Memento mori

メモ帳を浸して浮き出た文字を掻き混ぜる

砂丘更新と少しのお話

DUNE 1話 追加しました

誰が為に着飾る

( あの世界で女として生き抜くことの難しさ、不条理さ、母から娘に伝えたいこと )


誰が為に着飾る : 式典ではポールと同じ格好でいい、と言う姉上。然しジェシカは教えます。男の引き立て役になるためにドレスを着てティアラを戴きジュエリーを指に嵌めるわけではない。自分自身が高貴であるために高貴な装いをするのだ、と。肉体ひとつで砂漠を這い摺り回って生き延びなくてはならなくなった「男」であるポールとは正反対の「生き残る術」をジェシカは伝えていたのです。高貴な女は高貴であろうとするから、高貴でいられる。父である公爵と次期公爵の弟の傍で「女」であるから軍礼装を着ないのではなく、自分自身がカラダンの栄華と、何者にも屈しない女だと言うことを示すために「着飾る」。そしてその教えは未来に捕虜として捕えられても……プライドを失わせない高潔さとして多くの歴史書に記されることとなる ……

あの世界は原作が執筆された年代のせいかもしれないけれど女性登場人物達の意思や権利が当たり前のように踏み躙られている描写がさらりと描かれる。だけどそれは世界を維持するための制度や職業として受け入れられているし、ポールすらもあまり気にしていないのが「あぁ、そう言えばこの作品はがっつり階級制度で家父長制のベースの上での物語だったな」と認識させられるのです。ポールがチャニのことを愛しているのは確かでも「俺の息子の母親だ、アトレイデス家にはもう一人男児が……」と紹介するのが… うーん…となる。妾の子であるポールが同じように妾を囲い、正妻イルーランに対して「本でも慰めにしたら?」を母親と共に思うのは残酷過ぎる。(そりゃ 二部であんなことになるわ、と思ってしまう。) でも、だからこそポールと姉上の関係は絶対にこんなことにはならない。

チャニとは少年時代に恋し、「息子たちの母親」としての愛情になるのなら。ポールと姉上は永遠に互いに惹かれ合う 生物としての運命的な雄と雌。「姉上の子」が大きく育ち、彼らの妹の巻き起こす騒動で敵対したとしても。ポールの目の光が失われたとしても。まさにポールがその生命を奪われるまで。姉は弟のなかで、何にも変えられないただ一人の女である。そんな物語にしていきたいのです。
2022/06/26/22:49
Category : 更新履歴(砂丘)
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F.A.L