"ところで、何故私だったんですか?"

政府の男性を送り出す途中、私は一番気になっている事を筆談で聞いた。

答えは、"まぁ色々要素があるが、霊力が高い事"…らしい。

霊力…。はて、そんなもの今まで体感しただろうか、と首を捻っていると、通りに出たようで、ここで別れる事になった。

"当日、よろしくお願いします。"と伝えてきたので、お辞儀をして見送った。



それからは、あっという間に時は過ぎていったように感じた。

母親も、私がいなくなるのが分かっているからか、それまで嬉しそうにしていた。
後でわかった事だが、あの日、手付金として、かなりの額のお金を渡されたらしい。
その事実にはショックを受けたが、深くは考えないようにした。
少しの間だけでも、母親が私の存在を認識してくれているなら、いくらかマシだと。

心残りがあるとすれば弟だが、会えば出ていきたくなくなるのが分かっているため、手紙だけ残して、十八年過ごした家を後にした。



◇ ・ ◆ ・ ◇




道中、変な感覚がして程なく、さて、着きましたよ。と案内されたのは、日本の城のような、とてつもなく大きなお屋敷。

「ここが、今日から貴方が過ごしていく本丸になります。」


……………え?

今なんて仰った?

分からないはずがないくらいに表情が顔に出た私に、男性はクスリと笑みをこぼした。

「他の皆さんにも驚かれますが、いずれこの本丸がちょうど良い大きさ、いえ、狭く感じる日がきっと来ますよ。

……さて、私はここまでですので、後はこの本丸にいる別の者から、これからの生活の事を聞いて下さい。

……多少、驚くかと思いますが。」


最後の意味が分からなかったが、とりあえずお辞儀をして別れ、中へと進んだ。



玄関口まで進んだところで、白と山吹色の小犬みたいな動物が、ちょこんと座って待っているのが見えた。

そしてその動物も、自分を見つけると走り寄って来た。

そして、

「お待ちしておりました、審神者様!」

と言葉を発した。


……………っ!!

普段喋れるなら、間違いなく絶叫してたかもしれない。

「あぁっ、驚かせてすみません!
この度、この本丸に配属されました、管狐のこんのすけと申します!
新しく審神者に就任された方へのご案内や、政府からの通達をお伝えするのが、私の務めなのです!」

も、もしかして、この小犬―――ではなかった、…管狐が、さっき仰っていた案内役…?


困惑している自分をよそに、彼(?)は、話を先に進めていく。

「まずは、貴方様の初期刀となる刀剣男士を一振り、この五振りの中からお選び下さい!」

なんとか気持ちを切り替えて、
"初期刀って何ですか?"と問うと、

「初期刀とは、その名の通り審神者様が初めて従える刀剣の事です!
新しく審神者に就任される方は、必ず始めにこの五振りの中から選んでいただく事になっております!
刀剣に力を注ぎ込めば、人の姿となって現れます。これが顕現です!

さぁさ、早速気になる刀剣を一振り選んで、刀剣男士を顕現させてみて下さい!」


そう言われたものの、いきなりの事で、しばし迷っていた。


深みのある艶やかな赤い鞘に黒が映える装飾の刀で、新撰組 沖田総司が使っていたとされる刀、加州清光。

霊剣"山姥切"を模して造られたとされる打刀だが、刀工の堀川国広が最高傑作とした、山姥切国広。

刀鍛冶を代表する存在として知られる二代目和泉守兼定、通称之定の作で、細川忠興の佩刀、歌仙兼定。

土佐の優れた刀工、陸奥守吉行の作で、坂本竜馬が佩刀していたとされる打刀。
名は刀工と同じく、陸奥守吉行。

江戸時代に活躍した刀工、虎徹作の真刀である打刀で、徳島藩主の蜂須賀家に伝来した事からその名が付いた、蜂須賀虎徹。


散々迷ったが、山姥切国広を手に取った。

力を込めろと言われてもよく分からなかったが、刀身を握り込んでみると、一瞬まばゆい光が放たれ、思わず目を瞑る。

そして、光が収まると、そこには白い布を頭に被り、綺麗な金髪がちらっと見える男性が立っていた。

「山姥切国広だ。……何だその目は。写しだというのが気になると?」




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