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▼狂い華
act.1地獄の始まり-2
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春の穏やかな日差しに包まれ、私立桜庭男子高等学校にも入学式が訪れた。桜は丁度見ごろで暖かい風に吹かれひらひらと花びらを散らしていた。

行き交う新入生は真新しい制服に身を包み、これから始まる高校生活に期待に胸を膨らませているようだろう。峯喜市(ミネ キイチ)も例に漏れず、緊張に顔を強ばらせてはいるもののその足取りは浮き足立っていた。周りの喧騒よりも心臓の鼓動が煩いくらい高鳴りを少しでも抑えたくて、着慣れないブレザーのネクタイを締める。


夢にまで見た扉がすぐ目の前にあると思うとふにゃふにゃと頬が緩むのが止まらなかった。

(今くらい、幸せ噛み締めたってバチは当たらないだろ)

あの勉強漬けの日々を思い、心の中で独言る。


ここ、私立桜庭高校はK県にある有名私立進学校でもありバレーボールの全国大会常連の強豪校でもあった。毎年部員は50人を超え、バレーボール部専用の体育館と県外からの入学者専用の寄宿舎も完備されている。有名な監督やコーチを外部から専任で雇い、積極的にスカウトも行っており部員の半数以上は県外出身者が占めている。
残念ながら、喜市は「田舎で少し有名な中学校でそこそこ強い」レベルの為スカウトはおろか学校からのスポーツ推薦もない。中学バレーを引退した後半年の間寝る間を惜しんで受験勉強に打ち込んだ甲斐あり、合格通知が学校に届いた時は思わず泣いてしまった程だ。

そんなに成績は悪くなかったし県内にもバレーの強い高校はあった。殆どのチームメイトはその高校へ進学するし、そこの高校の監督からもアプローチも受けていたがそれを蹴ってでも桜庭高校のバレー部でないといけない理由が喜市にはある。


喜市とバレーとの出会いは小学校2年生の時、4つ上の兄がクラブチームに入ったのがきっかけだった。当時から兄にべったり懐いていた喜市は何をするにも一緒について回り、週2回のクラブチーム練習について行くようになってからいつの間にか喜市も始めるようになっていた。
喜市が小学生5年生の時兄が桜庭高校のバレー部にスカウトされ、2年生でレギュラーとして全国大会に出場したそのユニホーム姿に憧れ喜市の目標になったのだ。




その日は入学式とSHRだけでオリエンテーションやその他諸々は次の日から予定されている為、午後はまるまるフリーだった。県外入学者の喜市は入寮手続き済ませると、寮長に部屋に案内してもらう。室内には勉強机にシングルベット、収納用のクローゼットがあるだけシンプルな間取りだ。窓にはアイスブルーのカーテンがかけてあり隙間から差し込む陽の光は暖かく照らしている。

ダンボールが積まれている室内を見渡し、これから始まるのバレー漬けの生活に思いを馳せた。



-------本当に夢みたいだ、、、


親元を離れ、はじめて経験する他人との共同生活。同室者は同じ一年生で少し人見知りの気がある喜市は仲良く出来るのかが不安だったが、同じチームメイトになる相手だ、出来れば円滑な関係を築きたい。今回割り振られた同室者は三年間よっぽどのことがない限り変わることはないと聞いている。喜市は心の中で吃らないように挨拶練習をした。

運び込まれた荷物を片しながら同室者を待っていたが、喜市は部屋の隅に小さいダンボールの中からウェアと取り出し着替えることにした。新入生は今日から練習に参加を許可されており、上級生へ簡単な挨拶をするのだ。

受験勉強中も走り込みやトレーニングをし続けた成果もあり、うっすらとだが筋肉量も増えつつある。桜庭高校バレー部は中学とは違い、ユニホームと同色のジャージ以外は練習着に特に指定がない。そのことを知っている大学に進学した兄は餞別にと新しいウェアを買って送ってもらった。さりげなく喜市の好きなスポーツブランドの新しいウェアに、また締まりのない顔になってしまう。大学の講義に大学になっても続けているバレーボールの練習の合間にアルバイトをして買ってもらったものだ。大好きで尊敬している兄の期待に応えるべく、喜市はバレー部専用の体育館へ急いだ。

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