「……寒い」

 外に出ると、案の定冷え切った風が吹きつけきた。雪はいつの間にかやんでいた。少しだけ残念だが、既に道路には雪のかけらが断片的に積っている。これだけだと、除雪車は来ないかな。
 体を縮こまらせて、足早に商店街の方へと歩いて行く。通りすがりの人も寒そうに身を固くして、眉根を寄せていた。

 弱いけれども幻想的な赤みを帯びた冬の夕日が目に眩しくて、すっと目を細めたとき、向かいから歩いていくる人物に、私はハッと息をのんで足をとめた。

 白いコートと対照的な艶のある黒髪。年齢の割に落ちついた雰囲気を持った双眸。
 向かいの人物も私に気付いたのか、驚いたように足をとめる。

 灰色の世界の中で、輝いて見える彼の名は――

「シュウヤくん……?」
「ミユキ……」

 幼馴染の彼に、私は再会した。

***

 ちっぽけな町に冬の風が牙をむく。せっかちな冬の夕暮れが近づき、町のあちこちに光がつき始めた。どこもかしかも寒さに凍りついているのに、私の隣だけ温かいのは、並んで歩いている彼のせいなのだろうか。

「まさかお前がこっちに来ているとはな」
「うん。母の転勤でね。……シュウヤくんこそどうしてここにいるの?」
「ちょっと用があってな」
「そっか」

 曖昧な回答だったが、あまり人との交わりを好かない彼らしい返答といえば返答だった。
なんでもないような日常の雑談を交わしながら、商店街へと向かう。何故彼が一緒についてきているのかはわからないが、別にいたからといって困るわけではないので何も言わないでおく。
 通っていた高校ではいつも一番の成績だったシュウヤくん。教師にも気に入られていて、幼馴染ということで私もよく彼と話していた。だが私が転校してから、会うことはおろか連絡すらとっていなかった。

 あまりにも突然な再開にまだ混乱しているが、隣でクールな表情を浮かべて歩いているシュウヤくんは、緊張やとまどいなんて微塵も持ってないように見える。相変わらずだなぁ。

「この町に住んでいるということは、高校もこの町のか?」
「ううん。学校は隣町にあるよ」
「なんでそんな面倒なことをする」
「人が多いのが苦手で……ここの高校は生徒多いし……」

 素直に答えると呆れたような顔をされた。でも本当のことなんだから仕方がない。元々引っ込み思案で、見知らぬ人と話すのが苦手な私は、当然まともな友達もできずに、しばらく学校でもぼっちだった。

 だがこのままではまずいと思い、今ではなんとか割と親しい会話ができるまでには達したのだ。……ただ、表情筋が硬いせいなのか、まだ上手く笑えないけど。

「君のほうはどうだった?」
「普通に過ごしている」
「そっか」

 何が普通なのかは全然わからなかったけど、彼が普通と言うなら普通なのだろう。そう思って口をつぐむ。商店街に向かうにつれ、活気を帯びた雑踏の音が冬の空気を切り裂いて聞こえてきた。それに反比例して、私と彼の間には沈黙が流れる。かといって、気まずいわけではなくて、どこか心地よい沈黙だった。

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