
01
任務から帰ってきたユウを出迎えたわたしは、真っ赤な外套を身に纏う、所謂中央庁の暗部の姿を見つけてしまった。
――嫌なものを見た。そう思って顔を逸らすと、その先にもまた別のその人たちがいて、しかも愛想よく、そしてとびきり皮肉っぽく、微笑まれたのだから、不快感といったらなかった。
「あの人達、何だろうね」
「さぁな」
「さっきの任務に一緒だったんじゃないの?」
「急に割り込んで来やがったんだよ。詳しいことはさっぱりだ」
「ふぅん」
あの人達の値踏みするような視線が嫌で、わたしはまた目をそらした。それからどうしようもなくなって、ユウのことを見ていた。
ユウの肌の上には、治りかけの傷がたくさんあった。それらは痛々しくて、任務を終えてそれなりに時間が経ったはずなのに、まだ完全には消えていない。
「また、怪我したね」
「怪我くらいするだろ。今回は結構手間取ったしな」
「治るの、大分遅いでしょう」
「お前がまだまだ残ってるからそう見えるんだろ」
「そうだけど……」
ユウはまるで、生き急いでいるようにこの命を使う。
どうしてそんなに無駄遣いするのだろう。それだけ敵が強かったということなのかもしれないけれど、それでも、ユウはいつだって、自分を顧みない戦いをする。
それを目の当たりにすると、わたしはいつも苦々しい思いが込み上げてくる。もっと自分を大切にして欲しい。なんて、戦いの場所に身を置いておきながら、わたしは随分あまっちょろいことを思う。
あーあ、やっぱりわたしは馬鹿だなぁなんて思いながら、コムイさんに報告を入れに行くユウに着いて行った。
次の日になって、いつもの通りわたしはユウに叩き起された。掛け布団を剥がされてさっさと起きろと、声をかけられる。いつもの通りだ。「わたし」がわたしになって、起きたところから変わらない。ユウはわたしを起こす時、いつもそうするのだ。
アルマだったら、優しく揺り起こしてくれるのに。ユウはいつも荒っぽい。
「ナノ、遅い」
「……今、何時?」
「六時」
「今日、任務ないじゃない」
ぶすっとして言うと、酷い顔だと笑われた。
六時っていうと、まあ普通に起きる時間ではあるけれど早いなぁと思ってしまう。ここのところ任務も無く、わたしは体をどうにか調整することを目標としていけと言われている。
だからだらだらとしているのも良くない事だし、こうして起こしてもらえているのなんてかえって感謝しなくてはならない事なんだけれど。
のろのろと体を起こして、クローゼットから動きやすい服を探し始める。うん、だんだん頭がはっきりしてきた。
着替えようとする頃にはユウは部屋にいなかった。普段はあんなにデリカシーという言葉と無縁なくせをして、流石にそういうところは配慮があるのである。
今日は鍛錬という名前をつけたユウにボッコボコにされる日である。痛いから、わたしはこの日があまり好きではなかった。どうせ治るんだし、お前は弱いしと言われてしまえば全く言い返せないから、わたしはいつもいつもボロボロになる。
ラビとかが居たら助けてくれるんだけどなぁ。居たらいいなぁ。ブックマンと一緒にいたらラビはわたしを助けてくれない。にこにこしながら頑張るさーとかいうに違いない。
「痛いのはヤダなぁ」
うん、やっぱり痛いのは嫌だ。
ただこういう時間は、嫌いじゃなかった。こうしていられる時間は全く平和で、とても貴重だから。いつまでも続いたらいいのにと現金なわたしはいつまでも願っている。