔間先輩と話すことも会うこともなくなった。

『そうだったっけ…?』

「も〜なまえ先輩、顔見せないから何かあったんじゃないかって心配してたんですよ。ていうか、練習しないとその内俺たちがなまえ先輩抜いちゃいますからね♪」

抜いちゃうも何も俺は楽器演奏なんて最初から下手くそだし、今も下手くそだ。ただ朔間先輩に有無を言わさず部活に入れられただけで…。

『もうひなた達は充分俺より上手いよ』

「とにかくー、放課後迎えに来ますから!」

『いや、えっ、』

断る前にひなたは俺の目の前からさっと消えてしまった。

こうなりゃ来る前に帰るしかないな、と思って終礼直後教室を出たのに昇降口の所でひなたとゆうたに捕まってしまった。

「捕獲〜」

『ちょ、…』

両側からしっかり掴まれて捕まった宇宙人の如く引きずられていった。


「とうちゃーく♪」

『おいこら人の話を…』

無理やり部室の中に連れ込まれるとすでに大神と朔間先輩がいた。

朔間先輩と一瞬目が合ったものの直ぐに逸らされてしまった。

「あ〜っ!大神先輩それなんですかっ?この間は持ってませんでしたよね!」

「あ?これか?…この間の休みに買ったんだよ」

「へぇ〜っ!でもちょっと大神先輩が選ぶのとは違う気がする…」

「吸血鬼ヤロ〜が選んだんだよ」

「我輩のハイセンスはどうかのう、ゆうたくん」

「おっしゃれ〜さすが朔間先輩!2人で出かけたんですかー?」

「ライブの下見も兼ねてのう。」

聞こえてくる内容から大神と朔間先輩は休みに2人で出かけたんだと分かった。

街中歩く2人の姿が簡単に想像できた。胸の奥がつきつきと痛い。

2人で、出かけたんだ…。

大神は朔間先輩と好きな物が似ているし、俺より一緒にいて楽しかったかもしれない。

才能ある大神の方が…。平凡でただの使いパシリの俺より…。

大神と朔間先輩、それと俺。

間に大きな超えられない壁が見えた気がした。同じユニット、先輩後輩…。

所詮、別世界に住む人に何を想っても無駄なんだろう…。

酷く滅入りそうになりかけた時、ひなたが俺の名前を読んだ。

「なまえ先輩ってば!」

『あ、ごめん』

「先輩次の休み空いてないですか?次は軽音部で遊びに行こ〜って今話してて!」

『…予定あるんだ…』

嘘、ないけど。

「え〜、その歯切れの悪さはもしや〜〜デートとかっ?!」

『…内緒。』
「うわっ、ますます怪しい!」

ひなたに適当にはぐらかして俺はカバンを手にした。とにかくもう部室から出たかった。

『ごめん、今日ほんと用事あるから…。帰ります。』

部室を出る時、朔間先輩の真っ赤な眼がこっちを見ているのがわかった。

多分、その目はきっと冷たくて何も思ってないような目なんだろう。

扉をパタンと閉じて廊下の壁に寄りかかった。




ああ…、泣きそうだ…。



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