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今日もとびきりに霧が深い!
一つ任務を終えて戻ってくると、そんなに時間は経っていないはず――せいぜい、数日程度だろう――なのに教団の空気はガラリと変わっているような気がした。また誰か死んでしまっただとか、そういうことで空気がしんみりとしているからだろうか。
ユウに手を引かれながら科学班の研究室に向かう途中、周囲からは明らかにどんよりとした空気が流れているように感じた。不謹慎だけれど、嫌だなぁ、と思う。わたしも、そういった空気につられやすい達なのだ。せっかく沈めた暗い思考が、そのまま心の奥の水底から、浮かび上がって来そうになる。
「ユウ、」
「なんだ」
「……なんでもない、疲れたなって思っただけよ」
不安になって声を上げたのは良かったけれど、わたしに提供出来る話題は無かった。でも、ユウは煩いとも、黙っていろとは言わなかった。手を握る力が、少し強くなった。
わたしを繋ぎ止めるみたいだ、と馬鹿なことを思う。
疲れたんならさっさと行くぞ、という言葉と共に歩くスピードはぐんと上がったけれど、真っ直ぐに前を見て歩く後ろ姿からは、何となくわたしへの気遣いが感じ取れるような気がした。
嫌なことばかりを考えるのはやめにした方がいいだろう。
だって全部、今更だ。
此処ではしょっちゅう人が死ぬ。一々、それに引き摺られていたらキリがないのだ。
そんな事は分かっているはずなのに、昔の事を思い出していたからかわたしの気持ちはズルズルと悪い方に向きたがる。ただ、真っ直ぐに前を見ているユウが、そんなわたしを繋ぎ止めてくれているようで、それが、堪らなく頼もしい。
「……やっぱり、ユウは頼りになるね」
「なんだよ、急に」
「深い意味は無いの。ただ、ふとそう思っただけよ」
「馬鹿」
ピシャリと、呟くように小さく言って、ユウは立ち止まった。
急に立ち止まられて、彼に手を引かれるがままになっていたわたしは思いきりユウの、広い背中に顔をぶつけてしまう。
「ナノの機嫌の善し悪しくらい、すぐ分かる」
おもいきり鼻をぶつけた、なんて顔を顰めている時に頭の上からそう言われた。
ユウはずっと前を向いている。彼の綺麗な顔に浮かべられた表情をわたしが見ることは叶わないが、多分、相変わらずの仏頂面だろう。
「流石ユウね」
おどけたように笑って、此処が廊下のど真ん中ということも忘れ、ユウにおもいきり抱きついてやった。
「ばぁか」
もう一度ユウが言い放った。今度は、結構大きな声だった。