花壇のお話しのあとで、幸村君とヒロインをどう絡ませようかと悩んでいました。
焼き鳥を食べに行くのがきっかけで仲良くなるのもいいけど、それだけじゃなんだかなぁなんて思いながら考えて下書きしていたら、海の展開がぽつぽつ浮かんできて、あんなストーリーになった経緯です。
そのあとに続く『おかえし』も当初はまったく考えていなかった展開なんですけど、ちょっとずつ二人が近づく感じの雰囲気が書けて(書けていますかね…)、結果よかったなと。
急接近とかじゃなくて、そこは変にリアル思考な私は、こういう細々したので関係性が築くもんだろうと思ってしまうし、描写したくなってしまい…読んでみる皆さまからしたらじれったいというか長いよってなるんですかね…。
幸村君と仲良くなるきっかけのボツ話に、ブン太と三人でまたシュークリーム食べに行く話を書いてました。
書いたあとに読み返して、「これ、いる???」となり、無性に恥ずかしくなりやめました。なんてことない日常を書きたかったんでしょうけど、本当にオチもない展開になっていました。本番で投稿しなくて本当によかった…。
でも供養の意味もこめてこちらにあげます。
文体とかも定まっていない時期で、かなり幼い。若い。恥ずかしい。
読み返すと、黒村君を書きたかったのがわかります。
名前変換なしです。
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今日の放課後は丸井君と幸村君と、ケーキ屋に行くことになった。
ただでさえ人見知りなのに、かの有名な幸村君と一緒というのは結構ハードルが高い・・・。でも丸井君が一緒だと何とかやり過ごせそう。
校門前で待っていると、二人の姿が見えた。手を振って合図すると、丸井君も手を振ってくれた。やっぱり赤い髪をしている彼は遠目からでもすぐに見つかりやすい。
隣には幸村君もいて、改めてみても綺麗な顔だなぁと少しドキドキする。
「お待たせ」
「お疲れ様。・・・は!あの、先日はどうもありがとうございましたっ!すごく、助かりました!もう感謝してもしきれません!」
「うおっ、すっげぇ勢いだな!」
「ふふ、大げさだよ。むしろあのタイミングで花壇に寄っていてちょうどよかったかな。あの子たちも綺麗に手入れしたいと思っていたから」
「・・・もうそろそろ頭あげていいんじゃねえの?てか敬語まで使わなくてもいいだろぃ」
「そ、そうだね」
丸井君に促され深々とお辞儀をしていた頭をあげると、幸村君はにっこりとほほ笑んでいた。笑顔はもちろん、返し方までものすごくできた人だ。同じ中学一年生とは思えない。
そんな会話をしながら校門から離れ、ケーキ屋へと向かう。例の花壇事件の話を幸村君から持ち掛けてきた。
「そういえば、あの時君にケガはなかった?花壇の方にばかり夢中になって・・・気づかなくてごめんね」
「う、うん。私は何とも。ボールにかすりもしてないし・・・ありがとう」
「なら良かった。ちゃんと野球部にも言っておいたから、もうあんなことはないと思うよ」
「そんなことまでしてくれるなんて、申し訳ない・・・」
「幸村君さ、もしかしなくてもすっげぇ言い方したんじゃねぇの?」
「どうして?」
「野球部のやつがたまたま俺の友達でよ、花壇のこともそうだけど、幸村君にビビりまくりだったぜぃ。もう震えてたな、あれは」
「そうかな?自分で壊したものを申告もせず人任せにするのは間違っているし、そもそもあんな場所に投げるようなフォームをまず修正すべきだと思ったんだ」
「まあそうだけどよ、顧問とか監督までビビってたって聞いたからさ。何を言ったのかと思って」
「うーん、至極当然のことを忠告したまでだけどなぁ。柳にも協力してもらってね、犯人も特定できたからむやみやたらに部員を問い詰めるようなやり方はしていないし、至って平和的に解決できたよ」
「その犯人があいつってわけね・・・ご愁傷様だな」
やれやれと言いたげに丸井君が笑う。
その子、大丈夫かな。今後の部活人生に支障をきたしていないだろうか。
と思うくらい、幸村君の笑顔にゾッと、良くない何かを感じてしまった。とても綺麗にニコニコ笑うから余計に怖いのかな、話している中身とギャップがありすぎる。
本人を特定しただけでなく、監督や顧問の先生にまでフォームの修正まで徹底するように注意したってことだよね?確かにあのとき「野球部にも言っておくから」とは話していたけど、そこまでくるともはや執念だ。
立海にいる限り、お花たちに何か被害があるものなら幸村君が黙っていないということがすんなり理解できた。立海の平和は彼にかかっているのではないか。
・・・そして目撃者の私に話を聞くまでもなく犯人を特定できた柳君、あなたは何者ですか。それも怖いのですが。
そんなこんなでいろいろ話しながら、というより私は二人の部活のことを聞きながら歩いていたらいつの間にかケーキ屋にたどり着いた。案の定行列ができている。
「売り切れたりしねぇかな〜、せっかくきたのに」
「へぇ、いつもこんなに並ぶんだね」
ソワソワする丸井君の隣で、幸村君が感心したように声をあげる。
ふとこのコンビって意外かも、と思った。丸井君は桑原君と、幸村君は真田君や柳君と、っていうイメージがついている。
並んでいた隣で、高校生らしき学生が、「ゲーセンいかない?」とか遊ぶ予定の会話をしながら通り過ぎていく。「そういえば」と、丸井君がつぶやく。
「幸村君ってゲーセンとかいくの?」
あ、私も気になる。幸村君とゲーセンって想像しにくい。
「ゲームセンターのことだよね?家族とUFOキャッチャーで遊んだりぐらいはあるよ」
「じゃあ格ゲーとかは?太鼓の達人とか」
「そういえば、、、したことないなぁ」
「おっ、じゃあ今後いかね?幸村君がそういうゲームしたらどんな感じか見てみたいし、えぐい強そう。今週日曜とかは空いてる?」
「ふふ・・・どうかな?日曜は空いてるよ。面白かったら真田も誘ってみようかな」
丸井君はあっさり幸村君とゲーセンの約束にまでこぎつけた。丸井君の壁を感じさせないこのコミュ力はどこから生まれるんだろう・・・。私なら幸村君はゲーセンとか行かなさそうとか、そういう想像をしてしまって誘わないだろう。それにこうして目のまえに幸村君はいるわけだけど、やっぱり距離を詰められないようなオーラがどことなくある。丸井君が誰とでも仲良くなれる理由が改めて分かった。
「みょうじさんは、休日は何しているの?」
「・・・へ」
私に話が振られるとは思わず少し反応が遅れた。
「え、えっと。本読んだり、クラシック聴いたり、料理の練習とか・・・家で過ごすことが多いかな」
「みょうじの弁当めっちゃうまいんだよな?」
「全然。そんなことないよ」
なんか無趣味っぽくないだろうか、こんなのでいいのかな。会話の広げにくい趣味だなと我ながら思う。一瞬だけど、あの音楽室が頭をよぎった。あのまま弾き続けていたら、趣味はピアノって言えたのかな。
「ていうか、ピアノは趣味じゃねぇの?あ、こいつのピアノ、天才的なんだぜぃ」
「へぇ。ピアノ、弾くんだ。丸井がこんなに褒めるところをみるとかなり上手なのかな?」
とか考えていたら案の定、丸井君がその話題を持ち掛けてきた。幸村君もさっきより少し反応が良くなった気がする。
「いえ、全然っ。本当に全然です、凡人です」
「ふふ、そんなに卑下しなくたっていいのに」
「んなことねぇと思うけどなー・・・、謙遜しすぎだろぃ」
丸井君が褒めてくれるのはうれしい一方で、あんな演奏でいいのか、と素直に受け止められない部分もあって複雑だった。
もしかしたら、わたしの中にピアノが趣味と言えた世界線があったのかもしれない。だから何だという話だけど、こんな風に考えている時点であれはやはりアイデンティティだったんだな、とぼんやり考えて、目の前で二人の会話を聴いているのに自分だけどこか遠くにいる感覚になった。
行列を並び終え、塩キャラメルシュークリームは無事ゲットできた。
幸村君と私が1個ずつ買うのに対して、丸井君は6個だった。当然持ち帰りではない様子で、さすがとしか言いようがない・・・。
ケーキ屋から少し離れた広場で早速立ち食いをすることにした。
「これ、すごくおいしいね!塩キャラメル味自体を初めて食べたけど、クリームと塩気とのバランスがちょうどいいよ」
「だろぃ?幸村君のお口に合って良かったぜ」
そうそう、塩気と甘みのコラボがいいんだよねぇと幸村君の食レポに同意しながら私ももぐもぐ食べる。幸村君も美味しそうにしてくれて良かった。そういいながら丸井君はもう3個目に手をつけ始めている。え、いつの間になくなったの。でも私ももう1個食べたいくらいに本当に美味しいと思う。
「はぁ、幸せ・・・」
やっぱりスイーツは全人類を幸福にする素晴らしい食べ物だなぁと思う。ぽつりと呟いたら、クス、と隣で静かに笑うことが聞こえた。
「みょうじさんってすごく美味しそうに食べるね」
「へ・・・」
「言葉通り、本当に『幸せ』そうな顔だったよ」
顔がみるみる熱くなるのが嫌でもわかる。綺麗な表情と声で笑いかけられてドキドキしてしまったこととか、自分が変に思われたんじゃないかとか、いろいろ考えてもうとにかく恥ずかしさでいっぱいだった。
「すすすすみません!変な顔してごめんなさい!」
「ははっ、みょうじのそういう顔みてると、説明なくてもどんだけ美味しいかわかるよなっ」
「うぅ・・・見ないでクダサイ・・・」
「謝らなくても、むしろもっと観察したいかな」
「だ、だめだよ、むしろこんな顔みたら味が台無しになるよっ」
シュークリームはあと半分残っていたけど、無理やり口に詰め込んで一気に食べきった。
「残念だなぁ」と幸村君がまたほほ笑んでいたけど、これ以上食べているところを見られるのは勘弁だった。でももうちょっとクリームを堪能したかったな・・・。
3人並んで帰ることになる。最近どんどん日が暮れるのが遅くなった。丸井君と食べたときは今の時間でもう少し暗かったなぁとあの日をふと思い出した。
「せっかくだし、真田も今度連れてきてあげようかな」
「真田って買い食いとかするのか?むしろ『たるんでる』とか言って断りそうなイメージ」
「ふふ、そうかもしれないね。でもまぁ、俺が言ったら大体ついてきてくれるかな?」
「俺が誘うとまず『糖質控えろ』ってとこから始まるんだよなー」
「ノリが全く悪いわけじゃないんだ。少し真面目過ぎるというか、ね。丸井が誘ってくれて内心嬉しいとは思うよ」
「そうかあ?ならいいけどよぃ」
真田君とシュークリーム・・・意外な組み合わせだ。二人の会話を聞きながら想像してみる。彼がたべているところ、少し見てみたいかも。あ、失礼かな?真田君も甘いものくらい食べるよね。でも真田君って厳しそうなゆえに、確かに買い食いとかあまり好きじゃなさそう・・・。
「じゃあ、私はここで」
「んじゃ、またなっ」
「今日は・・・その、一緒に誘ってくれてありがとう。すごく、楽しかった」
幸村君がにっこり笑って「うん、また今度も集まろうよ」と言ってくれた。
「また今度」が純粋にうれしくて大げさに頷いた。
「うんっ。あ、真田君も次は来てくれるかな?」
「そうだね、次は誘ってみるよ」
「みんなで食べたらずっと美味しくなるから、知ってほしいなぁ」
私がそうだったから、きっと真田君もそう思ってくれるんじゃないかな。
友達とわいわい言いながら食べるだけなのに、それだけでその瞬間はキラキラしているように思える。
皆に手を振って、そのまま別れた。
お母さん、最近この帰り道は気分がふわふわすることが多くなったの。
嬉しくて、楽しいと思えることが増えてきて・・・
「あ、そういえば・・・」
幸村君とは友達?なのかな。
友達ってどこからそう呼べばいいのか分からない・・・。丸井君には難しく考えすぎって言われたけど。
友達ってどこから友達なのかな?幸村君と話すのは数回しかなかったけど、今日はちゃんと一緒に美味しいもの食べたけど、私が友達と思っていても向こうが思っていなければそれは友達じゃなさそうだし・・・。
「うぅ・・・やっぱりわかんないや」
私の人付き合いの要領の悪さはなかなか治らない、と一人ため息をついた。