白き刀の付喪神 鶴丸国永
「俺達は、この本丸の主―――審神者と呼ばれる者の命で、過去へ飛び、過去の歴史を変えんとする時間朔行軍なるものと戦っているんだ。さっき君に襲いかかった奴もそうだ。
俺達は、主がいなければ、戦いで負った傷が治ることはない。今こうして、人の形を持つことすら、時が経てば困難になる始末だ。
だが、主は突然居なくなった。」
「え、何故です?」
「分からない。ただ、心当たりなら無いわけじゃない。
主は、珍しい刀が欲しかったようなんだ。確か、“れあ”刀と言っていたか。」
「‥‥レア刀。」
「俺達にはそれぞれ、その“れあ”度が設定されているらしい。勿論、珍しい刀程、手に入れるのは困難だ。
主は運が悪かったのか、珍しい刀はなかなか手に入れられなかった。
その中で俺ともう一人は、一番珍しいとされる位の一つ下、いわゆる“れあ”な刀らしかった。
だから、俺ともう一人の刀剣に対する主の扱いは一番優しかった。一方、“れあ”度が低い短刀や打刀の扱いは、酷いものだった。」
「‥‥例えば?」
「大勢の敵や強い敵がいる所に、単騎出陣させたり、重傷になっても放置されたり‥‥。」
「それは、本当なんですか‥‥!」
「君も見ただろう? 血で汚れ、刃こぼれした刀や、折れた刀を。
彼らは、人の身体を持てなくなってすぐ、心を閉ざしてしまっている。中には淀んだ感情を持ってしまった刀もいる。」
「そんな‥‥。それなら貴方も、主さんや人間に対して、少なからずそういう感情をお持ちでしょう?人間である私でさえ、それは惨いと思いますもの‥‥。」
「そういう感情が無いとは言い切れないが、少なくとも見境なく切りつけたりはしないさ。そうでなければ、とうに君は俺に襲われているだろう? まぁ、俺はそんな事する気は無いが。 それに‥‥。」
「どうかしました?」
「いや、何でもない。それより、俺を呼び起こす事が出来るということは、他の刀剣も呼び起こせられる可能性があるよな。‥‥もっとも、呼び起こせたとしても、その後がなぁ‥‥。」
「私、呼び起こさせたいです。」
「え?」
「私にそんな力があるかは、まだ分からないですが、貴方のお話を聞いて、強くそう思ったんです。」
「しかし、呼び起こせば、その後どうなるか‥‥。下手をすれば、目覚めた途端、君に襲いかかって来るとも限らない。」
「彼らが心を閉ざしてしまっている事は分かっています。それでも、きちんと話を聞いてみたいのです。対応は、その時考えます。」
鶴丸は、再度止めようとしたが、あまりにも決意を固めた表情だったので、それ以上止めようとは思わなかった。
- 4 -
*前 次#