▽ プロローグ

シルト「………………。………………………………。
月は、暗闇を照らす優しき光。黒に閉ざされた道に、しるべを示す。その先に希望を見出すことだってある
そんな月光のように、全うなセレスティアだったあの頃の記憶が、か弱く僕を繋ぎ止めている…いっそのこと、完全に悪意に染まってしまえばいいのに……」

「苦悩する堕天使よ。呪縛を解き放つことへの憧憬はないか」

シルト「…………貴方は…」
外套の男「名乗るものもない。貴様にもそのようなものはないだろう」
シルト「物好きですね。僕のようなつまらない人に話しかけるなど。…それで、僕に何か用ですか」
外套の男「我が血を受け入れる器を探している。先日、一つ壊してしまってな。…いや。奴は自壊したまでのことか。貴様は、星の見えぬこの夜空のごとく、深き闇を孕んでいるな。闇を孕む者ほど至高の器となる。善を保つためにかつての記憶に縋るのは愚か。己を解き放てば楽になるぞ」
シルト「貴方から計り知れない負の感情を感じる……それで僕を誘っているのですか?だとすればお断りします。僕は確かに自らの意思で堕ちましたが、腐ってもセレスティア。悪意に堕ちるぐらいなら命を絶ちます」
外套の男「善と悪の狭間で揺れ動いている心を持ちながら、決して堕ちはしない、と。見事な精神力だ。だが、その脆弱な善意ではいずれ、深淵へと傾く。それも時間の問題だとは思わんか?」
シルト「どれほど時間が経とうと僕はこれ以上は堕ちない。今まで悪事を犯さずに済んでいるのも、この決意のおかげです」
外套の男「どうだか。さて、堕天使。悪意、憎悪、穢れを宿した我が血に順応できるか、見せてもらおうか」

男は粒子を舞い上げた。
粒子は月の光に紅く光る。
粒子を吸い込み、全身に浴び、暫くしてシルトは膝をついた

シルト「な、…なんです、か、忌み嫌う、醜さが…頭の中をぐるぐると、巡って…!ぐう、ううっ…!」
外套の男「ククク…早いな。さすがは、か弱き光に辛うじて繋ぎとめられていた心よ」
シルト「や、めろ…僕は…僕は……!あああっ!!」
外套の男「悪意を存分に堪能するがいい。深き闇は器となった。忘却されたモノを受け入れろ。全ての悪と共に世界を歩め。そして知らしめてやれ。嘘偽りのない、貴様の姿、心をな」

男は姿を消した
――数時間ほど悶えた後、シルトはゆっくりと立ち上がった

シルト「…………ああ……こんな…………ただ本能に従うだけのことが……

こんなに、

――――楽だったなんて」










《エテルノ学園》
シン「やあやあ君たち!ボアから貰ったんだね、薔薇の純潔
それはね、各校長から生徒たちに捧げる、冒険者として認められた証。勿論ボクもドバルも持ってる。どうやって認められるかはそれぞれ違うからね。
この学園では、それらを全部集めると卒業試験に臨めるようにしている。ここの生徒の最終目標が卒業試験だよ。それに臨むためにかなり長い間修行をしている生徒もいたよ。…卒業試験を突破した生徒はごくわずかだけどね。
君たちは成長してきてるから、ボクから渡せる日も近いかもね!だけどボクも、長い歴史を持つ学校の校長だ。タダでは渡さないよ!それを持つことの意味を軽んじないでほしい。そう思って生徒を見てきてるからね。これからも頑張るんだよ!」


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