ただいま×ふるさと×ゴンの家
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天空闘技場でやる事を終えた俺たちは、ひとまずゴンの実家に向かう事になった。元々ゴンは試験が終われば実家に帰る予定だった。けれど、ハンター試験の中でヒソカに借りを作ってしまったから、借りを返す為に帰るのを延期したらしい。

くじら島行きの船は1日かけて向かえば、ようやく港に到着した。空を見てみれば、既に日が暮れ始めている時間となっている。ここからゴンの実家までにはどれだけの時間がかかるのだろうか。

船から降りても、海風が流れていて船の上にいた頃と何ら変わらないと思っていた。しかし、不思議なことに、ここは何だかとても懐かしい気がする。

「ここがゴンの故郷か」

「うん、懐かしいなぁ……このにおい」

すぅーっと息を吸うゴンは、久しい故郷を早速満喫していた。自分の故郷が何処なのかも忘れちまった俺には分からないこった。

「ところでゴン、どっから出てるんだ?」

「ん?」

キルアが何かをゴンに問いかけているが、意味がわからずゴンは思わず聞き返す。俺にも、良く分からねぇ。

「バスだよ、お前ん家の方に行くやつ」

「その手があったか。てっきり俺は歩いてくのかと思ったぞ」

「ははは、ロウ馬鹿だな〜。流石にバスくらいあるに決まってんだろ。な?」

二人で勝手に会話を進めていると、ゴンの顔がやけに申し訳なさそうになっていく。その表情を見て俺は直ぐに察した。

「そ、その、無いんだ……バス……」

「え?ゴン、なんだって?」

「無いんだよバスが。だから、ここからは徒歩で……ほ、ほら!きっと楽しいよ!途中で小さいけど町もあるしさ!森だって動物さんたちが歓迎してくれるし!」

バスは無いけど、代わりにくじら島の良いところを沢山説明するゴンだが、キルアは目が点になっていた。バスが無いという言葉の後の話は耳に入ってないだろうな。

「今から歩いていくのか……?」

「うん、そうだよ?」

キルアは今からと確認して、ゴンはそれに頷いた。日が暮れそうだと思ったが、これはゴンの実家に着くのは夜中か明日の朝になるな。

「まぁ、良いじゃねーか?ほら、仲間と夜の道を歩くのって少しワクワクしねぇか?」

「そっか?まぁ、仕方ねーか」

なんとか納得してくれたみたいだし、これで出発できる。やろうと思えば、両脇に二人を抱いて俺が走れば直ぐに目的地へと辿り着くだろうけどさ。



夜中になり辺りは真っ暗で、遠くの方から街灯の光が集まっているのが見えてきてゴンの言っていた小さな町と言うものところに辿り着いたのだろう。

「あれが町か?」

「うん、とは言っても夜遅いからきっとみんな眠ってるけどね」

じゃあ町の観光は出来ねーじゃねーかよ。これじゃあ、ただの遠足じゃねーかよ。まぁ、ゴンとの遠足だから悪くは無いけど。



町に近づくと、幾つかの建物が何処かで見たような物だと感じた。確かに、どっかで見た記憶があるけど思い出せない。

「どうしたのロウ?」

「ん、いや…。前にここに来たことがあるかもしれないって…いや勘違いだな」

「ふ〜ん…?」

きっと気のせいだ。くじら島なんて聞いたことも無いし行った記憶もない。

それからしばらく歩き続けること数時間。昼前だとは思うが、やっと民家がポツリポツリと見え始めた。

「あ、アレだよ。ミトさ〜ん!!ただいま〜!!」

ゴンが手を振ってる方には家があり、二階に造られたバルコニーのようなところで洗濯物を干している女性の姿が見えた。

彼女がゴンの言うミトさんという人物なのか。ゴンの育ての親らしいしきっと我の強い人なんだろうなぁ。



その家の方まで行くと、玄関の方で先ほどのミトさんと呼ばれた女性と一人のおばあちゃんがゴンを歓迎していた。

「あれ?」

あのミトさんと呼ばれる人……どっかで見たような見てないような?

ミトさんとお婆さんが嬉しそうにゴンを出迎えている。ゴンも、久しぶりの家族の顔を見られて嬉しそうだ。

この場面で俺らが出てくるのは、あまりにも気まずいし申し訳ない。少し離れた所からゴンと家族の会話を聞いてほんわかしてるから尚更。

ミトさんは俺たちの方に気がつくと笑顔でこちらを見た。

「ゴン、あの子たちは?」

「あぁ、ハンター試験で一緒になったら友達。左がロウで右がキルアって言うんだ」

ゴンを通して軽い説明をしてもらうと、俺からも自己紹介する流れになったので前に出て挨拶をする事にした。

「はじめましてロウと申します!」

「ど、どうも」

ぎこちない敬語で挨拶する俺に続いて、キルアは緊張バリバリと言わんばかりの挨拶。俺たちを見てゴンはどう思ってるだろうか。

「まぁ、手紙に書いてあったお友達ね。ゴンがお友達を連れてくるなんて初めてよ」

そういうミトさんは俺たちの前まで歩み寄ってきて挨拶を返してくれた。

「私はミトです。ようこそ歓迎するわ!」

笑顔で迎え入れてくれて正直安心した。ゴンの育ての親だから、もっと「ビシッとしなさい!」とか「だらだらするんじゃない!」とかスパルタな人だと思っててな。



家に入れば、ミトさんはキッチンに立ちゴンに愚痴り始める。この辺りで、俺が最初にミトさんを見てイメージした聖母の像が崩れていく事になる。

「も〜!帰ってくるなら先に教えてくれれば良かったのに〜!何も用意してないわよ!?」

冷蔵庫を開けて色々と取り出して準備しているが、それと同時にゴンに愚痴っている。いや、連絡してなかったゴンが悪いけどさ。

「いいよ、適当で」

「お、俺も食べられる物なら何でも良いんで」

ここ最近は、蔵馬から与えられたクソ不味い薬草しか食べてなかったから食べ物じゃない物を食べても美味しく感じる自信があるし。

「何言ってるの、折角お友達が来てくれたのに」

「あのね、俺たち昨日の夕方からずっと歩いてきてお腹ペコペコなんだ。だから、」

言い訳をしようと何かを言おうとしているが、その言葉で「だから、そんなに汚れてるのね?」と返されてしまう。

こうなったら、もう何も言わないのが吉だと思うけど、ゴンの性格からしてそれはしないだろうな。

「ちょうど良いわ。ご飯作る間にお風呂に入っちゃいなさい」

「え?いま〜!?」

「そうよ、服も全部出しといて。選択するから。急ぎなさいね〜」

終始ミトさんのペースが会話がベルトコンベヤーのように進み、もはや逆らうのは不可能そうだと思った。やはり我の強いお方でしたか…。

「でも……まだ午前中だし……」

「まぁ、良いじゃんか」

「ロウがそう言うなら」

一応納得してくれたゴンは俺とキルアを脱衣所まで案内してくれて服を脱ぎ始める。ここで思ったが、俺の服ボロボロだな。恐らく、蔵馬との修行中で所々破れてしまったんだろう。……このシャツは捨ててしまうか。

「……この格好は改めるべきだったなぁ」

「え?どうしたのロウ?」

「この、所々血が付いてる服から着替えて、ここに訪ねるべきだった 」

脱いだシャツをゴミ箱に向けて投げ入れる。ズボンはまだ多少はほつれてるけど問題はないな。

風呂の戸を開けると木像の風呂で、それを目にしたキルアの目はキラキラと輝く。これってそんなに凄いのか?

「おぉ〜!総檜じゃん!」

「あれ、気に入った?」

キルアは湯船に飛び込むとこっちにまで水しぶきが飛んできた。全くマナーがなっとらんな。とはいえ、風呂特有の湿気を肌で感じてみれば興奮するのも理解できる。

「よくよく考えてみれば風呂なんて久し振りだな。……よっしゃゴン!久々に背中流してやる!」

「あはは、じゃあ俺もロウの背中流すからね」

久々に平穏な1日が過ごせる気がする。あれ……久々……?前はいつだっけ…。いや、こんな時くらいは難しい事なんて考えるのをやめるか。
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