決戦×中断×旅再開
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一ヶ月間の修行を終え、久しぶりに人間界に戻ってきた。久しぶりに部屋に戻るべく天空闘技場内に入れば、なにやら騒ぎになっているらしい。
入り口はフェンスで一般人には立ち入り禁止となっていて、辺りに群れる人達は野次を飛ばしている。
「ちょいと、そこのあんた。天空闘技場で何があったんだ?」
野次を飛ばす1人の男から、ここで起こっている出来事について聞いてみた。
「あぁ!?何だか知らねぇがよ、天狼が過去に選手として出場してたらしくてよ、DASとかいう連中が調査に入ったんだよ!!おかげで今日あった試合が観られねぇんだよ!!」
もうDASの連中が俺の居場所を嗅ぎつけたのか?なぜだ?俺は死んだことになってる筈……。今更、俺の生死の確認をする術はない。まさか、ジェイドのやつが天空闘技場の試合をチェックしたのか?
いや、待てよ?確か、霊界に向かう前に新聞でハンターを募集していたな。だとすると、天狼の居場所を割り出すダウジング的な事が可能な能力者がDASの組織に加わったのかもしれない。
ならば、俺は早めにここから立ち去った方が良い。もしかしたら、俺が生きていることもジェイドにバレる可能性だって十分にあるわけだしよ。
俺は辺りを見渡しゴンとキルアを探す。ゴンもキルアも、この中にはいない筈だ。人混みの中で2人を探そうとしていれば後ろから誰かの視線を感じた。
振り返れば、視線の正体は消えており、代わりに意識だけで俺を捉えているようだ。この人混みじゃ俺の能力を使うわけにもいかねぇし。
仕方ねぇ……こんなに早く喧嘩する事になるとは思ってもみなかったがやるっきゃねぇか。俺は人混みを掻い潜ると、天空闘技場の5階に相当する窓に向かって、飛び込んで進入した。
馬鹿に人気がない空間。いつもなら人だかりで賑わっているのに、こうも誰もいないと不気味さを感じる。
「……メモ帳?」
辺りを見渡すと、遠くにメモ帳の切れ端の様な物が落ちているのが目に入った。
「……2人は預かった」
このメモは俺に向けての言葉か。ここまで清々しいクズにあったのは初めてだ。生きて帰れると思うなよ。
ひたすら誰もいない廊下を突き進んでいれば、薄暗い廊下の先で俺を存在を意識している人間が1人いる。
消えかかった蛍光灯が俺を数度に渡って照らせば、その蛍光灯が割れて落ちた。
その瞬間に、奥にいた人間は姿をくらました。
刹那、俺の背後から強烈な打撃が与えられ、その凄まじい威力から、廊下の壁まで俺は吹っ飛ばされていった。
「くっ……油断しちまった」
俺の背後に移動した割には、空気に揺れがなかった。だとしたら奴の能力が瞬間移動に関わる能力だろう。
能力の発動条件は不明だが、俺の近くに瞬間移動できる念能力だとしたら空気に揺れがなかった事にも説明がつく。
立ち上がり、敵の位置を円で確認する。奴の居場所は俺から30メートルほど先。俺の円に気がついて敵はすぐに瞬間移動を発動した。
「……そこだっ!!」
野生の勘と相手の心理を読み、見事に拳をクリーンヒットさせた。相手はその拳をもろにくらったらしく壁を突き抜けて吹っ飛ばされていく。
吹っ飛ばされた段階で瞬間移動をしなかったという事は意識も飛ばしてしまった様だ。人間の姿とは言えど俺も加減はしたから死にはしてないはずだ。
「おい、お前は他の奴だな?」
天井に向かって俺はそういえば、上から下品な笑い声が聞こえてきた。その瞬間に天井は崩れてきて、笑い声の主が不敵な笑みを浮かべ俺をジックリと見つめている。
「おい、てめぇ。ゴンとキルアはどこだ」
「あぁ、あの子供2人のことか。代表なら知ってるんじゃないか?それよりもさぁ、俺と殺り合おうよ?」
全くクズの次は薄汚い下品な野郎か。こんな奴に時間を費やしてる暇はない。一瞬で蹴りをつけてやる。
相手に近づくと共に妖狼へと形態を変化させ超高速で移動し真横から顔面へと裏拳をかました。
相手の男は、何が起こったのかわからずに吹っ飛ばされて俺を捉えようとしている。しかし、もはや普通の人間じゃ俺を捉える事は難しいだろう。
「こっちだよ」
男の背後から耳元へ囁いて、膝で蹴り上げた。醜い喘ぎ声を上げる男に容赦なく二度目の蹴りを入れた。
俺は酷く怒りを露わにしているのだと自分で感じる。心の中で迸る、荒れ狂う感情が、この荒々しい戦闘として顕著になったのだ。
しかし、それが俺にとって最大の油断を作っていた事になっていた。俺の意識が全て今の男に持って行かれてたところで、俺のよく知っている男が背後にいた。
再び貫かれた腹を見て、思わず振り向くが、案の定そこには予想している人物はいなく俺の前方からその気配を感じ取った。
「ジェイド……」
自分の体の一部を、別の場所に移動させて攻撃することが出来る男……。
「全く……おいたが過ぎた坊やだ。せっかく集めたワシの部下2人を瀕死に追いやるとは。あの時よりも全てのステータスが上昇していると判断できるのぉ」
なるほど、今までの2人は俺の実力を測るための要因に過ぎなかった訳か。
「単刀直入に聞くぜ。ゴンとキルアはどうした?返答次第じゃ、覚悟しろよ」
「ふむ、人間には手出しはしないさ」
「答えになってない。具体的に言え。ふざけた回答をしたら首を飛ばす」
本当に殺してしまいたいくらいに俺の闘争本能が疼いて仕方がない。だが、ゴンとキルアの安全が確認されるまでは迂闊に手は出せない。
「君の首が飛ぶのではなくて……かい?」
ジェイドの言葉と共に微かに動いた手の動きを見逃さずに、俺は今いた場所から距離から離れ、かつジェイドとの間合いを詰める。今の攻撃を見切らなければ俺の方の首が宙に舞ったかもしれない。
「気にいらねぇな余裕かましやがってよ!!」
右手に妖気を集中させて速度重視の有滅爆輪を3つ生成し対象をジェイドに向けて放った。
「また、この技か。ワシの見たことのない能力はないのかい坊や」
「へっ、同じだと思うなよ」
ニヤリとして言えばジェイドも事の異変に気がついた様だ。爆輪の二つはジェイドの視界に収まってるが、もう一つの爆輪は既に背後に回っているのだ。
「あの時よりも……速さが段違いに……」
ジェイドが振り向いたときには、脇腹に爆輪の一つが付着していた。だが、闘いはこれからだぜ。まさかの事態に、ほんの少し心が取り乱れたジェイドに向かって俺は頭部めがけて蹴りを入れる。
「くっ!」
ジェイドは俺の攻撃を読み堅で防御する。硬で攻撃した俺の攻撃に単純にAOPのレベルの違いでジェイドを数十メートル先の廊下の端まで吹っ飛ばした。
このうちに、俺は右手にオーラを集中して火力重視の爆輪を二つ生成する。
何事もなかった様にジェイドの後を追って追撃を加えようとするが、吹っ飛ばされた不安定な体勢にもかかわらず、俺の攻撃を受け流した。そして、ジェイドは覆いかぶさる様になる俺の腹部を蹴り上げた。
「っ!!」
「やれやれ……天狼との闘いは少しの油断が命取りになるのぉ」
すぐにオーラを堅でガードしたから、大した大したダメージにはならなかった。
お互い間合いを取って、ゆっくりと立ち上がり睨み合う。こっちも、一つの油断が命取りになるっての。だが、このジジィも前の時よりは余裕綽々じゃねぇみたいだな。
「さて……ワシも本気を出すとするか」
「なに?」
まさか、今までのは本気じゃなかったのか?いや、人間がこれ以上強くなれるはずがない。
ジェイドは所々破れた上着を、身から破り捨てるとゆっくり息を吸って吐いた。ここからでも威圧感が感じる。
「……うむ、今回はやめにしようかのぅ。部外者を巻き込むのは好きではないんじゃ」
「あ?どういう意味だジジィ!!」
ジェイドは困った表情を浮かべると俺の後方へ指をさした。思わず振り返ってしまって、攻撃されると焦って すぐにジェイドの方へ振り向き直したが、既にそこにはジェイドの姿がなかった。
「……ちきしょう!これじゃゴンとキルアは!」
「おーい!ロウ!!」
「いんだろー!ロウ!!」
とても聞き覚えのある声が聞こえて、振り向けばゴンとキルアの姿があった。まさか、ジェイドの言っていた部外者はゴンとキルアの事を指していたのか?
「あっ、ロウ!やっぱり来てたんだ!……ってボロボロじゃんか!?」
俺を見つけるや、すぐに駆けつけて飛び込んでくるが、服がボロボロなのをみて心配そうに声をかけてくれた。
「いや、確かにボロボロだけど、怪我は直ぐに治るからだ問題ないぞ。それより、ゴンもキルアも無事だったのか?」
「……は?無事って、俺たちは天狼がここにいるって話が来てから無理やり追い出されたんだよ」
あれ?人質に取られてたんじゃないのか?もしかして、騙されてたのか……?
「それで、俺たち外で待ってたら天空闘技場から爆発音が聞こえてきて、壁を突き抜けて誰かが吹っ飛ばされていったから、もしかしたらロウが帰ってきたのかもしれないって思って手助けしに来たんだ」
ゴンの言葉を聞いて、俺はDASの連中に完全に騙されていたのだと自覚して苦い顔つきになった。でも、相手が情もない連中なら2人が人質に取られてた可能性も否めない。
「ごめんな」
「え?どうして謝るの?」
ゴンからしてみれば、いきなり突拍子もない言葉が俺から出てきて、それも謝罪なのだから意味がわからずにいる。
キルアは何となく察したかの様に、俺をじっと見て俺に近づいた。
「別に、お前に守られるほど、俺たちは弱くねーよ」
「……ははっ、そうだな」
先ほどの言葉の意味をキルアだけが理解したからゴンはますます頭を抱えているが、わからなくてもいいかもしれない。ゴンの事だから、あの謝罪の意味を知れば怒ってしまうだろうから。
「そういや、この一ヶ月でゴンはヒソカに一発パンチ入れられたか?」
話題を変えようと咄嗟に出た言葉だったが、ゴンは俺の問いを聞いて意気揚々とした表情になる。
「うん、2日前にヒソカと闘って、顔面に一発、ヒソカの意表をついて殴ってやった!」
「おぉ!!やったじゃんか!!」
「でしょでしょ!」
まじか〜、あのヒソカの相手に意表を突けるとはゴンも中々やるなぁ。天性の才能じゃないのか?
「でも、途中からコテンパンにされて負けたけどな〜」
「キ、キルアってば!そんな言い方しなくてもいいじゃんか!」
あ〜、始まった。始まった。この二人のやりとり見てると、人間界に戻ってきた感じするわ〜。やっぱ、俺にはこの世界じゃないとダメなんだな。魔界に閉じ込められたら気が狂いそうになるし。
「んで、ロウの方こそ、ここで何があったんだよ。明らかに誰かと戦闘してたろ」
「あぁ……ここを取り仕切ったのはDASだと聞いてると思うけどさ、案の定ジェイドの野郎が現れて殺り合ってた」
内容に反して笑顔で語る俺にキルアは呆れながら聞いている。流石のゴンも呆れながら聞いている。命をかけた闘いをしてるのに、ここまで能天気だからだろうか?
「まぁ、まさかの三連戦でさ最初の二人は大したことなかったけど、流石にジェイドの野郎はやっぱ強えわ」
「お前なぁ……一ヶ月修行してたのは一体何だったんだよ」
「まぁ、前は負けたけど、今回はわりと互角だったしな。オーラの絶対量だけならば俺の方が確実に上回ってるしよ。あとは、戦闘の経験を積むだけさ」
相手が老人なだけあって経験の差があまりにも開いてるからな。まぁ、蔵馬の方がジェイドよりも長生きしてるし経験も凄いが。
「あ、そうだ!俺たち、もう天空闘技場でやる事は終わったからさ…その、俺の故郷に帰ろうと思ってるんだ。ロウが良かったらなんだけど、その……ロウも一緒に行かない……?」
俺の目を見上げるように見つめてくるゴンの瞳。とてもかわいい。とってもかわいいです。
それにとても興味深いが第六感がゴンの故郷に向かうことに強く訴えている。もしかしたら、そこで俺の記憶に関する手掛かりがあるのかもしれない。
「おう!当たり前だ、俺も行くぜ」
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