五月某日





ゆらり、ゆらり。


ゆらりと揺れる鯉のぼりが運んできた五月。

今日は子供の日。
前日に皆で泳がせた鯉のぼりは随分と立派なものだった。目の前に吐き出した白い煙が晴れると現れるそれは、とても迫力がある。


「よくこんな立派な物、手に入ったよねー」

「万屋のおじさんに感謝ですね」


預けられてまだ日の浅い私の本丸に、これほど立派な鯉のぼりを用意する余裕があるはずもなく。

それでも、この本丸で過ごす初めてのイベント。短刀達のためにも、せめて小さな鯉のぼりを調達しに万屋へ行くと、

「泳がせる場所があるならば是非持ってお行き。」

処分に困っていたのだと苦笑いをした万屋の店主が、大きな鯉のぼりを譲ってくれたのだった。


「今度改めてお礼をしに行かなくてはいけませんね」

「だねー。運ぶのちょー大変だったけど!」

「ふふ。そうですね」


結局、このとても大きな鯉のぼりを同行した清光と二人では持ち帰るのは困難で、一度本丸へ戻り総出で持ち帰った。


「でも、ちょっと楽しかったな」

「そうですね。」


パレードかのようにぞろぞろと万屋へ向かい皆で鯉のぼりを担ぎ帰るその様は、まるでお祭りに参加しているような気分にさせてくれた。


「あるじさま!あるじさま!」


昨日の思い出を二人で語り合っていると、先程まで鯉のぼりを見上げ、はしゃいでいた今剣が大きく手を振りながらこちらを呼んでいた。
「ついでにかしゅーも!」と付け加えられると、清光は不服そうな表情を浮かべたが、私は不謹慎ながらも思わず笑みをこぼす。


「ついでってなんだよー」


折角大変な思いして運んできたのにさ。と、ぶつぶつ文句を落としながらも立ち上がる清光を見上げると、「主も早くいこ?」と手を差し出された。

私はまだ半分未満残っていた煙草を灰皿に押し付け、清光の手を取る。

五月の空気は、元気で明るく暖かい。


ゆらり、ゆらり。




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