「ねぇ、見て見て! 雪が降ってるよ!? 久しぶりに見るなあ」
「ここじゃ毎年降る」
「雪が積もったら外に出て遊ぼうよ!」
「体力の無駄だ」
あまりにも冷静に言い返されるから、舞い上がっていた気持ちが沈んてきてしまう。 恋人である和久に、ぶすっとしたむくれ顔を向けた。 今日は22日で特別なことがあるわけではないのだが、何となく恋人と一緒に過ごしたかった。明日は和久と交際を始めてから2年が経つので、どこか浮かれている気分だが、どうも彼の方はそうじゃないらしい。せっかく和久の住んでいるアパートに来たっていうのに、甘さのかけらもない。
「つまらない奴」
「そんなつまらない奴を好きになったのは誰だ」
簡単に言い返されてしまった。和久はノートパソコンからチラリとも視線をずらさずに、高速でキーボードを打っている。そんな態度がまた腹の立つことだ。
彼の淡々とした性格は今に始まったことではないので、私は諦めると窓のふちに頬づえをついて外を眺めることにする。粉のように乾いた雪を、横風が吹き飛ばしているため、町に銀色のベールがかかっているかのように見えた。ふと窓を開けて、左手を伸ばす。手のひらに全く重さを感じない雪の欠片が落ちるが、その形を確認する前に雫となって指の隙間から滑り落ちていった。
窓から見下ろした町は、いつもと何も変わらないはずなのに、葬式の日のようにしっとりと静まり返っている。遠くから聞こえる電車の音も、異世界のように現実味がない。
「……雪の結晶って、確か一つ一つの形が違うんだよね」
「…………」
「休暇はいつまでだっけ?」
「…………」
「……仕事大変?」
「…………」
人が精いっぱい色々話題を作ろうとしてるのに、和久は無言をつきとおしている。そばにあったクッションを和久に投げつけるが、あっさりとキャッチされてしまう。しかも画面から目を離さずに。
「うー……ああああ! もういいよ! どうせ私よりもパソコンの方が大切ですよね!?」
ふてくされて、ソファーに倒れこむ。鼻を打ってちょっと痛かったが我慢する。 こうやれば、少しは構ってくれるだろう。