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私立王城高等学校。東京都某所にある国内外を問わず王族や貴族が多く在籍する名門校である。そんな王城高等学校の気品溢れる制服に身を包んだ女子生徒は、何故か泥門高校の校舎裏に来ていた。勇足で。
「アメフト部コラァ!!!」
怒声を上げながら体育館裏にあるアメフト部部室の引き戸を勢い良く開けるが無人。それもそうだ。放課後でもないのでまだ生徒たちは授業中である。怒りで我を忘れているのか、それとも元からこうなのか。気品溢れる制服とは裏腹に、クソだとかあの悪魔めだとか死に晒せだとか暴言を吐き散らかしながら部室内にあった椅子を蹴り飛ばした。
「いったぁああ!!」
そして痛みでしゃがみ込んだ。どうやら当たりどころが悪かったらしい。
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5月。泥門デビルバッツ賊学戦勝利記念という事で、ヒル魔がした校長とのヤクソクによりアメフト部の部室が増築された。
恋ヶ浜キューピットに勝利したことで既に倉庫だった部室はカジノ仕様に改築されていたのだが、今回はロッカールームが増築されより部室らしく進化したのだった。
そんな最中であるが、泥門デビルバッツがアメリカの高校生と対戦する権利を得る為、ヒル魔と栗田は月刊アメフトの編集部へ出掛けて行ったらしい。
「だ、誰…?」
放課後部室へ向かった部員たちだったが、何故だか他校の女子生徒が客人として椅子に座っている。対応はマネージャーのまもり。
他校のアメフト部マネージャーからの挑発?なんて悪い考えを抱き立ち尽くすセナとモン太に、事態を少しだけ把握していた雪光が小声で解説してやった。
「ヒル魔くんたちの中学時代の後輩らしいよ」
「…え?ヒル魔さんたちの、後輩?」
「や…やっぱアメフト関係ッスか?」
セナとモン太の問い掛けに、雪光は困った様に僕もわからないんだけど、と返事した。
何処かで見た事がある制服に身を包んだ客人は見るからに不機嫌そうで、まもりも手を焼いていそうだった。しかし自分が会話に加わっても何もならないだろうとセナは考えてどうするべきか脳内会議を始めたが、まもりの手助けをしてポイントを稼ごう!と思考が働いたモン太がその輪に加わって行ってしまった。
「まもりさん、お客さんッスか?」
「あ…うん。ええっと…」
「客じゃないです。文句言いに来ただけなんで。あのクソ悪魔野郎が戻って来るまで居座らせて貰うだけなんでまじでお構いなく」
モン太の問い掛けにまもりがフワフワ言葉を濁すと、客人はぶっきらぼうにそうツラツラ言い放った。どうやら恐ろしい事に彼女はヒル魔に文句を言いに来たらしい。それにしても口が悪い。途端セナの顔が強張る。
「ヒル魔さんに文句…!?」
「うん。ヒル魔くんに何か酷いことされたらしくて…」
まもりが簡易的に説明すると、客人はダンッとテーブルに力強く拳を叩き付けてワナワナと震え始めた。相当な事をされたのだろう、とその場にいる全員が哀れみの眼差しを彼女に向ける。
「…あの人が帰って来たら、何をするかわからないので。まもりさんも、ホントに、お構い…なく…」
ギリギリと歯を食い縛り怒りをなんとか鎮めようと踏ん張りながら部員たちに気を遣う哀れな客人に、まもりもモン太も詮索しないでやろうと気を使い部活を始める準備をする事にしたのだった。
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加賀秋の夢の女子高生ライフはひとりの悪魔によって終止符を打たれた。
勉学に決して自信があるわけではないが、得意分野を活かして名門校に入学して金持ちの知り合いを作り、将来安泰玉の輿わっしょい金持ちまっしぐらの未来を進みたかったのだ。
だというのに。嗚呼、それなのに。
ガシャン!という大きな音で秋はハッと目を覚ました。泥門アメフト部の部室で知らぬ間に睡魔に襲われていたらしい。
なにやらロッカールームで揉め事が起きているらしい。宿敵ヒル魔が帰って来たのかと彼女は考え、椅子から立ち上がるとロッカールームへ足を向けた。
「お、おい!なんだよ!?」
と、思ったもののその騒音の相手はヒル魔ではなかった。
泥門デビルバッツの部員。ガラの悪そうな男子生徒が3名。ズカズカとロッカールームから飛び出して来たのだ。最初に出て来た金髪の男子生徒がすれ違うタイミングで秋にぶつかって来た為に、彼女はバランスを崩し尻餅をついてしまった。
ぶつかった秋をチラリと見たが、舌打ちをかまして歩いて行ってしまったその男子生徒。その後ろを追い掛ける2名も彼女へ一瞥くれたが、不思議そうな顔で顔を見合わせただけでスルー。
寝起き、且つ一瞬のこと過ぎて秋は何も反撃が出来なかったがこの屈辱は永遠に忘れない許すまじフォルダへ追加されたのだった。