激戦×苦戦×皆殺し
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シャワーを浴び終え、再びラウンジでお茶をする。ハンゾーに相談しただけあって気も晴れてきた。だけれども、良いことばかりでもなさそうだ。姿を一時的にとは言え天狼に戻したのが問題だったかもしれないと今更後悔している。天狼に戻った時から不愉快な感覚が何者からか送られてくる。
これは誰かが俺に意識を向けている。視線を送れば誰が俺を見ているのかバレるから、あえて意識のみで俺を捕らえてる。どこのどいつか知らんが間違いなく強い。
仕方ない、このままでは埒が明かない。外に出て誘き寄せるか。それに、ここだと人が多すぎて誰だかわからない。仮にそいつが俺とのタイマンのチャンスを伺ってるなら相手にも都合が良いだろう。
イスを引き、席から立ち上がると俺は裏出口から外に出て行った。近くにある小さな森林に身を隠せば、先ほど俺に意識を向けていた何者かの気配が近づいてくる。
「……ククク、あの時、殺戮に参加したものだけが分かる外敵の臭いだ」
どこからか声が聞こえてきた。俺から懐かしい臭いだと?相当な手慣れだと思ったが狂ってるか?
「出ておいでよ。天狼の生き残り……だろう?」
仕方ない前に出てやるか。こいつからは色々聞き出さないといけない事があるみたいだしな。
「……」
「おやおや、こんな坊やが?」
「お前、何者だ?」
俺を探ってた男は頬が痩せこけた老人。ただ、身体の衰えはないと言わんばかりのオーラが漲っている。オーラの絶対量は俺を上回るかもしれない。
「ワシの事を知らんのか?今から丁度100年前に始まった天狼駆逐計画の代表、ジェイド=エクイト。天狼なら皆知ってると思ったんじゃがなぁ?」
天狼駆逐計画?まさか、こいつが天狼を滅ぼした張本人なのか?
「しかし、今回の試験は面白いのぉ」
「……?」
「残り1匹と思われた天狼の怪盗ルミナの殺戮にも成功。それで美味い酒でも飲んでいたら、新たな天狼が現れるのじゃから」
怪盗……ルミナ。トリックタワーで俺と手合わせした女の事だな。しかし、殺戮に成功ということはコイツ……っ!?
「坊や油断しちゃあ駄目だよ」
一瞬の俺の戸惑いを見逃さずに、瞬時に鋭い突きを入れてきた。咄嗟に回避したが突きをかました奴の手が俺の頬をかすめた。それに気づいたのは交わしてから頬を伝う液体の感覚に気がついてから。
「……お前の目的は?」
「言わんくても分かるじゃろう。天狼を滅ぼすこと。ただそれだけじゃ」
話し合いで解決できる相手じゃなさそうだな。霊界リングを使って一時的に霊界に逃げ込むことも出来るが、それをすれば人質を取られかねない。それに、妖怪という立場の俺は人を殺めては不味い。
「準備はいいかの?元の姿に戻らずワシを倒せると思うなよ?小童が!!」
「っ!?」
突然送られてきた強い殺意に俺は思わずフォルムチェンジをして獣人の姿に戻る。
「ほぉ、それが坊やの本来の姿。人間に化け、その醜い姿を隠していたのか」
「それは悪かったな。老いぼれ準備はいいか?」
「それはワシの言葉じゃよ」
その言葉が聞こえた時には俺の右手が宙を舞っていた。こいつ、今どこから攻撃してきた!?奴と俺は5m以上離れてるはず。感覚的には後ろから腕を切断された様だった。
俺は蔵馬から貰った魔界樹の種を手にして妖気を込め周りにばら撒いた。ジェイドは攻撃かと判断したのか種から避ける。
「こ、これは!?」
撒いた種から魔界樹からスクスクと成長し禍々しい木々が辺りを覆った。これが俺の森羅魔界樹の能力。この空間にいる相手の体力を奪い俺の物とする。
「今までの天狼とは何か違うの。他に異質なものも感じ取れる」
やはり俺は普通の天狼ではないんだな。そりゃ妖怪だから仕方ない話だが、こいつから意地でも話を聞きだす。
「いくぜ!有滅爆輪!!」
俺は5つのリング状の爆弾を生成すると、それをジェイドに向かって飛ばす。この爆弾は宙を舞い相手を追い癒着すれば1分後に爆発する。但し、1分後に相手が俺の50m以内にいなければ不発する。
「ほぅ長期戦を狙ってるのか?」
ジェイドは5つの有滅爆輪を器用に交わしていく。その間も森羅魔界樹の効果でジェイドの体力を蝕んでいく。
「なぁ、爺さん。天狼についてどこまで知ってるか教えてくれたら命だけは助けてやるぜ?」
「まだ、わかってないな」
ジェイドがそう言えば一瞬彼の右手が消え俺の腹部に違和感を感じた。まただ!奴のリーチじゃ、どう足掻いても届かないハズ!
「ぐあぁっ!?」
腹を見れば一瞬だけジェイドの消えた右手が俺の腹部を貫いていたように見えた。
「てめぇ、何をしやがった!?」
「もう、坊やはワシから逃げられない。それだけ言っておこう」
尾行されていた段階で奴の能力が発動していて俺はその条件を満たしてしまったのか……?推測する限り、何らかの条件を満たせば奴の体の一部は次元を通り抜け俺に対してゼロ距離で攻撃出来るというものだろう。それならば先ほど飛ばされた右腕にも説明がつくな。
「……回復が早いのぉ。それは能力かの?それとも体質かの?」
「へっ、お前に教えるものか」
腹部が完治すれば、落ちた右腕を拾い元通りにくっ付けて癒着させ右腕を動かして見せた。これで腕も完治。妖怪の体質は再生が早くて便利だな。
「……ただの犬じゃなかったか」
「じゃあ俺からもいくぜ」
5つの有滅爆輪を交わし続けているジェイドに向かって俺は殴り合いに行く。ジェイドが次元を超えて攻撃する能力を連続で発動しない所を見ると、攻撃を入れる度に何かの条件を満たさねばならないようだ。だから、俺も遊んではいられない。
鋭い爪で数発の突きをジェイドに入れるが全て浅い。六発目の突きで攻撃を見切ったのか俺の腕を掴み有滅爆輪に俺をぶつける。ただ、有滅爆輪は俺には癒着しない!!
「ワシの能力は一つじゃない」
その言葉が聞こえた瞬間にジェイドを追っていたはずの有滅爆輪は俺に向かいだす。また、ジェイドが俺を投げ飛ばした時にぶつかった有滅爆輪は俺に背に癒着してしまった。
「なんだと!?」
「ワシの能力により、能力の対象はワシからお主に移り変わった。今度はワシの攻撃じゃな」
なるほどな、俺に触れた瞬間に能力が発動したことから考えると条件は俺に触れた時。但し、それだけじゃ条件は軽い。恐らく、逆に俺がジェイドに触れれば、再び能力の対象はジェイドに戻るといったものだろう。
俺は有滅爆輪を掻い潜って、その勢いでジェイドにタックルを入れようとするが、その瞬間にジェイドの腕が再び消えた。
(不味い!!)
俺は瞬時に飛び上がれば、俺のいた場所からはジェイドの消えた右手が次元を裂いて突き抜けていた。攻撃の直前にモーションがあるからまだどうにかなる。
俺がジェイドに距離を詰めれば蹴りを入れるが、ジェイドは俺の蹴りの軌道を見切ったのかギリギリの所で交わした。
「甘いのぉ、次元攻撃が通用しないならば、ワシ本人がゼロ距離に近づけば良いだろう?」
蹴りを交わしたジェイドは俺に覆いかぶさるように間合いを詰め心臓を狙って突きをする。その手は俺の心臓を貫き俺は力が抜け落ちた。その場で倒れると有滅爆輪は俺に次々と癒着する。
ジェイドが俺に再び触れたのに有滅爆輪の対象が変わらなかったと言うことは、俺から触れないと対象は変わらない。つまり、相手から触れても意味がないという事の証明だな。
しかし、今はそれどころじゃない。心臓を貫かれたのか力が出ない。立ち上がれない……。
「流石にルミナを始末してからだったからオーラの絶対量に不安があったが、お主が弱かったお陰で楽に済んだのぅ」
「三連戦になれば、どうなるかな?」
聞き覚えのある声が聞こえた瞬間にトランプが一枚、閃光のこどく風を切りジェイドの頬を掠めた。
「やぁ。君にはまだ死んで欲しくなったから助けに来たけど……少し遅かったみたいだね」
「お主はヒソカ……だったかの?」
「おやおや、名前を覚えていたのですか。死人には名前を教える必要はなかったのに」
ジェイドにそう告げたヒソカは狂った様な笑みでジェイドに近づいていく。
「お主の様な若造にわしが負けるとでも?」
「自分の歳を考えなよ?熟しきって腐ってしまった果実には興味がないの」
「まぁ、ワシの目的は達成したことじゃし先に帰らせてもらおう。人間はハント対象外じゃから無駄な体力は使いたくない」
最後に笑いを浮かべたジェイドはヒソカの横を通り姿をくらませてしまった。そうすればヒソカは俺の顔をマジマジと見つめてガッカリした様に言う。
「残念だなぁ。君とは一回命をかけた闘いをしてみたかったのに。でも君の本気の姿が見られただけでも良かったよ」
「ヒソカ……ナイスだったぜ?」
すくっと立ち上がると貫かれたのか胸は塞がっており完治とは言えないが致命傷ではなくなっていた。
「……あれ、どういうことだい?」
「この樹林は俺以外の生物の体力を奪い俺の体力にするもの。ヒソカがジェイドから時間を稼いでくれたからジェイドと君の二人から質のいい体力を得られた」
「でも君、心臓を破壊されたんだよね?」
多分それは俺が妖怪だから、核をなしてるのが心臓ではなく妖怪特有の核が他にあるから。でも、ハンゾーは例外として原則俺が妖怪であることは口外しないつもりだし隠し通そう。
「まぁ、よくわからんが心臓も回復したんだろう」
「ふーん……まぁ、いいや。今でも良いけど時が来たら僕と手合わせしてね?」
「うーん、考えとく」
一応はジェイドは俺を殺したと思ってるから俺は身を隠さないとまずいな。今の俺だとジェイドには勝てない事が分かった。
あのルミナと戦った後で俺を上回る力を余していた。奴の全力なら俺は既に死んでいただろう。あれ、そういや有滅爆輪って癒着したまま……。
この癒着した有滅爆輪は時間的に考えて、あと数秒で爆発する気がする。5つも爆発したら俺は間違いなくバラバラになる。
一応対象方法は考えていたけど、こう言う使い方も出来るし俺の三つ目の能力を発動しよう。
封魔妖光壁といって、俺に触れているオーラを吸収する能力。だから相手がオーラの塊をぶつければ、俺はそれを吸収できる。それは俺に癒着した有滅爆輪も同じで吸収可能。
「……危ない危ない。この状態で爆発されたら本当に死ぬところだった」
無事に身体についた有滅爆輪を吸収すれば俺は気配を完全に絶って元の建物に戻った。戻る
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