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「あーくそ…っ、てぇ…っ」
軽い商品ならまだしも重いヤツは腰に負担がかかる。分かってはいるが休むわけにはいかない…
やっとこっちのコーナーが終わった…
「次はこっち…」
「一八」
「っうぉ!」
次の場所をやろうとした瞬間背後から声をかけられた。気配なんてなんもしなかったら驚いて大きな声が出てしまったが…
「な、なんやねん…」
もちろん誰って言えば広斗しかおるわけない。俺の部屋着を俺より着こなしていて少し悔しい気持ちになってると広斗の腕が伸びてきた
「…ん」
「…なん」
「食え」
…目の前にはオニギリが2個
コイツ…わざわざ持ってきてくれたのか?
でも食ってる暇があったら仕事終わらん…
「…ま、まだ仕事終わって」
「口開けなきゃまた犯すよ」
「!な…っ」
きょ、強制かよ…っ
「俺はどっちでもいいけど…?」
「…っ、く」
またされるのはキツいから…そう判断し腕を伸ばしてオニギリ二つを受け取り、1個ずつ口に含んだ
「…」
食べながらちらっと見るとボーッとしながら商品を見つめたりお菓子を手に取ったりして…何か、広斗がこの店にいるっていう時点で変な気分やな
「ねぇ…何したら終わんの?」
「っ!ゴホッ!ケホッ!ケホッ!…へっ、?」
「これ運べばいいの?」
「ちょ、広斗っ、ええから!」
突然の発言のせいで変な器官にオニギリが入って噎せてしまった。落ち着いてから広斗に振り向くとまだ検品してない商品を持ち上げてて、慌てて止めようとすると顔をこっちに向けて不機嫌そうに声を発した
「俺、お前と寝たいんだけど…」
え、ま、まだする気…?
「、そ、それさっき…」
「じゃなくて、普通に寝たいんだけど」
「…え?」
ふ、普通に寝る…?
あ…あー…普通に、ね
「フッ…それともしてぇの?」
「っ!!」
な、なんやそれ!!
ち、違う!
お前が、その…っ
変な言い方するから!
あ、いやっ
普通に言うてるけど…っ
「ち、ちがっ!」
「フッ、顔赤…」
「っ…」
くそ…コイツのペースに
巻き込まれるなよ俺…
「…んで?これ、どこ運べばいい?」
話を切り替えるように笑っていた表情を変えて商品を前に出された…手伝うっていうのか?
「…なんで」
「あ?」
「なんで、こんなこと…あの日もそうや、山王まで送ったり…今もオニギリやって…なんで俺にそんな…」
「…」
なんでそんな優しくする
なんでそんなに俺に構おうとする
なんで俺なんかに…
「…あの日も言ったけど…
俺のもんになってほしいから」
「…え…、…!」
あの日…そや、確かにコイツ…っ
『お前さ、俺もんになれば?』
『俺のもんにするって…決めたから。兄貴にも、誰にもやらねぇ…』
「あ…っ」
思い…出した…っ
「…分かんねーけど、お前がほしいって思ったから…今はまだ連れてけねーけど、色々終わったら一八を連れてく」
「!?は、な、何言って…っ」
つ、連れてくって…
お、俺を…っ?
あかん、そんなの…っ
それはつまり…
山王に居られなくなるということ
ゾワッと全身に鳥肌が立った
絶対そんなの嫌だ…っ
離れたくない
ここにいたい…
コブラがおるこの土地に
…ずっと、いたい…っ
「…一八、俺のもんになれよ」
「…っ」
黙る俺に商品を置いた広斗は近づいて包むように抱きしめてきた。慌てて離れようとするも、広斗のその言葉にまた身が固くなってしまい…抵抗する事が出来なかった
俺んちのシャンプーを使ってるはずなのに広斗の匂いがする…香水の匂いとは少し違う匂い…なんで
…なんでっ、こんな…落ち着くんや…
「…まぁ、まだ先の話だし…気楽に待っとけば?」
「…っ」
先の話…とは言うてるけど
きっと、そんな遠い話やないことは
…何となく察した
俺は…連れ去られるのか
それとも…自分でついて行くのか
今の俺には
その答えがどうしても見つからなかった
「…んで?とりあえずそれ…どこに持ってくの?」
体を少し離して視線を俺でなく商品に向けた
「……そっちや」
「ん…」
俺が静かに指示をすると
軽く返事をして移動してくれた
…今は考えるのをよそう
頭が痛くなるだけや…
オニギリを食べる時に置いていたペンを持ち直して、広斗に指示を出しながら仕事に戻った…
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「…終わった」
何だかんだ予定よりも早く終わり、1時すぎに終わることが出来た。2人やとこんなに早いのか…
チラッと広斗の方を見ると眠たそうに欠伸をしながら携帯を弄り、仕舞うと頭を掻きながらまた大きな欠伸をしていた
「…広斗」
「…ふぁ…なに?」
「…ありがと、な」
お礼を言うべきか迷った。元を辿ればコイツのせいやのに、でもコイツが優しいせいで調子が狂ってる…言わなきゃと思ってしまったのだ
「…別に、楽だったし」
クールやな…
そう思わせるくらい淡々と答え
俺と目が合うと近寄って腕を引いた
「…行くぞ」
「…」
俺は返事をする事も頷く事もしなかったけど、気にした様子もなく部屋へと連れてかれた
布団まで腕を引っ張られ
広斗は先に寝転がり…腕を広げた
「…来い、一八」
「…腕枕とか」
「なに?」
「…なんもない」
腕を広げ待つ広斗に嫌だと言いたかったけど、有無を言わせない威圧感を出されたので黙って従い…隣に座ってから横になり…広斗の腕に頭を乗せた。なんかこの景色…前と同じや
俺の頭が乗ったのを確認してから、まるで抱き枕みたいにくっついてくる。頭を撫でる暖かい手の温もり…子供をあやす様なその行動が…不思議と嫌ではなかった
「…この家、落ち着く。直ぐ寝れそう…」
「…そうか?」
襖1枚先には商品が並んでるし、部屋の中自体そんな人が住めるくらいの物しかないのに…よく分からない
「いいんだ…それに
兄貴の事とか、なんも考えなくていいから…」
え…?
兄貴って、雅貴のことか…?
どういう事や…?
「…なんか…あったんか…?」
「色々…ほんとに…、…だる…くて…だから……、……」
「広斗?」
「…、……、……」
「…寝たんか」
…セックスもしたし
働かせてしまったから疲れたんだろう…
「…兄貴、か…」
…そう言えばこいつら兄弟の事
何も知らないな…
なんで山王に現れるのか
普段何をしているのか
なぜ二人でいるのか…
「…」
知りたい…
そう思うと同時に
広斗の温もりに自然と目を瞑った
何故だろう…
今までは雑音程にしか思わなかった雨音が
やけに心地よく感じ
俺も広斗の隣で眠りについた
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