あの花はどこに咲いていたっけ
モミジ(上)
*未成年の飲酒表現がありますがお酒は成人してから呑みましょう。未成年の飲酒は法律で禁じられています。
この男が私の膝で寝始めてから二時間程経った。彼のセットしていない髪はサラサラで撫でる手は止められない。こんな時間も偶にはあっても良いがそろそろ足が痺れてきたので起きて欲しい。
「空却、空却」
寝そべっている身体を少し叩くが全く起きない。鼻をつまむと少し苦しそうな顔をしたが口呼吸で寝続ける。どんだけ寝たいんだよ。今度は鼻と口を塞ぐ。徐々に顔が酸素を求めて歪み始めた。
「拙僧を殺す気か」
「もう空却が寝始めて五時間経つんだけど流石に飽きた」
「五時間も寝てたのか」
「嘘、二時間」
「随分盛ったな」
彼とは小さい頃からの幼馴染みでお互いの両親が仲良い影響でよく遊んでいた。大きくなった今も暇があればお互いの家に行き来する仲だ。私は物心つく前から隣にいた空却のことを自然と好きになっていた。他の異性よりは気に掛けて貰えている自信はあるが実際のところ彼が私をどう思っているかは謎だ。最近の彼は寺の修行とは別に、ナゴヤ代表MCグループの活動にも忙しそうだ。それから彼と会えない時間が続き友達から合コンに誘われた。どうせ今日も会えないんだろうと了承する。
「名前ちゃん呑んでる〜?」
「呑んでますよ」
私に狙いを定めたであろう男が隣に座る。
「名前ちゃんって彼氏いるの?」
「居ないですよ」
「えー!可愛いのに勿体ない!好きなタイプは?」
「野良猫のような人ですかね」
好きなタイプを答えながら彼の顔が浮かんだ。
「野良猫って面白いね、そういえば沢山ピアス付けてるけど好きなの?」
「幼馴染みの影響ですけど、何とも言えないあの痛みが好きなんです」
「いやん名前ちゃん変態」
「そうですかね?結構気軽に開けちゃいますよ」
「え〜じゃあ今安全ピン持ってるから開けていい?」
「突然ですね」
初対面の男にいきなり耳に穴を開けていいかと言われて戸惑っていると話が聞こえた周りが騒ぎ出す。私を置き去りにその場の雰囲気が盛り上がってしまって後にひけない状況になってしました。仕方ないと腹を括る。みんなの視線が集まる中、耳に鈍い痛みが走った。
家に帰ると玄関に空却の靴があった。結構夜遅いはずだが。うちの両親は空却と私の関係を何だと思っているんだろう。案の定部屋に戻るとベッドの上で彼は寝ていた。彼が寝ている側に腰を降ろすと私に気づいたのか眉間にシワを寄せながら目を開いた。
「おかえり…」
「ん、ただいま。いつから居たの?」
「夕飯ん時から」
「言ってくれれば早く帰ってきたのに」
「遊びに行ってんのに連絡したら申し訳ねーだろ」
「変なところで律儀なんだから」
そう言って空却の頭を撫でる。気持ちよさそうに目を細める彼は野良猫のようだ。他愛もない会話をしていると突然彼の眼が見開かれた。
「んだよそれ!」
「え、何が?」
「それだよ!」
急に低くなった声に吃驚していると、私の耳に手を当てた。
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