日曜日になり、今日は院生での初の手合いだ。まだ負けるつもりはない。少なからず二組相手に負けるつもりはないからな。

指定された碁盤の前に座れば対局者が来るのを待つ。少し余裕を持ってきてしまったから瞑想でもしよう。

「お、来たな。」

閉じていた目を開けば、こないだの院生試験を受験した帰りに声をかけてくれた人がいた。

「確か…こないだの。」
「俺は和谷義高。お前は?」

「龍神レオンだ。よろしく。」

俺の自己紹介が少し硬すぎたのか和谷はちょっとギョッとした表情をしていた。そういや進藤含む友達に何考えてるかわからんとか言われてたな…。

今日の対局者が向かいに座る。なんだか緊張してるのか?普通は俺が緊張する側だと思うんだが。
篠田先生が入って来ると軽く俺の説明をして、対局開始の合図を出した。これが俺の記念すべき院生としての第一歩だ。


一組の対局を見たいから、すぐに終わらせよう。秒読みのトレーニングも兼ねてね。二組にいる間は一手10秒以内に打つことをルールにしよう。


(こ、この子…早い!)

相手には悪いが俺は上を目指す。他人に形振なりふり構う余裕などはないんだ。

(早いだけじゃない…急所があればすぐに打ってきてるわ…!)

相手をチラリと見れば額から汗を垂らしていた。ちょっと威圧的過ぎたかな…?いや、でも一組の者達に宣戦布告もしておきたいしな。先ほど、調べたが伊角という男が一組の一位らしい。この対局が終われば見にいくつもりだ。

「あ、ありません…。」
「ありがとうございました。」

礼をすると碁石を碁笥に戻して結果を記録しに行く。そして、すぐに伊角という者の対局を確認しにいく予定だった。が、よくよく考えたら誰が伊角なのかがわからない。俺としたことが痛恨のミスをしてしまった。あとで和谷に聞いておこう。どうせだから和谷の対局を見ることにしよう。


邪魔にならないところで俺は和谷の対局を眺める。感想は、そこそこ打ててると思う。俺も油断すれば負ける恐れがある。少なからず、さっきみたいな早碁では太刀打ちは出来ないだろうな。まだ、なんとも言えないが俺の両親よりも強い。

終局まで見ていたけど、やはり和谷が勝った。和谷の3目半勝ちだ。相手の女の子もそこそこ腕が立つ。中盤でのミスがなければ、どうなってたかはわからなかったからな。

不意に俺が対局していた方へ和谷は振り返った。が、もっと近いところに俺が居たのに和谷はあからさまに驚いていた。

「も、もう終わってたのか。」
「あぁ。一組の対局が気になってな。」

「で、感想は?」

眉をひそめて和谷は聞く。ここで挑発するのも面白そうだけど、和谷相手に挑発するのは少し気がひけるし正直な感想を述べるか。

「予想以上にハイレベルかな。」
「……実は、これならプロ試験余裕だぜとか思わなかったのか?」

意外と疑い深いんだな。確かに、俺が何考えてるか和谷も読み取れないのかもしれないけど流石に傷つくぞ。

「そんなこと思わないよ。そうだ、伊角さんって誰かな?」
(いきなり院生一位の人聞くあたり、マジで強敵かも知れねーな。)


「あっちの一番奥のひと。身長高めのが伊角さんだぜ。」

あの人か、年齢も高めだな。その院生一位はどんな碁を打つのだろうか。
和谷と見に行けば、そこそこ相手を圧倒して見せていた。流石は一位なだけある。プロの初段と比べても遜色ないくらいだ。これは伊角さんと打てる時が楽しみだ。




みんなが今日の1局目を打ち終え、2局目も始まった。再び俺は早碁で勝ち抜いて、他の人の対局を観戦することにした。伊角さんや和谷もそうだけど、他にも警戒した方が良い奴も少しはいる。

まぁ、一組に行く時までには、俺は藤原さんに更にコッテリ揉まれてるからな。今よりも強くなってる予定でいるから、そうなれば楽しみが減るかもしれないが。



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