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「…あ、ダンさん!もう上がるんすか?」
「ん?…おぅ」
中で話していた内容なんてもちろん知るはずないテッツは変わらない表情で俺に話しかけてきて、俺はそのまま体を拭いて服を着始めた
「この後ITOKAN行きますよね?俺もそろそろ親父と変わるんで一緒に行きましょうよ」
「…あ、いや」
「え?」
…いつもなら行くと答えるけど
コブラと会うのは気まずいし
出来るなら…今は一人になりたい
「…悪い、今日はこの後予定あんねん」
「え!…ハッ!まさか、!やっぱなんか雰囲気おかしいって思ったんすけど…も、もしかして…か、彼女ッスか!?」
「はぁっ!?何でそうなんねん!!」
「え?違うんすか?」
「ちゃうわ!…ったく、ほな行くから。コブラまだ入っとるみたいやしコブラと行きぃや」
「え、ちょ!ダンさん!」
悪いことしてないのに
逃げるように俺はその場を後にした
「…はぁー」
とにかく一人になりたい…そう思って店に寄り、ツインタワーに店閉めて上がっていいと伝えてからバイクに跨り一日中色んな所を走った
普段乗らない高速に乗って知らない道を駆け抜ける。見慣れた街から遠く離れ、適当に降りた街をバイクで走る…ただ、何も考えずに走り続けた
陽が落ちる頃…また高速に乗って戻ってきた街。たまたま通りがかった堤防にようやく腰を下ろすことにした。長い時間走ったのは久しぶりで、少し腰が痛い…グッと伸びてからゆっくりその場に座る
夕日が少しずつ海に落ちていき闇が現れた
でもその中で輝き出す星空に
一日中寄っていた眉間のシワが取れていくのを感じた
「…ここは静かでええなぁ…星が綺麗や」
緩やかに聞こえる波の音
普段ではあり得ないほど静かなココで…
自然と涙が頬に伝った
こんなに好きになっても
俺を見るとは限らない…分かっていた
少しでも高望みをしてしまった俺が悪い
広斗にレイプされたあの日
仲間としてしか見られてないことは
あの日で分かっていたはずなのに…
直美にしか目に行ってない事くらい
分かっていたはずなのに…
アホ…もう悔やむな
想わないって決めたやろ
「…っ、」
でも今だけ…
誰もおらへんここでなら
もう少しだけ…泣いても…
ブルゥゥン……
「…、なんやねん。人が落ち込んどるっちゅーのに…騒がしい」
遠くから聞こえたバイクの音
山王…ではないな
アイツらがこんな夜に
バイク走らすわけないし…
チラっと音のする方に顔を向ける
ライトが目に入り逸らした
全然見えなかったが
バイクの型からして知り合いではない
ならええわ、と視線を海に向けた
そしたら近くでバイクの音が消えた
…え?止まった…?
まさか知り合い?そんなわけ…
もう一度…バイクの方へ顔を向けると
「…一八?」
「え?…!?ひ、広斗…っ?」
「まさかと思ったけど、マジで一八じゃん」
嘘やろ…っ、んで…お前が…っ
ヘルメットを外した男が近づいたと思えばその人物は広斗で…なんでここにおんねん…そう頭の中でその言葉が何度も出る。広斗も驚いた顔で俺に近づいてきた
「な、何でここに…?」
「仕事帰り…一八は?なんでここにいんの」
「、俺は…」
なんて…言えばいいんだろう
いや、出来れば…言いたくない
「!…」
「!な、なんやねんっ、来んな」
フッと視線を広斗に向けた途端目を見開かせ、そして直ぐに鋭い目を向けながら俺に近づいてくる
30cmもない距離
伸びてくる腕にビクッと体を揺らし
そして…頬に手の温もりを感じた
「…何で泣いてる」
目元を拭うように親指で擦られる
そこに優しさはあるけど
目は怒りの炎を灯していた
「な、泣いてへんっ」
「泣いてんだろ…」
バレる嘘をついたって
意味のない事は分かってる…
けど、言いたくないから
そう言うしか無かった
くそ…っ、止まれ
コイツに泣いてる所見られたくない…っ
「…チッ」
不意に広斗の舌打ちが聞こえた
「っ!?ひろ、っ…ん」
腕を引っ張られ距離がゼロになる
強く抱きしめられ、湿った唇が降りてきた
真っ直ぐ見つめる広斗の目…逸らせない
なんで、俺にキス…っ
「…落ち着いたか?」
口が触れるか触れないかの距離でそう言って…途端顔が熱くなるのを感じて即座に離れた
「…っ、落ち着くわけないやろ…!な、何すんねんアホ!」
「止まったからいいだろ別に…」
「!?、え……ぁ」
ホンマや…
いつの間にか涙が止まってる
驚いた拍子に止まったのだろうか…
まさか、涙を止めるために…
「…んで?…何があったんだ?…まぁどうせコブラ関係なんだろ?」
「!、…ちゃ、ちゃう…っ」
「違うじゃねぇ、言え」
…なんで分かんねんっ…でも
「…いや、や…っ」
「…」
言いたくない…知ってほしくない…っ
そう思いながら言うと
しばらく黙っていた広斗が
腕を引っ張って歩かせた
「ちょ、っ!ひろっ!」
「来い」
「ど、どこに連れてかすねん!は、離せ…っ!」
「俺ん家」
「!…え?」
「すぐそこだから、来い」
ひ、広斗の、家…っ?
「い、いい!行かな、っ!」
「来い」
思いっきり引っ張っても振り解けないほど強く握られ、バイクの側まで連れてかれると俺のバイクに乗せてあったヘルメットを持たされる。意地でも連れてかせる気だ
「後ろからついて来い」
「…広斗」
そう言って広斗はバイクに跨ってまた俺を見つめた
俺が行動するまで待つつもりか…
「…来い」
「…で、も」
「…泣いてるお前を一人にさせたくねぇんだよ」
「…!」
…え?
「…チッ、変な事言わすな。黙ってついて来い」
そう言って前を向きエンジンをかけた…
まさか、俺を心配してるのか…?
俺なんかを…
「……」
俺はしばらくヘルメットを見つめた後…
「…」
ゆっくり被り…バイクに跨りエンジンをかけた
「…」
「…」
俺を確認して…動き出した
俺は…広斗を追いかけるようについて行った
罪悪感できた胸の痛みを感じながら…
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