あの花はどこに咲いていたっけ
モミジ(下)
「何かその場のノリで開けられちゃった」
「開けれられた?誰に?」
「知らん人」
「…………はぁ」
「え?怒ってるの?」
大きな溜息をついて空却は黙ってしまった。彼が何故いきなり怒り出したのか意味がわからない。勝手にピアスを穴を増やしたから羨ましいのだろうか。沈黙に耐えられず口を開こうとすると彼が小さく何かを呟いた。
「名前は拙僧のもんだろ」
「え?」
「知らねー間に自分の女が他所の男にシルシ付けられて良い気持ちなわけねーだろ!」
「待って、いつ私が空却の女になったの?そんなことあった?」
「ずっと一緒にいただろーが!」
「わかるわけないよね、拙僧の女ってあんた私のこと好きなの?」
「あ?好きだよ!!!!!」
「は?」
「お前も拙僧の女だって自覚あんなら他所の男に触らせるんじゃねぇよ!!!!」
すっとぼけた返事をしてしまったが、何でキレながら告白されなきゃならんのだ。意味がわからん。コイツ私のこと好きだったのか?いや、嬉しいけども。嬉しいけども突然すぎるし脳がこの状況を処理しきれていない。彼とピアスの数や場所は揃えていたがピアス如きでこんなことになるとは思っていなかった。驚いてしまい固まっていると彼の顔が私の顔に近づいて
「え、え、何何何」
「消毒」
「っ!」
気づくと彼は私の耳に噛み付いていた。彼を押し退けようとするが所詮女の力で男には敵わない。そのままベッドへ押し倒される。
「痛い!痛い!さっき開けたばっかでジンジンする!やめて!へるぷ!すとっぷ!」
「ねぇ、本当に痛いって、聞いてる?聞こえてる?」
「ひぇえええ、もう痛いのかくすぐったいのかわかんないよ」
何度も何度も静止を求めるが彼は聞こうとせず開けたばかりの穴を舐めたりかじったりする。鼓膜の近くでリップ音が聞こえて何だか変な気分になるがそんな雰囲気じゃない。もうどうにでもなれと抵抗するのを止めれば先程とは比にならない痛みが全身にはしった。痛すぎて声が出ない。思い切り彼を殴ると身体が離れて解放された。
「な、なんなの、本当に最後の痛かったんだけど?洒落にならないんだけど」
「血出てるぞ」
「おめーのせいだわ!!!!!」
近くにあったティッシュを使って耳を押さえる。鏡を見ると真っ赤になった耳が写る。
「おま、おま、本気で何してくれてんだよ、さっき開けた穴若干大きくなってんじゃん、空却の八重歯で拡張したってか、あ????」
「言葉遣いわりーぞ」
「だからおめーのせいだわ!!!!!」
口が悪くなってしまうのは大目に見てほしい。私が一方的にキレてるみたいだが完全に空却のせい。彼が私のことを好きなことなど知らなかったのだ。言われていないのだからわかるはずもない。彼は世間でいわゆるヤンデレなのだろうか。少し将来が不安になった。それから耳を押さえ、血も乾いてきて冷静になってきた。
「で?まだ耳が痛いんだけど波羅夷空却くんは私に何がしたかったのかね?私の間違えでなければ告白まがいなことをされたのに暴力を振るわれなければならないのかね?」
「他所の男に開けられた穴が気に食わねぇから俺が開けなおせばいいと思った」
「いつから君はメンヘラ?ヤンデレになったのかね、この際どっちでもいいけど」
「メンヘラでもヤンデレでもねぇ」
要するに彼は自分の女が知らない男に手を出されて怒り、思い出というか物理的に上塗りしようとしたのだ。彼と両思いだったことは嬉しいが口で言ってくれ。
「あのね、空却。私も空却のことは好きだけど痛いことはしないでほしい」
「んなこと昔から知ってる」
「知ってるって何だよ…」
だめだ。全然会話にならない。私自身を犠牲にしたおかげか先程より機嫌の良い彼を見ると怒る気力も無くなってしまった。彼と過ごす未来を想像してみると幸せそうだが、痛いことは勘弁してほしいと切に願った。
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