Memento mori

メモ帳を浸して浮き出た文字を掻き混ぜる

砂丘、どうしよう

砂丘の ストーリーについて。

Part2、原作ネタバレを含みます。
未視聴の方はご注意下さい。


砂丘 Part 2

管理人は、米公開時にそちらで見ました。迫力、美しさ、音響、ストーリーライン。どこから見ても完璧な作品でした。

ただ、頭を抱えてしまった場所が多くありました。これはドゥニに対する批判ではなく、勝手に二次創作をしている私の感想です!繰り返しますが、私はドゥニ版もリンチ版も原作も大好きかつ信奉者です。以降は完全なる私の独り言になります。


まず、時間が、短くなっていたこと。

ポールがフレメンに迎え入れられてから政権の転覆までは原作では二・三年の開きがありました。その間にポールとチャニの間には第一子が誕生しています。そして【アリアが生まれています】。【アリアが!!!生まれている!!!!】

この点は重要な要素だと考えていました。ポールとチャニが淡い恋を超えた夫婦と呼んで差し支えない関係を構築していたこと、アリアが新しいアトレイデス家の一員として生まれていたこと。それを踏まえて、SVの本文内でも時折匂わせていたように、ヒロインである【姉上】にも無理矢理ながら家庭というものを与えていたのです。ネタバレのように突然示される情報、姉上がフェイド=ラウサの妻として短くは無い時間を彼と過ごしていること。長くて三年という月日はポールとチャニの絆の深さ、と同時にポールが家父長制や男尊女卑的な思想を捨て切れていない言動を描写する、この物語の根幹であると感じていたのです。ドゥニがこの点を省略したのは驚きました。姉上が何ヶ月、あるいは何年ハルコンネン家の妻として過ごしたのか。原作通り長き夜をジエディ・プライムのプリンセスとして過ごすのか、映画のように数ヶ月でポールの元に返されるのか。私は原作の流れを想定してこの物語を書いていたので、どうするべきか悩んでいます。


ふたつめ。
チャニが独立している。

度々言及してきましたが、この原作は今より数十年前に記されたこと、階級制度と家父長制を徹底した宇宙が舞台であるため、女性の権利や自主性が著しく制限されています。それとは裏腹に暗躍するのがベネ・ゲセリットです。ポールは自らの母が側室であるのに、自らもまた愛する女を同じ立場に追いやらなくてはならなくなりました。それは仕方ないことでもありますが、ガーニィと再会した時の原作のポールの台詞等を鑑みても、ポールがあの宇宙での「当たり前」を受け入れてチャニを「妻・所有するもの」として扱っていました。

ドゥニは昔から公言していますがフェミニストです。チャニの役割を拡充することは随分前から宣言していました。それがまさか、権力者となったポールを見限るという形で発揮されるとは考えてもみなかった。第一子を失い悼む間もなく、愛する男は政略的に結婚してしまう。慰めは義理の母の言葉だけ。大好きな作品でも私が心にモヤを抱えていた部分をドゥニは彼なりの解釈で書き換えました。彼のチャニは独立し、自分の人生に決定権を持ち、信仰心ではなく自分への自信で物事を判断する優れた女性です。私はこのチャニの方が大好きです。

しかしながら、チャニがポールの側室として生きていることがこれ以降の物語を左右する要素なのです。ポールの子らは誰の子?この問題点はまた数年後にドゥニが解決してくれるでしょう。でも私としては、困ったことになりました。なぜなら、ポールが姉上を手元に置くことが出来てしまうのです。ポールはイルーランを正妻とし、チャニを愛するが故に姉上とは別れるという未来を既に見ています。でもチャニは去った。ポールはイルーランには触れる気すらない。姉弟の生き方、恋愛が大きくこの映画公開で軌道修正しなくてはならなくなりました。今、プロットを全て見直しています。

(ポールが割とはっきりと神権政治の独裁者化を始めているということは描写されましたね。フレメンがアラキーン内部を襲撃しているシーン、私が覚えたのは高揚感ではなく恐怖でした。)


そして、最後に。

人名の翻訳。

これまでもこの作品は日本語訳の度に人名や地名が変わってきました。

クィサッツ・ハデラック
クイサッツ・ハデラッハ
チャニ
チェイニー
ジャミス
ジェイミス
ウスール
ウスル

英語をどのように発音するかを翻訳した方の個性として受け止めてきましたが、基本的に新訳版の名前と、ドゥニ版映画でのものを使用して二次創作をしています。クィサッツ・ハデラック、チャニ、というふうに、です。

私はアメリカでの公開をそのまま見たので特に気にしていなかったのですが、こちらの読者さんから「字幕表記がムアディブでした」とご連絡を受けてひっくり返りそうになりました。ムアッディブ、ムアディブ。こちらも旧訳版と新訳版で変わっていたところ。発音的にはムアッディブだから新訳版原作通りで良いじゃないか…と思いますが、公式が変えたので、当作品も変えます。ただ何処にムアッディブと記載したのか分からないほど多く使ってしまったので記載の変更にはお時間を頂く可能性があります。お待ちくださいませ…!


長くなりましたが、映画公開に対する本作品の軌道修正ならびにストーリー再考についてはこんな感じになります。

フェイドが髪が無いことも思ったより気にならなかった、というかむしろ異常な残酷さとカリスマが引き立つような気がして、今から彼の妻として過ごすヒロインを描写することが楽しみでなりません。ハルコンネンアリーナのシーンに特典映像でおなじみの「彼」が登場した時は、これは書かねば!と思って早速新しいエピソードに織り込みました。

また円盤が発売されたら細かいところを再チェックしながらストーリーを再構築していこうと思います。

もう一回、もう一回みたいなぁ。
(IMAX 4DX 通常スクリーン でそれぞれ見ました。)
2024/04/11/01:35
Category : 雑談
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F.A.L