たまらず酸素を求めて顔を上げると、そこは朝の海であった。
「無理は禁物と言ったのに」
「姉上の肺はどうかしている」
「慣れ、ですよ。海女のばあやは私の三倍長く海の底を見ることが出来ます」
「楽しくはなさそうです」
姉の白い腕がポールの腕を取り、ゆるりゆるりと姉弟は泳ぐ。初夏の海は少しばかり冷えるところを除けば欠点など無い。ポールは先に岸に上がった姉の肌を見ぬようにと朝の空に視線を移した。
「この星ほど、美しく、雄大で……恵まれた星はありません」
「姉上。いつか、あなたが支配する」
何処までも続く水平線。ポールは考える。正妻の娘が統治し、自らはその隣で気軽に生きていく未来を。だが姉はポールを後ろから抱き締めながら、こう囁いた。
「あなたが産まれた時から、この星はあなたのものです。愛が、海が、水が、空が。青があなたをプリンスとして迎えた」
そして時が経ち。今、ポールはこう宣言する。
「惑星カラダンを、アトレイデス公女に与える。レト・アトレイデスの娘として、先祖のように穏やかに統治せよ。海が、水が、空が……青がそなたを指導者として迎えた」
海の瞳の男は、砂の惑星を
砂の瞳の女は、海の惑星を統治する。