「…………」
だけど、私の思惑も空しく、何分経っても和久が反応する気配はない。 少し頭をずらして和久の方を見ると、相変わらずパソコンに向かい合っていた。 ここまで来ると、怒りも関心も呆れも通り越して、なんだか悲しくなってくる。 私はパソコン以下なのか? いくらなんでも、彼女に対する仕打ちが酷すぎるだろう。いや、私がうるさすぎて、愛想を尽かしてしまったのかも。 考えれば考えるほど悲しくなって、鼻がつん、として、胸の奥がしぼるように痛い。ああ、こんなことで泣いてどうするんだ、私。こんなに泣き虫じゃないはずなのに。
とうとう我慢ができなくなって、起き上がった瞬間、私が投げたクッションが飛んできた。クッションは私の頭にきれいにヒットする。
「いたっ!?」
別に対して痛くもないんだが、思わずそう叫んでしまう。 先ほどの涙が目に溜まったまま、和久の方を睨むと、いつもと何も変わらない仏頂面と目があった。
「……え、何?」
少し雰囲気が違うような気がして、おどおどと尋ねてみると、和久は気まずそうに顔をそむけた。
「そうすねるんじゃない。構ってほしいなら、口で言えばいいだろう?」
「それは……そうだけど……」
落ち込んでいると、和久はパタンとパソコンを閉じた。和久は立ち上がると、私の隣に座った。大人1人分の重さが追加されたソファーは先ほどより深く沈みこんだ。 ちょっと手を伸ばすだけで触れてしまう距離に、どきりとする。
「何をそんなに落ち込んでいるんだ」
「いや、その……和久はうるさいのが好きじゃないでしょ? だから、私が一人で騒ぎすぎて嫌になったのかなーって……」
話しているうちに、自分でも自分の感情がわからなくなってきて、思わず目を伏せた。
「確かに俺はうるさいのは嫌いだ」
「うん、ごめん……」
「別に謝らなくていい。君は騒がしいぐらいがちょうどいいから。俺はただ、君と同じ空間にいられるだけで十分満たされているんだ。君といつまで一緒にいられるかわからないから、特別なことをしなくてもこうしているだけでも幸せなんだ」
「和久……」
突然神妙な顔で言われ、私は手を膝の上に置いた。
私も彼も生身の人間だ。いずれ別れも来る。それが死別によるものなのか、それともお互いの心が離れてしまったからなのか、そこまではわからない。断言できるのは、こうやって彼と身を寄せ合っていられる時間は、永遠ではないということだ。