にー

 


財団員によれば、日本にいる母親の容態が一気に回復したらしい。
そして花京院やアヴドゥル、イギーにポルナレフも一命をとりとめたと。
知らせを聞いて安堵している暇はない。大きな問題が残っている。
とりあえずその場で二人を拘束し、財団人を要請する。大人しくそれを許したDIOと少女。俺はDIOの、ジジイは少女の尋問を開始した。

「名前は佐藤優香。国籍は日本。エジプトには家族旅行に来ていた。そこで――親を殺されて攫われた、と」
「は、はい…」

しおらしく質問に答えるDIO。なんとも気持ちの悪い光景だ。
思わず顔を顰めれば、目の前のデカい図体が縮こまる。おどおどとした上目遣いつきで。
勘弁してくれ…と言いたいがそれは目の前の少女の台詞だろう。折角の旅行だったろうにDIOに親を殺され誘拐されて、挙句の果てにガチムチ吸血鬼と体を交換されるなんて。

「あのう…私、どうなるんでしょうか」

不安げに揺れる視線。宿敵の気弱な姿になんとも言えない気分になる。

「心配するな。何とかして元の体に戻してやる」

明るくなる佐藤の表情。だが俺はどうにも笑えなかった。ああ、DIOの姿でなければもっと心を込めて励ませられたのだが。

「承太郎、来てくれんか」

ジジイに呼ばれてそちらを見やる。シンプルなワンピース姿の少女は、相変わらず不遜な態度でニヤニヤと笑みを零していた。

「やはりこれは、あの少女のスタンド能力のせいと見て間違いないようじゃ。そしてこの少女もDIOに違いない」
「フン、さっきからそう言っているだろう。マヌケさまで先祖似だなァ」
「…何だと」

相変わらず人を小馬鹿にした態度のDIOに、きつく拳を握る。スタープラチナが現れたのがわかった。

「いいのか? 私を殺せばあの小娘そのものも死ぬことになるぞ」
「それはどういうことじゃ」
「私は今、彼女のスタンド能力で体を入れ替えている。身体と魂の繋がりは複雑だ…それを無理に壊せばどちらにも支障が出る」

そうして自分が死ねば少女も死ぬ、と。もしかすれば嘘かもしれない、が彼女の能力の謎が解けていない現状、下手に手出しすることはできない。
舌打ちして手をズボンのポケットにしまう。喉奥で笑ったDIOがどうしようもなく不快だった。

「とは言ってものぉ。そもそも彼女は一般人なのか?」

言外に”協力者であるなら容赦はしない”という意味が込められているジジイの疑問。だが俺は頷いて応えた。

「ああ…恐らくはそうだ。スタンドは発現したばかりで制御もできていないし、肉の芽が埋められている痕跡もない。ただの日本の高校生のようだ」
「だから言っているだろうが」

まるきりこちらを馬鹿にした態度の少女。歯噛みしてそっぽを向けば戸惑いながら微笑むDIOと目が合う。
中身は違うと分かっていても、その顔にどうにも苛立って仕方なかった。




 

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